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6月定例会最終日の出来事(その5)

6月1日に開会した令和5年所沢市議会第2回定例会は、会期を1日延長の上、6月24日をもって閉会しました。定例会の最終盤に議員提出議案として「藤本正人市長に対し反省を求める決議について」が賛成多数で可決されるという一幕がありました。

前記事(その4)まで時系列的に経緯を振り返ってきましたが、最後に(その5)として総括と所感を記したいと思います。

市長に反省を求める決議

1.市長の行為は何が問題だったのか

 人によってさまざまな受け止め方があるとは思いますが、「反省を求める決議」には反対という立場の議員からも議会運営委員会(以下「議運」といいます)において「厳重注意は必要」という趣旨の発言があったように、今回の市長の行動に適切ではない点があったことはほとんどの人が認めるところだと思います。

 決議文の冒頭にもあるように、市長と市議会の関係は「二元代表制」の下にあり、馴れ合いを避けるのは言うまでもなく、必要以上に介入すべきではないという考え方がまずあります。市長は議運において「議案を提出する者なので、それに反対をしてくれなんてことは頼むわけはない」「別に反対してくれと頼んだ覚えもない」などと発言しています。確かに頼んだわけではないのかもしれませんが、実際に市長からのメモを受け取った当該議員は、そのメモの内容にしたがって、挙手の上議長に発言を求め、「議案第43号に反対なので、討論した上で採決してください」という発言をしたわけです。

 議案第43号は予算常任委員会において全会一致で可決しており、賛否が拮抗している議案ではないという余裕もあったのかもしれませんが、わざわざ上記のような内容のメモを特定の議員に渡すというのは全く必要のない行為であり、なぜそのような行為に及んだのか理解に苦しむところです。

 「神聖な議場」に本来入る立場ではない職員が入ってきこと自体を問題視する議員もいましたが、そのことについては、特に明確なルール等に違反したというわけではありません。また、「たまたま議場で渡したから問題になったが、控室で渡していたら何の問題もなかった」という声も耳にしましたが、メモを渡した場所の問題でもありません。

 一般論として、首長と議員一人ひとりとの間にはさまざまな関係性があることも考えられ、助言する行為自体は否定しません。では、今回何が問題だったのでしょうか。誤った事実認識を前提に適切ではない内容の助言をしたことが一番の問題であったと個人的には考えています。新聞記事の中に「議案に反対する場合のルールを教えただけ」という説明がありましたが、そもそもそんなルールなどありません。高度な判断力が求められる首長の行動としては、やはり軽率であったと言わざるを得ません。さらに、議運における発言と振る舞いは返す返すも残念なものでした。

 市長からの助言にしたがって、当該議員は委員長報告に対する質疑を行うとともに、反対討論の機会を求めたわけですが、いずれの場面においてもご自身が望んでいたような結果を得ることはできませんでした。

2.当該議員の行動に問題はなかったのか

 では、今回の一件のもう一方の当事者である当該議員の行動に問題点はなかったのでしょうか。当該議員が議運に呼ばれた際の発言によって、一般質問に係るヒアリングを市長と直接行っていたことが初めて明らかになりました。これは通常のルールから逸脱した行為です。どのような経緯で市長と面会することになったのか詳細は不明ですが、そのような行為をすることに問題はないのかもっと慎重に判断すべきだったと思います。

 また、当該議員は議長から事実確認をされた際、事前に市長と面会していたことについては全く言及しなかったそうです。この面会があるとないとでは話の前提が全く変わってくることから、当該議員がその事実を伏せていたことは重く受け止めなければなりません。

 私を含め、複数の議員がいくつかの場面で当該議員に対して助言をしていたにもかかわらず、当該議員は市長からの助言にしたがって行動しました。その結果、ご本人が期待していたような方向に議事が進まなかったばかりか、議会全体を巻き込んだ混乱に発展しました。また、議員提出議案第5号は、当該議員に係る議案でもあることから、当事者として採決に加わらない方がよいと助言した議員もいましたが、結果的に退席するという判断はされませんでした。

 上記のように、当該議員の行動にも大いに反省すべき点があり、「市長に反省を求める決議」は、当該議員に反省を求める趣旨を事実上内包するものでもあったと個人的には受け止めています。ただ、当該議員が当選して間もない新人であり、一人会派であったこともあり、「武士の情け」で不問に付された部分もあったと考えています。

 ただ、厳しいことを申し上げるようですが、同じ選挙で当選すれば、新人もベテランも議員としての立場は全く同格です。また、一人会派を選択するということは、常任委員会以外のポストはなかなか回ってこない、入手できる情報が限定的なものになるなど、さまざまな制約を受けるということを意味します。そのような状況を避けたいのであれば、たとえ所属政党が違っていても、他の議員と会派を組むという選択をすることもできます。いずれにしても、それぞれの議員は自らの責任と覚悟の下で行動すべきであり、新人だから、一人会派だからというのは言い訳にはなりません。

 誰しも長所と短所があり、完璧な人間などおそらく一人もいません。人生の中で適切でない行動をとってしまうことは何度もあります。そんなときは潔く非を認め、反省すべきところは反省することが人として大事であると思います。

3.議運で全会一致とならなかった場合の対応として問題はなかったのか

 地方自治法第112条第2項の規定により、議員は「定数の12分の1以上の者の賛成」(所沢市議会の場合は、3名以上)で、議案(予算を除く)を議会に提出することができます。

 今回の件については、議運で意見の一致をみなかったことを受け、自治法112条2項の規定に基づき、議案(市長に反省を求める決議)が提出されました。議運で全会一致にならなかったものを動議で提出するという行為について疑問視する見方もあるようですが、手続き上は何の問題もなく、過去にも事例があります。

 最近の例でいえば、平成30年(2018年)12月定例会において入沢豊議員ほか2名により提出された、議員提出議案第20号「所沢市議会議員政治倫理条例の一部を改正する条例制定について」が同様のケースになります。

 議運ではありませんが、議会改革に関する特別委員会において全会一致とならなかった内容を含む議員提出議案第11号「所沢市議会議員政治倫理条例の一部を改正する条例制定について」が令和3年(2021年)9月定例会の際、佐野允彦議員ほか2名から提出されたという事例もあります。

 また、議運の副委員長を務めている末吉議員が議員提出議案の提出者となったことについて疑問視する意見もあったようですが、一般論として副委員長は委員長に事故等があった場合にその職務を代わって行うという立場にあり、それ以外の場面では、他の委員と何ら異なる立場にあるものではありません。よって、議運の副委員長が議員提出議案の提出者となること自体には何も問題はありません。ただし、他の議員が提出者となった方が形としてはより望ましかったとは言えるかもしれません。

4.会派拘束はあったのか

 議員提出議案第5号の採決にあたり、会派拘束があったのではないかという声も耳にしました。私が代表を務めている会派「さきがけ」は現議長を含め、3名という少数会派ですが、全員「無所属」議員であり、各人の自由な意思や判断を尊重すべきという考え方から、正副議長選挙を除くと、会派拘束をかけることはありません。

 他の会派の状況は分かりませんが、賛成19・反対13という採決結果からも会派拘束の有無について問うことはあまり意味がないものと考えます。

5.なぜ閉会は深夜まで及んだのか

 6月定例会は結果として、会期を1日延長し、日付変わった6月24日午前2時37分に閉会しました。

 私は議員提出議案の賛成者の一人でもあり、会議が長時間に及んだ責任の一端は当然負う立場にあります。議員提出議案が上程されると、市長提出議案の場合と同様に議案の説明、調査、質疑、討論そして採決という一連のプロセスを踏むことになります。

 議案に賛成の立場、反対の立場にかかわらず、質疑や討論を行う可能性があり、その場合、準備にそれ相応の時間が必要となります。少しでも時間を短縮しようという気になれば、自身の裁量で調整することも可能であり、長時間に及んだことの責任を一方の立場の議員だけに負わせることはフェアであるとは言えません。

 議運や本会議の合間における「休憩時間」の長さを不思議に感じる市民の方も少なくないでしょう。議会は言うまでもなく、法律や条例等に基づいて運営されています。特に本会議は議長の発言内容の元となる「次第」を議会事務局の担当者がそれこそ一字一句精査しながら作成しているため、ミスがないよう確認作業等に相当の時間を要してしまうというやむを得ない事情があるようです。

 今回のような事態はめったに起こることではありませんが、閉会時間が深夜に及んだ事例として思い出されるのは、平成26年(2014年)3月定例会です。あのときも今回と同様に1日の会期延長を経て、午前1時15分に閉会しています。

 同定例会では、議案第40号「所沢市国民健康保険税条例の一部を改正する条例制定について」が委員会で否決されたことを受け、当時の浜野好明議員ほか3名が修正動議を提出したことになり、深夜まで紛糾する事態となりました(余談になりますが、修正動議を提出した議員と同じ会派の議員が担当職員から議場外でメモを受け取っていたという事実が発覚し、大問題になったことから、裏で執行部からの働きかけがあったものと思われます)。

 私がこれまで約16年間議員として活動してきて痛感していることの一つは、政治や選挙は「理屈じゃない」ということです。なかなか一般の市民のみなさまにはご理解いただけないところでもありますが、議会(政治)は時として理屈通りには動かない場面があります。また、動き出したら誰も予測がつかない方向に事態が進んでいくこともしばしばあります。人間の行動はなかなか理屈だけでは推し量ることができるものではなく、最後はどこかである意味腹を括るしかないものと考えています。

[完]

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