5分でわかるNFTやMetaverseで注目されるWeb3.0の概念
DropboxとIPFSの違いを述べよ
Why the Web 3.0 Matters and you should know about itという記事の中で、今後、Web2.0からWeb3.0へ移り変わった場合、これまで台頭していたアプリケーションが、どのように取ってかわるかというものを示した図が紹介されています。
Web3.0の方のアプリケーションはまだ知名度がないものもありますが、まだスタートしたばかりで、あくまでも今の時点でと考えてください。
DropboxとIPFSの違いを述べよ、と言われた場合、どちらもファイルストレージサービスになりますが、この2つのサービスは、Web2.0かWeb3.0という設計思想が異なるため、これらはまったく違うサービスであると言えます。ChromeとBrabe、SkypeとExperity、FacebookとSteemitも同様にして、同じ機能を持っていたとしても、単純な焼き直しではなく、データの管理手法、マネタイズ、設計思想などすべてにおいて出発点が異なるということを理解する必要があります。
この根本的な思想を理解しないまま、Web2.0でNFTやMetaverseを企画しても意味がありません。今回は、Web3.0が一体何を解決しようとしていて、どのようなコンセプトのもと設計されているのかについて、数分で読めるテキストとして、まとめておりますので、Web3.0に関わる方への参考になればと思います。
Webは誰がつくったのか?
Web2.0やWeb3.0というキーワードですが、ウェブというキーワードが故にアプリ開発には関係ないと思われるかもしれませんが、そうではありません。ここでいうウェブとは、HTTPプロトコル全体のことを指しており、インターネットサービスすべてを指しています。では、このHTTPプロトコルは誰がつくったものでしょうか。Googleという答えも聞こえてきそうですが、Googleは「世界中の情報を整理し、世界中のひとがアクセスしてつかえるようにすること」を企業理念とした「検索エンジン」の会社であり、彼らもまたHTTPプロトコルの仕組みの上でサービスを提供している、有名な企業のひとつです。Webの原理は、イギリス人のティム・バーナーズ=リー博士という人物がWWW(ワールドワイドウェブ)を提唱したことによって始まっています。
http://info.cern.ch/hypertext/WWW/TheProject.html
非常に有名なTedのセッションの中でバーナーズ=リー氏がWWWを発明するに至った経緯が話されているので、一度視聴することをお勧めします。彼がCERNという機関で働いているとき、世界中の大学や研究機関で働く科学者同士で自動情報共有を促進しようとしていたのがアイデアの発端であると語られています。
本来Webが目指していた形は、「私たち全員が出会い、読み書きできる場所である、協調的な媒体」と表現されています。
Web3.0を理解するためには、少し遠回りに思えますが、この"協調的な媒体"というコンセプトについて、Web1.0、Web2.0、そしてWeb3.0にどのように変わっていったか、その歴史を理解することが早道となります。ちなみに、Web1.0活躍した人々がWeb3.0にも登場しているのはTim氏だけではありません。Marc Andreesen(Netscape)、Brendan Eic(Javascript/Mozilla)、
Peter Thiel(Paypal)、Steve Wozniak(Apple)などインターネットのアベンジャーズのような人たちが次々とWeb3界で事業をおこなしているのは、情報だけではなく価値を分散化させることは当時のインターネットからの理想であり、最後のプロトコルのピースが埋まったという表現をしている人もいますが、Webの理想の形であると考える人が多いからではないかと言われています。
(引用)
P13 FinalPiece
by Redwood digital
http://chapters.onefpa.org/fpaofthetriangle/wp-content/uploads/sites/47/2017/10/RDG-Investor-Presentation-v1-10-2018.pdf
Web1.0 (1990~2009年)
まず、1990年からおおよそ20年の間をWeb1.0と表現します。Windows95やWindows2000の登場によって、人々は、コンピューターを手に入れ、メールや、ホームページ作成など様々な機能を使うことができるようになりました。私も学生時代の多くを過ごしたこのWeb1.0の時代ですが、Web以外ではポケベルや、インスタントカメラ、カセットテープ、スーパーファミコン、ワープロなどが流行した時代、この頃、Webで自由に情報を発信することは難しく、多くの人はWebを読むものとして利用していました。
その理由は、何か発信するためには、HTTPという言語を習得して、FTPソフトなどによってホームページをサーバーにアップロードを行う必要があり、コンピューターの知識のない人たちが情報をWebに置くことは非常に難しかったからです。
Web1.0は読む時代であったと言え、"協調的な媒体"というコンセプトには少し程遠いものでもありました。
Web2.0(2010~2019年)
2010年からおおよそ20年の間をWeb2.0と表現します。
スティーブ・ジョブズがiPhoneを発表したり、FacebookやMixiなどソーシャルネットワークによって人々がつながりをもったり、オンプレミスからクラウドへと移行が進んだり、コンピュター業界にとっては非常に飛躍的な時代であったと言えます。この時代において、コミュニケーションツールの発展によって、人々は特別な知識を必要とせず、情報を発信することが可能となりました。
Web2.0は読む + 書く時代になったわけです。書くことによって、バーナーズ=リー博士が描いていた"協調的な媒体"は叶えられたでしょうか?実は、新たな問題が生じてきます。
プラットフォーム企業は、個人の発信した大規模なデータを保持し、さらには、それ自身の利益率の高いビジネスモデルによって、支配的な構造を持つようになっていったと言われています。インターネット(網)という言葉とは裏腹に、コンテンツ自体は、スタンドアロンのコンピューターに限りなく近く、特定の信頼できる機関によって一元化されていったからです。
このことについて、Ethereumを立ち上げたGavin氏はカンファレンスの基調講演の中で、スノーデンがCIAの秘密を暴露した事件を例にあげ、現在のWebはすでに壊れてしまったという認識を示しています。度重なるデータの漏洩や政府や企業における監視などを問題視しています。他にもApple と Epicの対決によって注目されたインターネット上の報酬をめぐる争いも注目されましたが、"協調的な媒体"というコンセプトはいつの間にか、中央集権化された企業間の争いや、格差など、様々な問題を生み出している状況にあります。Gavin氏は、Dapps: What Web 3.0 Looks Likeというタイトルで、2014年の4月にも同様の事象をModern Worldの中で紹介しています。
整理すると、あらためてWeb2.0は読む+書く時代であり、"協調的な媒体"には近づいたものの、新たな問題が生じてきました。
Web3.0(2020年~)
よくネットの笑い話として、エクセルの計算をソロバンを使って検算する話があります。これは、テクノロジーが変わっても、その基本的な概念やプロセス個人の意識も含めて、古いままに残り続けることが引き起こしている問題ですが、Webの世界も同様にして、変化に対して再構築していくことが望まれています。この10年でWebのストレージに格納されるデータは飛躍的に増加しました。ECサイトでの購買情報、日々のランニング記録などを含むヘルスケア情報、個人の趣味、写真、漫画、音楽、映画、、データなど膨大です。さらに、そこから生まれるマーケティングビジネスを筆頭に、情報から生まれる利益も莫大なものになっています。情報を多く保持している企業は、Winner takes allの原理で、徐々に支配的な状況を引き起こします。また、膨大なデータは中央の企業の中ですら、正しい間違っているかその判断は極めて難しくなっています。
そういった中で、Web3.0は、読む+書く+持つ時代を目指しています。データは特定の企業に属さず、個々人がもつために、分散化されたシステムによって管理されることで問題を解決することが期待されますが、この分散化された仕組みこそが、ブロックチェーン技術です。
データを持つということはどのようなことなのか、電子書籍の事例が一番わかりやすいかもしれません。Amazonで購入した電子書籍。これまでユーザーはあくまで本の所有権ではなく、本の利用権を購入しているに過ぎませんでした。そのため、Amazonのアカウントが何らかの理由で停止されたり、最悪なケースではAmazonがサービスを終了した際に、書籍を読むことはできなくなりますが、分散化された社会では、電子書籍は、フィジカルの書籍と同様にして、永続的にユーザーの手元に残り続け、飽きたら友達に譲ったり、マーケットで売買することも自由となるなど、データを個人が持つことによって、新しい可能性が生まれていきます。
それでは企業主体ではない、P2Pのネットワークが個人の所有を可能にしたのかといわれると、まだそれでは説明が不足しています。P2Pの仕組み自体はSkype(初期)や、Bittorentをはじめ、ゲームの仕組みにおいても、スプラトゥーンやダークソウル、モンスターストライクなどにも応用されている技術でもあります。分散化されただけではまだ不十分で、ここにブロックチェーンを利用する必要性について説明するときに、ガバナンス構造というものが必要となります。
コンセンサスによるガバナンスの構築
インターネットゲームで遊んでいて、突然まったく知らないプレイヤーに「取引しましょう」と声をかけられた場合、詐欺じゃないかと警戒するかもしれません。
分散化されたシステムによって中央集権的な企業は不要になると言われても、万が一、トラブルがあったときに、運営者や企業に対して相談することができないことを不安に思うはずです。
コンピューター上の仕組みでも、httpや認証サービスにおいても、信頼のあるルートオーソリティからツリーを下すような仕組みによってチェックを行っていますが、人間関係もまったく同じかもしれません。ビジネスマンでも最初に企業名と部署名が記載されている名刺を交換することによって信頼関係を結びます。
一見、ルートオーソリティにおける信頼は安心なように思えて、ひとたびその信頼が崩れた時には我々はなす術がありません。インターネットの取引で、運営が満足度のあるトラブル解決をしてくれることばかりではなく、もし満足のいく対応をされないとき、我々が取れる手段は限られてくるのではないでしょうか。
まったく見ず知らずの人たちがつながり合うことが前提となっている分散システムの場合には、契約書や名刺や、他人の仲介は必要ありません。人の手を介することのないコンセンサスアルゴリズムといわれるガバナンス体制の仕組みによって、誰もが自由に安心してつながり合うことが可能となっています。
合意形成の仕組み
1980年代にレスリー・ランポート氏らによって定式化された問題がビザンチン将軍問題といわれており、ブロックチェーン関連のテキストには必ず登場する有名な問題です。中央の管理システムが存在しない分散管理の仕組みにおいて、参加者の中に故障したコンピュータや悪意を持った個人が紛れ込んでいる状態で、全体として、正しい合意を形成できるのかについて、ローマ帝国の戦国に喩えて考えています。
ビザンチンの中では、進軍か退却のどちからの意思決定について、途中の連絡経路で誰かが嘘をついていても、かならず合意形成するような仕組みが考えられており、それらの仕組みがブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムの中でも、応用されていると説明されています。
サトシ.ナカモトという謎の人物がビットコインについての論文の中で触れている有名なPOWがそれにあたります。POW自体も、元を辿れば、1997年ハッシュキャッシュの考案者、アダム・バック (Adam Back)が考案したアイデアと言われており、非常に成熟したアルゴリムズで、かなり古くから、情報を個人間で取引することについて問題意識があったことがわかります。
合意形成の仕組みの多くは、報酬と罰金のバランスで成り立っています。たとえば、合意に参加する人たち対してそのネットワークで使われるお金を預けさせておき、裏切ることによって、ネットワークの価値が失われれば自分たちに大きなダメージがかかるように調整されています(PoS)。このガバナンス体制が存在することによって、中央が存在することなく、個人間の繋がりによって安心した取引を行うことができます。
DAOとメタバースの繋がり
個人が結びつきをもつことができれば、企業が存在する理由もなくなるかもしれません。DAOと呼ばれる非中央集権的な自由な組織での経済活動が可能となりました。経済価値が非中央集権化された、どこにも所属しない場所におかれるのであれば、組織やプロダクトですら、レガシーなシステムに縛られなければならないのかと考えることは非常に自然な流れのようにも思われます。
これからの時代は、会社という組織がなくても、プロジェクト毎に必要な人が集まり、プロジェクトが終われば解散するような、自律分散型組織の方がマッチしている気がします。有名なUniswapというプロダクトでは参加者が投票を通じて、様々な問題や課題について議論しています。
またその動きは仮想空間にも広がり、Decentralandという2020年に公開されたプラットフォームでは分散管理でガバナンスを構築するというDAOによって運営されています。Decentralandのコードはオープンソースで公開され、コンセンサスレイヤー、ランドレイヤー、リアルタイムレイヤーという各種のレイヤーで構成されています。さらにLANDの契約と仮想通貨を連動する形でインフレやデフレが起きにくい仕組みをとっています。
これは、実際の世界の民主主義の動きに類似していることから、メタバースという現実リアリティを語る上でもDAOは非常に重要な仕組みです。単純に3Dで世界を表現したものは、過去にもあったはずですが、あらためていま、注目されている理由は、ガバナンス機構にあるといっても過言ではありません。
https://grayscale.com/wp-content/uploads/2021/11/Grayscale_Metaverse_Report_Nov2021.pdf
Conclusion
ブロックチェーン技術は、分散化されたシステムで〜と説明できても、分散化されることの必要性は、普段、あまり議論されることが無いかもしれません。その理由は、日本において、これまで問題視されることがなかったからです。
最近、Facebookが断念したLibraのコンセプトでもあった、アンバンクト(unbanked)な人々を救うというテーマは、日本に住んでいるとまったく意識できないものです。
世界で17億人の成人(世界の総人口から換算すると、4人に1人)が銀行の口座をもっていないという事実を、Libraのコンセプトを学ぶことによって、私自体、気づくことができました。
リープフロッグ現象とはカエルが一足飛びをするように技術が発展することで、例えば、近年、中国の屋台でQRコード決済が多く使われていたり、アフリカで水のインフラよりも先にWifiが整備されるなど、先進国よりも途上国の方が先に先端技術が普及することなどの説明に用いられます。また、この言葉は、課題を持ちにくい国や人でいかにイノベーションが生みにくいかという事例にもなります。日本では、治安が良く、現金決済が不便なく行われているため電子通貨の導入が遅れていると言われていますが、分散システムについても、今現状で課題感のある国や人々が先んじて進んでいくと思われます。一方で、NFTやMetaverseと日本のアニメや漫画文化などの相性の良さなども活発に議論が進んでいるため、カエルの一足飛びを指を加えてみるのではなく、そこに参加して、新たな時代の切り替わりを身をもって体感することは、非常に重要なことではないかと思います。
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