6月定例会最終日の出来事(その3)
6月1日に開会した令和5年所沢市議会第2回定例会は、会期を1日延長の上、6月24日をもって閉会しました。定例会の最終盤に議員提出議案として「藤本正人市長に対し反省を求める決議について」が賛成多数で可決されるという一幕がありました。そこで、前記事(その2)に引き続き、時系列的に経緯を振り返ってみたいと思います。
■ 議会運営委員会(6月23日)の会議録より
◆ 当該議員に対する事実確認
議会運営委員会(以下「議運」といいます)の休憩中、当該議員および市長の意向を確認したところ、お二方とも議運に出席することになりました。以下が、当該議員に対する事実確認に係る会議録の該当部分になります。
改めて会議録を読みますと、当該議員の発言には明らかに正確ではない部分や齟齬も見受けられますが、私なりに要約させていただくと、以下のとおりになります。
① 一般質問に頭がいっぱいで、ワクチンの予算に反対するという頭がなかった。
② ワクチンの予算に参政党としては反対をしなければならないという立場であり、質疑をしたかったが、通告が間に合わなかった。
③ 委員長報告に対する質疑、反対討論ができることが分かったので、準備を進めていたが、反対討論ができないということが当日分かった。
④ ベテラン議員から採決のときに離席をするというお知恵をいただいたので、そのつもりで議場に入った。
⑤ そうしたら、メモが届いた。誰からというのは確認できなかったが、そのメモの通りにやるんだ、やらなければという思いで、そのまま読んだ。
⑥ 委員長報告に対する質疑のことは、市長のところにヒアリングに行ったときに多分聞いた。
なお、当該議員に対してはすでに議長からの事実確認も行われていましたが、この議運での発言によって、当該議員と市長が一般質問について直接ヒアリングを行っていた事実が明らかになりました。これは通常では考えられないことです。
◆ 市長に対する事実確認
当該議員に続き、市長が議運に出席し、事実確認が行われました。以下が、市長に対する事実確認に係る会議録の該当部分になります。
市長の発言にも明らかに正確ではない部分や齟齬が見受けられますが、私なりに要約させていただくと、以下のとおりになります。
① 議案を提出する者なので、それに反対をしてくれなんてことは頼むわけはない。あのメモは職員に当該議員に渡してくれというふうにしてやった。時間がギリギリだったので、結局議場の中に行ってお渡しするしかなかった。
② 議案質疑は終わっていたときだったと思うが、当該議員と会う機会があった。議案と一般質問をダブって聞くことはできないというルールを伝えた。
③ 参政党の議員ならワクチンについては反対なんだということを聞いたので、議案にまず反対することになるが、議案は自己の意見を申し述べることはできないということを伝えた、
④ 残念ながら質疑の機会は終わった、予算常任委員会には入っていないっていうから、委員長にこういう質疑があったのっていうことを聞くことならできるよと伝えた。
⑤ 議案第43号については、簡易採決になっちゃうんだろうけど、質疑あって、討論あって、そして反対があるもの。
⑥ 議長と議会事務局長に相談してごらんと言った。その相談の内容とは、普通に行ってしまうと、全会一致ご異議ありませんかってなるので、異議ありって手を挙げるんだよ。先に相談すれば議運を開いてもらって討論をし、採決をするパターンに変えてくれるかもしれないから、相談してごらんって言ってそれで終わった。
⑦ 採決の日を迎えて、議場に行くときに簡易採決になっちゃったと聞いたので、議長がこう言ったらここで手を挙げて、こう言ってこういうふうな順番で言わないと機会を失うと言ってあげないといけないと思ったので、私はメモを書いて当該議員に渡してくれって職員に伝えた。
⑧ 私は別に反対してくれと頼んだ覚えもない。議員がいやしくもそういうことを選挙で語って、一般質問、質疑の機会で言わなければならないんだったら、それは尊重するというだけの話である。
[市長の発言のうち、明らかに正確ではない点、齟齬のある点]
① 「議案に書いてあることが一般質問することができなくなります」、「議案と一般質問をダブって聞くことはなかなかできないんだよ」という発言がありますが、昨年9月定例会より、通年会期制の導入に向けた試行として議案の採決後に一般質問を実施するという順序に変更されたので、議案の内容を一般質問で取り上げることは制度上は全く問題ないことになりました。
② 当該議員について、「予算常任委員会に入っているのって言ったら入っていないっていうから」との発言がありますが、そもそも仮に予算常任委員会に入っている場合、本会議において当該予算案に関する質疑を行うことはできないことになっています。
③ 「委員長報告の日」、「討論の日」、「採決の日」といった発言がありました。以前は「委員長報告」の翌日が「討論および採決」の日として設定されていましたが、上記①と同じ理由により、「委員長報告」と「討論・採決」は同じ日に行われるように変更されています。
これらの点については、問題となったメモの内容とは直接的な関係はありませんが、現行のルール等について認識がアップデートされておらず、結果的に誤った認識を前提に当該議員に対するアドバイスがされていたという事実があったことには正直驚きました。
傍聴席が一杯だったため、私は議運でのこのやり取りを全員協議会室の廊下で聴いていました。当該議員や市長の表情を窺うことはできませんでしたが、このときのやり取りが結果的にその後の方向性を決定づける最も重要な場面となりました。日本人は潔い人を決して見捨てることはありません。あのとき、市長がせめて形だけでも頭を下げてくれていたら、そこで話は全て終わっていました。
しかしながら、市長からは「提出者なんだから反対してくれという意味じゃなくてもそういうものを出すということについては、それは非難されてもしかるべきかもしれません」という発言こそあったものの、自らの行動について反省や謝罪の言葉は一切聞くことができませんでした。
忘れてはならないのは、この時点ではまだ追加議案の採決も残っていたということです。市の執行部にとって議会対応で最も重要なことは「議案が通るように最大限の努力をすること」であり、最も避けたいことは「議案が通らない」という事態です。
追加議案は内容的に賛否が分かれるようなものではなかったものの、採決を控えている段階での議案提出者たる首長の発言や振る舞いとして、私はかなり違和感を覚えました。その時点で、もしかしたら追加議案の採決自体が流れてしまう可能性もあるかもしれないと最悪の事態も想定したほどでした。
(その4)に続きます。
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