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【旧作のため無料公開中】IPOセカンダリー投資の真髄

●はじめに

IPOセカンダリー投資とは、上場して日の浅い銘柄を買い、短期間で大きな利益を上げる手法です。もっとも顕著な例として、2020年上場のGMOフィナンシャルゲート(4051)は上場3か月で株価は最大6倍まで上昇しました。

個人投資家を中心に人気な投資手法ですが、値動きが荒く、大きな損失を抱えるリスクをはらんでいます。特に負ける確率が高いチャートパターンとして、「エムスリーサイン」を独自に発見・命名しました。

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2021年3月25日に上場したベビーカレンダー(7363)は、13000円台まで上昇しましたがその後急落し、現在は3分の1程度まで下落してしまいました。

多くのIPO銘柄は上場後1か月程度は大きな出来高を伴い短期的に急騰することがありますが、そこでつけた高値を超えられないと、エムスリー(m3)型になってしまい下降トレンドを作ります。こうした銘柄を買ってしまうと高い確率で損失を出してしまいます。

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2021年8月1日に私がTwitterに投稿したものです。同年6月18日に上場したEnjin(7370)は四半期決算の発表後にストップ高をつけたあと窓を埋める形で調整していました。私のツイートの後1か月で株価は約60%上昇しました。

このように、小さな出来高でもどんどん高値更新していく銘柄をチャートの足型になぞらえてN型銘柄と呼ぶことにします。IPOセカンダリー投資で利益を得るコツは、まさにN型銘柄を選定できるかどうかにかかっています。

●N型銘柄、m3銘柄の株価パフォーマンスの違い

2020年6月に上場したコパ・コーポレーション(7689)から、2021年6月に上場の全研本社(7371)までの連続100社を独自に解析しました。すると、N型銘柄はm3銘柄より圧倒的にパフォーマンスに優れることがわかりました。

パフォーマンス

N型銘柄を初値で買った場合、最高上昇率の中央値=96%に対して最高下落率の平均値=24%ですから、利益をあげられる確率が高いことがわかります。しかし、困ったことにN型はIPO銘柄全体の3割もないですから、当てずっぽうにIPO銘柄を買ってしまうと損失が利益より大きくなってしまうのは明らかです。

今回のnoteでは、N型銘柄を予測する指標について、2021年10月時点で最新のIPOデータを元に分析を行いました。今回、導き出した指標を用いることで、約90%の精度でN型・m3型を判定できることが分かりました。

IPO銘柄のトレードで最大効率で資産を増やしたいと考えている全ての投資家の方々に、こっそり秘密の分析結果をお伝えします。IPOセカンダリー投資という修羅の世界で生き残るヒントが得られるでしょう。

●ファンダメンタル

ファンだ

横軸に直近3年の売上平均成長率(CAGR)を、縦軸にチャート形状を示しています。統計学的に有意差は見られず、売上成長率はチャート形状に関係しないことが分かりました。

●吸収金額

吸収金額

左のグラフは、横軸に吸収金額(億)、縦軸にチャート形状を示しています。右はROC曲線です。吸収金額が小さいほどm3型になりやすいことが分かり、そのカットオフ(境界)は22.2億でした。

●初値騰落率

初値騰落率

左のグラフは、横軸に初値騰落率(初値÷公募価格、%)を、縦軸にチャート形状を示しています。右のグラフはROC曲線です。初値騰落率が高いほどm3型になりやすく、そのカットオフは78.8%でした。

●公募割れ銘柄について

公募割れ

初値が公募価格を下回った場合、少し注意が必要です。バリオセキュア(4494)、雪国まいたけ(1375)を例に挙げています。出来高の多い上場初期に公募価格を超えられない場合、高い確率でm3型になることが分かりました。本来は割安な株価のはずですが、公募株を買った人、初値付近で買った人は全て含み損を抱えているので需給が悪く株価が上昇しにくいと推察します。

●上場市場について

市場

興味深いことは、東証1部の上場銘柄はN型になりやすくジャスダック上場銘柄はm3型になりやすいということです。東証1部の銘柄は上場翌月末にTOPIXに組み入れられるため出来高の落ち着いたところで一定の買いが入り需給が好転しやすいことが推察されます。

●N型銘柄の予測因子とは?

⑴ ジャスダック上場ではない

⑵ 吸収金額が22.2億以上

⑶ 初値上昇率が78.8%以下

⑷ バイオ株ではない

⑸ 初値が公募割れの時、出来高の最も多い上場初期(第1波)に公募価格を上回る

チャート形状に関して業種間で大きな相関は見られませんが、バイオ株はほとんどm3型になるので、こちらも条件に加えております。

上記の条件を用いて、2021年6月に上場したEnjin(7370)からプラスアルファコンサル(4071)までの18銘柄を検証コホートとして分析しました。結果、16/18銘柄(89%)で予想が的中しました。

検証コホート

結論としては、初値が決まった時点でN型銘柄になるかどうか予想がつきますので、第1波が終わって出来高が落ち着く時期に押し目を狙って買うのが良さそうです。ただし、公募割れの場合は、終値ベースでしっかり公募価格を超えるのを確認してから買うのが良いと思われます。

●実際の売買案(2021年10月28日追記)

⑴テスホールディングス

プレゼンテーション1

(2)アイドマホールディングス

プレゼンテーション12

●終わりに

今回の分析は特定の時期に限定したものです。したがって今後、公募価格の設定制度の見直し、地合い等の環境変化により細かい予測因子のカットオフ値は変更される余地があります。

今回の分析結果は100%の予測精度を誇るものではないので、損失リスクが少なからずあることを念頭に、銘柄について十分精査された上で取引の判断を行うことをお勧めします。本記事を参考にした取引で損失が出た場合も、記載者は一切の責任を負いません。投資は自己責任でお願いします。

2021年10月15日

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