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情報誌「CEL」連載『万博遺産』

こんにちは。エネルギー・文化研究所の小西です。
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開幕まであと2か月を切りました。情報誌CELでは125号(2020年7月発行)より、大阪大学名誉教授で美術史家の橋爪節也先生執筆の「万博遺産」を連載しています。
パビリオンや展示内容だけでなく、都市インフラから文学、美術、音楽など万博会場を飛び出して多方面に垣間見られる万博遺産が紹介されています。
本日は、連載『万博遺産』の中の的な印象的な言葉を糸口に、私なりの万博遺産を考えてみたいと思います。


1 日本最初の国際博覧会「第五回内国勧業博覧会」

日本最初の国際博覧会は、1903年(明治36年)に大阪・天王寺で開かれた「第5回内国勧業博覧会」です。殖産興業のため、1877年(明治10年)に第一回内国勧業博覧会が東京・上 野で開催された後、第二、三回は同じく上野、第四回は京都・岡崎で開催されましたが、その名のとおり国内博覧会でした。
第5回の博覧会は、日本が工業所有権の保護に関するパリ条約に加盟したことから、国外からの出品が可能となり、14か国18地域が参加する「国際博」として開催されました。この数字は、1900年(明治33年)開催のパリ万博の37か国、1902年(明治35年)開催のグラスゴー万国博覧会の14か国と比べても遜色のない規模と言えます。
会場入り口では「第五回内国勧業博覧会」の大文字が点滅し、本館全体がイルミネーションで飾られました。エレベーター付きの展望塔(通称:大林高塔)も人気を博し、後の通天閣につながっていきます。内国博覧会を機に公会堂やホテルも建設され、都市インフラの整備も進み、大阪の近代化が推し進められていきます。
しかし、この内国博覧会の残した『万博遺産』は建造物やインフラだけでなく、歴史に刻まれ後世に受け継がれていくのは「記憶」であると橋爪氏は記
しています。(CEL126号)

情報誌CEL126号『万博遺産 第2回』 “記憶”は調教できるか

その記憶は1970年のEXPO’70に受け継がれていきます。

2 未来を夢見たEXPO’70パビリオン

1970年3月15日、「日本万国博覧会/EXPO’70」が開幕します。
「人類の進歩と調和」をテーマに、参加国77カ国、4国際機構が参加し、約330万㎡の敷地には116のパビリオンが並び、総入場者は約6422万人(日本の総人口の3分の2!)を記録しました。
アメリカ館の「月の石」や「アポロ8号の司令船」、ソ連館の「宇宙船ソユーズ」など宇宙時代の到来を感じさせる当時の科学技術の粋を結集した展示がある一方で、「繊維は人間生活を豊かにする」をテーマにした日本繊維館協力会の「せんい館」は、前衛的な美術、映像、音楽による演出のアーティスティックな展示でした。古河パビリオン「古代の夢と現代の夢」は、歴史的建造物である東大寺七重塔を模した外観の中に、生活の未来像を反映した展示室が設けられ、古代日本人が理想のシンボルとして塔に託した「新しい世界」への夢を現代に喚起させようとしたと言われています。
各国・各者の描く「人類の進歩と調和」がそこにはありました。

3 街の活力を生み出す万博遺産

未来社会をイメージさせるパビリオンや映像、音楽に溢れたEXPO’70ですが、『万博遺産』は、未来都市を夢見させ、実用化させたテクノロジーだけではなく、歴史や記憶を再確認させ、街の活力を生み出すものがあるとも記されています。(CEL132号)

情報誌CEL132号『万博遺産 第8回』ローマの商業神、万国博に飛来す。

万博関連事業として、大阪中央環状線や新御堂などの道路建設、大阪市営地下鉄の拡充、北大阪急行電鉄の建設、私鉄・地下鉄のネットワーク化など、大阪近郊の都市交通網が整備されました。
また、万博にあわせて、会場の東側を通過する名神高速道路、会場とエキスポランドの間を通る中国自動車道が開通し、日本の東西を自動車で結ぶ国土軸も形成されました。

1970年に竣工した全長930m、全10棟の商業ビル『船場センタービル』も万博遺産と言えるでしょう。商業の中心地・船場地区に高速道路を通すため、先にビルを建築し繊維卸商店の移転先を確保し、その上に道路を構築すると言う斬新なアイデアです。こうして、大阪の東西を結ぶ幹線道路「中央大通」が完成します。中央大通の下には、大阪市営地下鉄(現 OsakaMetro)「中央線」が走っています。
この中央線の延伸となる北港テクノポート線には2025年1月19日「夢洲駅」が開業し、2025年大阪・関西万博の主要交通手段の一つを担うことが期待されています。50年の時を経て、万博遺産が新たな万博へと繋がりました。

4 万博は現代世界の縮図

世界の国が一堂に会する万国博覧会には、世界情勢が象徴的にあらわれてきます。1937年のパリ万国博覧会、1970年の大阪万博でのパビリオン配置にも、当時の世界情勢が反映されていると言います。
いよいよ、2025年4月13日から大阪・関西万博が大阪夢洲を会場に開幕します。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」
過去の「万博遺産」を受け継ぎながら、未来に何を遺していくのでしょう。

好評をいただいた「万博遺産」も、3月1日発行のCEL136号で最終回を迎えます。お楽しみに。 

過去のCEL連載「万博遺産」はこちら
https://cgi.osakagas.co.jp/cgi-bin/cel_search.cgi?BTN_SEARCH=1&AUTH2=%8b%b4%92%dc%20%90%df%96%e7