このカーリング漫画がすごい
今回取り上げるのは、「ロイヤル・カレドニア」というカーリング漫画です。アニメ化も決定し、勢いに乗っている今作の魅力は、カーリングという競技を通して描かれる緻密な心理や人間関係、そしてなんといっても熱い競技描写です。
そんな今一番きているスポーツ漫画の魅力をお伝えします!
そんな漫画はありません。私の妄想です。タイトル詐欺です。ごめんなさい。しかし、カーリングの特徴を考えると実際にあってもおかしくないと思うのです。
女子高生が競技かるたのクイーンを目指す「ちはやふる」、薙刀の部活漫画「あさひなぐ」、競技クイズの「ナナマルサンバツ」、そしてマンガワンの看板作品の「灼熱カバディ」いずれも実写化やアニメ化をはたしています。
そんなマイナー競技漫画ブームと言える中で、なぜカーリングのヒット作品が生まれないのでしょうか。こんなに漫画に向いているというのに。
1、戦略性がある
カーリングの詳しいルールは割愛しますが、ストーンを両チームが交互に滑らせていきます。その石が思い通りに進むように、チームメイトが氷を掃いて溶かしていきます。ハウスと呼ばれる円の真ん中に近い場所に自分の石を置いたチームに得点がはいります。これを10回繰り返して最終的な得点の多い方の勝ちとなります。相手の出方に対応して状況が変化するため、戦略性が問われます。それが、この競技が「氷上のチェス」と呼ばれる所以です。そして、このスポーツの醍醐味が、刻一刻と変化する氷面です。試合が進むにつれて、氷が溶けていくなどフィールドが変化します。プレイヤーや監督は、その変化を読みながら戦略を立てていきます。高度な思考戦が要求されるのです。そんな競技の特徴に、各人の思考をじっくり描くことができる漫画表現が向いていることがわかります。
2、チームワークがものをいうスポーツ
カーリングでは、オリンピックに出場する際に、代表選出を行いません。国内大会で勝ち上がったチームがそのまま世界と戦います。その理由の一つにチームワークの重要性が挙げられます。適宜、指示を出しながら行うスポーツであるため、普段のチームから築き上げる連携がものを言うのです。競技外で生まれる関係性が実際のプレーでいかに活かされるかを読者と共有することができるのです。
3、大逆転が生まれる
カーリングでは、ハウスの中に石があればその分だけ得点のチャンスがあります。最後の最後にうまく自チームのストーンを残して、相手のストーンを外に出すと大量得点で逆転することができます。野球でいう逆転満塁ホームランのような展開が生まれることもあります。もちろん、リードしている方は、相手の石をなるべく残さないような戦略を取るためにその時点の攻防も楽しめます。
4、ライフに寄り添う
現在、カーリングの第一線で活躍している選手には、結婚や出産を経験している選手も少なくありません。 また、現在行われているカーリング日本選手権では、小学5年生ですでに試合に出場している選手もいます。そんなスポーツであるが故に、リアリティを担保しつつ生活に根ざした様々な人物を配置することができるのではないでしょうか。
懸念点:絵面が地味になりかねない
スピード感がそれほどある競技ではないことや繰り返し行うことから、どうしても迫力感のある絵が書きにくいかもしれません。そこは漫画的想像力の蓄積や作者さんの技量を信頼しましょう。きっとそんな些細な問題は軽々とクリアしているでしょう。
本格カーリング漫画がヒットする日を夢見て
「そだねー」が流行語大賞に選ばれたり「もぐもぐタイム」が話題になったように、オリンピックの際には注目を浴びるカーリングですが、競技そのものの面白さがあまり伝わっていないのではないでしょうか。ポップな部分を取り入れつつ、協議の本質を描くような本格カーリング漫画がヒットする日を心待ちにしています。