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マイクロフォーサーズに生きる道はないのか

今回の記事の内容はあくまで一個人の意見であり、必ずしも正しい訳ではないことをご了承ください。


フォーサーズ遍歴

おはようございます、OGIZARUです。
僕は普段マイクロフォーサーズのカメラをメインとして使用しています。しかしSNSを見たことのある方なら下記のような内容の投稿を見たことがあるのではないでしょうか。

・マイクロフォーサーズはフルサイズと比べて画質が劣る

・マイクロフォーサーズをプロは使わない

・マイクロフォーサーズ各メーカーは最近元気がない

もちろん、全面的に否定するつもりは一切ないですし事実も含まれているとは思います。しかし、マイクロフォーサーズを使用して仕事をされている人も数多くいらっしゃいます。
また、趣味用途だとしても素晴らしい写真を撮影されていて評価されている方々が数多くいらっしゃいます。果たしてセンサーはカメラのすべてなのか、命なのか。

僕もフォーサーズでE-330、マイクロフォーサーズでE-M5 MarkIIIとOM-1 MarkIIを使用してきた他にパナソニックさんからのプロモーション案件としてG9PROIIを一か月半ほどがっつり運用しました (パナソニックさんとのプロモーション案件と今回の記事は一切関係ありません)。
全てではないと思いますが僕なりに現時点でのマイクロフォーサーズについての見解を書いておきたいと思っています。

今回の記事ではかなりマイクロフォーサーズを評価する内容を書きますがカメラ全体に満足している訳ではありません。各SNSでメーカーさんへのフィードバック内容は発信しますので各社さんは今後とも更に良いカメラを発表し続けてほしいです。

今回の記事の争点(目次代わり)

今回の記事内で僕が書きたいことを先にまとめておきます。

・センサーサイズは大きければ大きいほど善なのか。
・センサーの物理法則 とは
・マイクロフォーサーズに適した用途はないのか(スチル・ビデオ)
・マイクロフォーサーズの今後に期待すること

センサーサイズは大きければ大きいほど善なのか

センサーサイズが大きいことのメリット。そんな話は流石に聞き飽きてるでしょう。一応書いておきます。

・同画素数のセンサーの場合、画素ピッチが広がり1画素あたりの面積が広くなることでダイナミックレンジが広がり高感度耐性が強くなり階調がなめらかになる
・同じ画角が写るレンズだとしてもより実焦点域の短いレンズを使用することができるのでボケ量が多くなる

そんな話は分かっていますが、センサーサイズを大きくするデメリットはないのでしょうか?
僕は以下の内容が当てはまると思っています。

・価格が高価になる
・サイズが大きく取り回しが不便になる
被写界深度が浅くなってしまう
・より大きい範囲をカバーするレンズがなくてはいけないため片ボケ・周辺画質低下に悩まされやすくなる。
・レンズが大きくなるためフォーカスモーターの負荷が大きくなる
・ローリング読み出し方式のCMOSセンサーの場合ローリング歪みが大きくなる
・手振れ補正を強化しにくい

僕は以上の内容から必ずしも大きいセンサーは正義ではないと考えています。
そもそも現在ミラーレスで主流となっているフルサイズはフィルム時代に中判よりコンパクトな所謂ライカ判としてスチルの世界に降りてきた(もともとは映画用フィルムに使われたサイズと記憶)ものであり、いかにも大きいセンサーの代表格みたいな様相を呈していることには一抹の疑問と時代の変化を感じます。

※2024年10月25日追記
センサーの発熱について触れ忘れましたが小型センサーは大型センサーと比べて発熱が少ないので熱ノイズを抑えたい用途(天体撮影等)で用いられる場合も多くあります。今回の記事では詳細に触れませんがご興味があれば是非調べてみてください。

センサーの物理法則とは

この章は特定のツイートに対する反論となります。
マイクロフォーサーズはダイナミックレンジでフルサイズに勝つことができない。なぜならセンサーサイズが小さいからだ。
という主張を目にしました。さらに
小型センサーのほうがダイナミックレンジが広いのは物理法則に反している
という意見も拝見しました。
元ツイ①(元ポス主を攻撃する意図は一切ありません)
元ツイ②(元ポス主を攻撃する意図は一切ありません)

ではなぜSONYの新型センサー"LYT-818"は1/1.28型センサーで86dbのダイナミックレンジを実現することができたのでしょうか。
SONY新型モバイル用センサー LYT-818
また既にXiaomi14Ultraでは1インチのセンサー(SONY LYT-900)で14EVのダイナミックレンジを公称していますし、RAW撮影の場合FusionLMテクノロジーを使用することで16EVを超えるダイナミックレンジを公称しています。
現行フルサイズミラーレスで最強レベルと考えられるSONY a7SIIIで15+Stopのダイナミックレンジとなっていますので元ポストの主張が正しいとすればどのような現象が起こっているのか説明がつきません。
Logで14Stop、スチルRAWで最大8枚合成の16StopのDRを公称する約5000万画素センサーを持つXiaomi14Ultra

つまり

センサーサイズとダイナミックレンジは画素ピッチの差を加味したとしても必ず相関関係にあるわけではない

という結論になります。

その中で各社ともLog状態でのダイナミックレンジを公称しているメーカーが多いですが、その値をまとめてみます。

メーカー 機種 公称DR値 画素数 センサーサイズ
Blackmagic URSA Cine 12K LF 16Stop 98MP Large
SONY     a7SIII        15+Stop 12MP 35mm
SONY     a7IV                       15Stop 33MP 35mm
LUMIX    S1H                        14+Stop 24MP 35mm
RED      HELIUM8KS35      16.5+Stop 35.4MP S35mm
LUMIX     GH7                       13+Stop 25.2MP 4/3
Blackmagic   BMPCC4K              13Stop 12MP 4/3

実効ダイナミックレンジはまた別とは言え各社この程度となっています。その中で実行ダイナミックレンジとして3Stopほど低い数値を提示しているサイトを参考にするのはどこまで正確なのか疑問を持ったほうが良いと思います。
例としてGH6は13+Stopのダイナミックレンジを公称しているものの、CineDさんの測定(CineD | GH6ラボテスト)ではノイズフロアの上に12Stop、かすかに13・14Stopを確認との記載がありIMATESTのSNR=1において12.2段のDRがあるとの表記が確認できます。一方FFさんに教えていただいたPhotones to Photosに記載のある測定(Photones to Photos)だと最高で9EV弱に留まっています。またLog状態と比べてRAWで撮影するとノイズリダクションを行いやすい他各種現像テクニックを使用できるのでLog状態での実効DRより広い値を実用できると思います。
各種メディア次第で測定方法が変わるので、それぞれを参考までに見て実際には自分で測定した方が良いと考えています。

※注:2024年10月25日追記
GH6の測定は動画でしか使えないDRブースト機能を使用したかどうかの差があるので比較できないとの指摘がありました。強制的にDRブーストがオンになるG9PROIIでの測定だとしても、CineDさんのほうで11.8Stop(SNR=2)あるダイナミックレンジがPhotones to Photosだと9.41EVに留まっていますのでPhotones to Photosデータに乖離があることは理解いただけると思います。CineDさんのほうが測定条件が明確だと感じていますので僕としてはCineDさんのレビューを参考にすることをオススメいたします。

個人的な方法ではありますが、スポット測光で基準露出を撮った露出をベースに何EV上げて戻せるか、降ろして戻せるかというのを確かめると簡易的な測定代わりにはなりますので試してみると良いと思います。
僕のOM-1 MarkIIだとシャドウ側が9EV程度、ハイライトが4EV程度かなといった印象でした。

マイクロフォーサーズが適している撮影

さて、ここまでの内容を踏まえてマイクロフォーサーズはどのような撮影に適しているのか考えます。

【スチル】
夜間手持ち長秒露光
フルサイズと比較して圧倒的な手振れ補正を実現、標準域なら手持ち13秒ぐらいまで決めたことがあります (OM-1 MarkII)。
風景
絞り込んで撮影しがちで被写界深度を求めていない風景撮影はマイクロフォーサーズがオススメ、絞り込んで回折が出るよりはマイクロフォーサーズを使用した方が良いシーンもあると思います。ハイレゾショットで画素数も稼げるし。
野鳥
望遠に強いフォーマットで高速連写も強くセンサー読み出しも早いのでオススメ。もちろんa9IIIみたいな外れ値は別ですし高画素を求める方には向きませんがOM-1 MarkII(30万円代)と同価格帯のフルサイズカメラと比較すると強いのではないでしょうか。OM-1初代なんか15万円だし。
鉄道
上記内容と同じ。望遠撮影が多く絞り込んで撮影しがちな鉄道撮影はマイクロフォーサーズの独壇場とさえいえると思います。さらに、追っかけ等機動力を求められるシーンが多いのでマイクロフォーサーズのシステムのコンパクトさは魅力。流し撮りのときに手振れ補正つかえるし。
マクロ
被写界深度がむしろ深いほどありがたいマクロ撮影はマイクロフォーサーズが輝く撮影だと思います。特にM.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS Proは最大撮影倍率4倍(35mm換算)、テレコン装着で8倍(35mm換算)の撮影を実現しています。特殊レンズならまだしもAF撮影が可能なメーカー純正マクロレンズとしてはフルサイズで使用するとCanon RF 100mm F2.8 L MACRO IS USMで1.4倍(僕が調べた限りは最大かな)となっていますのでマイクロフォーサーズは圧倒的有利に感じます。
またマクロレンズ以外の標準ズームレンズでもM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIレンズで最大撮影倍率0.6倍(35mm換算)を実現しています。これまたキヤノンのRF 24-70mm F2.8 L IS USMレンズだと0.3倍となっていますのでマイクロフォーサーズの有利な撮影だと思います。撮影ついでのご飯撮影やお花を見つけたときに寄れるのもオススメポイントです。
イベント記録
イベント記録はフルサイズのボケ感よりその場の情報を少しでも多く残すことが求められる場合も多いと思います。またバタバタした会場で望遠のステージの抜きから広角での集合写真まで求められるシーンがあるはずです。そんな時にM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROを使用するとフルサイズで24-70/4、70-200/4の小三元二本を必要としていた撮影がコンパクトな一本で済んでしまうのです。何気にオススメシーンだと思います。

【動画】
・ドキュメンタリー撮影
被写界深度が浅すぎず深すぎない、更に高品質な高倍率ズームがあり手振れ補正が強いマイクロフォーサーズはドキュメンタリー撮影にうってつけ。従来ハンディカムで行っていた運用を画質の向上目的で移行しやすいシステムだと思っています。
・記録撮影
イベント・ステージの記録等もマイクロフォーサーズが向いていると思います。第一に望遠レンズがコンパクトでボケ過ぎない点、次にGH6/7シリーズをはじめとするLUMIXの一部機種で4:3のセンサー全面を使った5.7K撮影が可能な点。記録用に被写界深度を深くしてもネイティブISOを維持できるので画質的にも有利になります。
・マクロ撮影
テーブルトップでの手芸撮影等、マクロ撮影はマイクロフォーサーズの被写界深度が深く解像感が高い、という特徴がフルに生かされると思います。また手振れ補正が強く、寄れるという特徴もあります。

マイクロフォーサーズの今後に期待すること

現状、SNSを見ているとマイクロフォーサーズはメーカーが元気ない・将来性がない・限られた撮影にしか向かないといった意見が多く見受けられます。しかし、僕はそうとは言い切れないと考えています。
まず、レンズについて。十分とは言えないものの既に高品質なレンズが数多くラインナップされています。またM.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PROのようなボケ量ではなくボケ質で勝負するレンズもあり、フルサイズに一撃食らわせられるレンズも数多くあると思っています。
次に、ボディについて。マイクロフォーサーズは従来より更新スパンが速い訳ではないものの、例えばE-M1 MarkIIやGH5、GH6、OM-1など数年に一度ブレイクスルーが起きたかのように進化したボディが投入され他社に先駆けた新機能が数多く搭載されます。メーカー自体は未来を見据えたカメラを作り続けられていると思っています。
また、最近ではエンジン・センサーをSONY製に依存している(という噂の)OMSYSTEMのカメラでSONYの新技術の実験的機能のようなものが搭載されているように見受けられるなど、未来に近づいているカメラであることは間違いないと思っています。

前述したとおり、センサーサイズの弱点は後々のコンピューター処理やボディ内に先進的に投入されるコンピューテーショナルフォトグラフィー機能で補うことが可能なものも多くあります。

一方、SNSで批判されている”新設計の高級ズームレンズが出ない”という問題や"数年に一度のブレイクスルー以外の時に進化が乏しい"、"ファームアップのサポート期間が長いとは言えない"、"最初期のミラーレス規格なためマウント側の課題も多少ある"等の問題にはメーカーに切実に向き合って欲しいと思っています。

僕は今後もマイクロフォーサーズ規格のミラーレスを使用して写真・映像等を撮影し続けます。決してマイクロフォーサーズは終わった規格だとは思っていないし、そうは考えていません。

もし、この記事を読んでマイクロフォーサーズに興味を持っていただけた方がいらしたら、是非公式サイトやレビュー・作品を見に行ってみてください。そして、マイクロフォーサーズのカメラも使ってみようと考えていただけたら是非一台導入してみてください。

将来、マイクロフォーサーズユーザーとしてお会いできることを楽しみにしています。

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