見出し画像

宵闇亭キ譚 「ぶら下げた奇妙」

ずるっ―ずるずる―

引き摺る何か

何を?

知らない

ずっとずっと引き摺ってる

ずるずるずるずる

足取りは重く

ちっとも進まず

周囲は高速

僕だけ低速

コマ送りの人生

その隙間に視えるモノ

何かと同質の何か

人の認知の狭間にある

モノ――祇

誰もが気付かず通り過ぎて行く

すぐ傍にいるのに

目の前で奇妙な顔をして嗤っているのに

誰も気付かない

僕はいつも笑ってしまう

彼らは悪戯好き

誰もが気付かないうちに

ちょっとした悪戯を仕掛ける

その時は意味が解らないけど後から考えたら

ああ、あの時のと納得する

大抵はたわいもない事柄

当人からすると深刻なのかも知れないけど大したことじゃない

けど偶に

誰かの一生を左右するようなこともある

そんな時ソレらは

ぺろりと舌を出して

やっちまったっていう顔をする

それがおかしくて

僕はよく笑ってしまう

そんな僕を皆がおかしいと言う

何もない所で笑って変な奴だと言う

皆、気味悪がって近寄らない

だって仕方ないじゃないか

僕がぶら下げるこの奇妙なモノはどうやっても外れないんだから

けれど好いこともある

たったひとつ

そしてそのひとつで僕は最高に幸せなんだ

君に逢えた

人には視えない君に

逢うことができた

.   *

雲の詩沫「ぶら下げた奇妙」

   **

松沖修人 : 『奇妙(ナニカ)』をぶら下げた少年
隙間の少女 : 祇


**************


いいなと思ったら応援しよう!