LST 積み等の APL と T, I ミノ使用率(テトリスと数学の基礎知識 #5)

前:ST 積み等の APL と T, I ミノ使用率(テトリスと数学の基礎知識 #4)

こんにちは。Ogonek:Macron です。

引き続き、代表的な積み方の APL を計算していきます。今回は LST 積みについて取り上げます。

LST 積みは「5 段で 2 回 TSD」という塊が特徴的です。しかし、半永久的に続ける場合は Tetris する穴付近を大きく積み上げる必要があることが知られています。このため、計算の流れはハンバーグ積みや ST 積みのときとは異なります。

ひとまず、kazu さんによる LST 積みの参考動画です。

T ミノをすべて TSD にしていることが分かるでしょう。これが当記事における計算のポイントになります。


この記事でやること

LST 積みの APL を計算します。これに付随して、T ミノを TSD に使う割合、I ミノを Tetris に使う割合も計算します。

なお、当記事ではガイドラインに従ったテトリスについて扱うとともに、お邪魔ブロック・Ren・パーフェクトクリアについては考慮しないこととします。

結論

これらの積み方の APL は 15/7 であり、小数第四位を四捨五入して表すと約 2.143 です。

APP や APB への換算結果は表に示す通りです。表中の小数での表示は、すべて小数第 4 位を四捨五入しています。

$$
\begin{array}{c|c}
APL & 2.143 \\
APP & 0.857 \\
APB & 6.000
\end{array}
$$

また、T ミノはすべて TSD に使い、I ミノの 1/5、すなわち 20 % を Tetris に使います。残りの I ミノは積み込みに使います。

計算方法

T ミノをすべて TSD にすることの確認

まずは T ミノをすべて TSD にすることを念のため確認しましょう。七種一巡のルールにより、1 巡の間に 4 × 7 = 28 ブロックを置くことが分かります。LST 積みに特徴的な L, S ミノによる 5 段のパターンは 2 巡で 1 セットです。2 巡では 28 × 2 = 56 ブロック置くことになり、5 段分 = 50 ブロックを超過します。このため、適切にプレイすれば積み込み部分のブロック数が不足することがなく、T ミノをすべて TSD にすることになります。

L, S ミノによる 5 段のパターンを単に続けると、Tetris をしない場合、積み込み部分が 2 巡あたり 6 ブロック増えます。したがって、TSD をする列と積み込み部分の高さの差が次第に大きくなってしまいます。このため、L, S ミノのパターンは崩すことがあります。

以上の理由により、LST 積みの APL を計算する際は「何段で何回 TSD」というパターンから計算するのではなく、「T ミノをすべて TSD にする」という前提を元に計算することになります。

I ミノの使用割合を求める

TSD によって 1 段消去すると 20 ブロック消えるため、TSD のみをした巡目では差し引き 28 - 20 = 8 ブロック増えることが分かります。余ったブロックは後々 Tetris で消去することになります。

さて、「T ミノをすべて TSD にする」ということから、長期的には以下のようになることが分かります。

$${b}$$ 個のブロックに対して、

  • $${ \dfrac{b}{10} }$$ 段

  • $${ \dfrac{b}{28} }$$ 巡

  • $${ \dfrac{b}{28} }$$ 回の TSD

  • $${ \biggl( b - 20 × \dfrac{b}{28} \biggl) × \dfrac{1}{40} }$$ より $${ \dfrac{b}{140} }$$ 回の Tetris

このように比率を求めることができましたが、分かりにくいので整数で表してみましょう。これらがすべて整数である必要があるので、10, 28, 140 の最小公倍数により $${b = 140}$$ として分母を払うと以下のようになります。

  • 14 段

  • 5 巡

  • 5 回の TSD

  • 1 回の Tetris

つまり、5 巡のうち T ミノ は 5 個すべてが TSD、I ミノは 1 個が Tetris、残りの 4 個は積み込むことになります。

APL を求める

比率が分かったので残りの計算を済ませます。

B2BTSD, B2BTetris の火力はともに 5 段です。14 段を消去する内訳は B2BTSD が 5 回、B2BTetris が 1 回であるため、APL は次の通りです。

$$
APL = \frac{5 × ( 5 + 1 )}{14} = \frac{15}{7} \fallingdotseq 2.143
$$

なお、他の指標に換算すると以下のようになります。

$$
APP = \frac{2}{5} APL = \frac{6}{7} \fallingdotseq 0.857
$$

$$
APB = 7APP = 6
$$

おまけ:「底上げ」の頻度は?

LST 積みの 1 段屋根と 2 段屋根を交互に行うパターンよりも厚い屋根を付けることを、仮に「底上げ」と呼ぶことにします。

※ 「底上げ」という呼称はこちらの動画から引用しています。

動画をご覧になると理解しやすいと思いますが、「底上げ」は TSD や Tetris を行う付近の列と積み込み部分の高さの差を縮めるために行います。

多くの場合、1 段屋根の箇所を 3 段屋根に、2 段屋根の箇所を 4 段屋根に変更します。このように基本パターンよりも屋根を 2 段厚くすることを、ここでは「底上げ 1 回」と呼ぶことにしましょう。これは当記事における定義です。

さて、どれくらい LST 積みを継続したら「底上げ」が必要になるかというのは自然な疑問です。結論としては、20 巡で底上げ 3 回、すなわち、約 6.667 巡で底上げ 1 回が必要です。

計算方法

LST 積みの基本パターンでは、テトリスで消去する分も含めて 2 巡あたり 50 ブロックが必要です。しかし、実際には 2 巡で 56 ブロック積むことになり、6 ブロックが余分です。

また、20 ブロックが余分になる周期と「底上げ 1 回」をする周期が、平均的には一致するはずです。20 巡で 60 ブロックが余分になるため、20 巡で 3 回底上げすることになります。すなわち、約 6.667 巡で 1 回底上げが必要ということが分かります。

終わりに

当記事の内容は、T ミノをすべて TSD にし、残ったブロックを Tetris で消去するような積み方にも適用できます。

次回は「永久機関」という積み方について APL を計算していきます。いよいよ TST の登場です。

次:永久機関の APL とミノ使用率(テトリスと数学の基礎知識 #6)

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