ぶらり旅に同行させてもらった。(2)
さて。
西武秩父駅から出発のバスにギリギリ飛び乗り、いざ参らん。
どこに??
と、ここで初めて「三峯神社にむかう」ということを知らされた。
お……? 聞いたことあるぞ……?
なんかパワースポットとして有名な……狼のいるところ……?
友人は、縁結びとして有名らしいとテレビで見て行き先を決めたそうだ。
そういえば1年ぶりだし、お互いの恋愛事情もなんも知らんままここまで来たな、と今更気づく。
なんだよなんだよ~~~久し振りにあって恋バナしてくれんのかよ~~
楽しみじゃーーーーんニヨニヨニヨニヨ……
神に願いたい恋でもしてるのかとワクワクしながら聞いてみたところ、
「いや、なんかよくわからないけど、なんかが……? なんか、アレ……ほら、忘れちゃったけど、なんかアレ、神的なアレが超すごいってやってて、それならせっかくだし願っとこうと思って」
すげぇアレアレ言いますやん……
マジで覚えてないですやん…………
これもう絶対たまたまテレビ見てて「へー、おもしろそー、行ってみよー!」ってなったやつですやん…………
「おがさんは?」
「京都の縁切寺に行ってみたいなー、かっこよさげー、と思ってたのに、こっちは縁結びなんだなって今とても思ってる」
有名な遠い遠いパワスポに、
目的ふんわりしすぎな輩が2人まかりこします。
こんな理由を神様が聞いたら、
「知らんがな。切る縁も結ぶ縁も、おめーら元からないんやないかーい」
と突っ込まれそうな会話をしつつ、バスに揺られる。
そうして約1時間半。
到着前にふたりともしこたまバスに酔った。
そういえば私達はふたりとも乗り物に弱い。
その中でもバスとの相性は最悪だ。
久し振りすぎて忘れていた。
車酔いする二人組がなにやってんだという感じだが、私も友人も、まさかこんなに乗車時間が長いと思っていなかった(調べていなかった)ので、薬の準備などもあるわけがなく。
なんとなくざっくり時間は決めるけど、
具体的に考えないとこうなるよな、と大いに反省。
しかして到着! 三峯神社!
せっかく到着した三峯神社に参拝するため、駐車場から境内に向かって「ウップ……」と思いながら歩き始める。
けれども、それからすぐのこと。
なんとも不思議なことに、ふたりとも車酔いが急にスッとなくなったのである。
「あれ? なんかもう大丈夫かも……」
「……おがさんも? パワースポットって酔いにも効くんかな?」
「すげーね、狼さま。さすがイヌ科!」
んなアホな、というような会話をしつつ山道を進む。
すると、「あ、おがさん」と不意に友人が怖いことを言いだした。
「30分後に出るバスに乗れないと、次のミッションがクリアできません」
おおおおい!!??? それ早く言おう!!????
ていうか、のんびりなの、せっかちなの、どっちが好きなのーーー!!??
そもそもゴールまでどれくらいなのかもわからないまま、結構な山道をがんばって歩く。
ふと見ると、前方に何やら立ちどまっている人がいるではないか。木々の繁る山の奥を指さしている。
なんだろうと立ちどまり、目を凝らすと……
めっちゃ尻尾をビチビチ振って、1頭だけずっとこのポーズ。
カメラの起動が遅い私のスマホを待ってくれているのかと思うほど、ずっとこの姿勢で一点を見つめていた、鹿。
写真撮らせてくれてありがとう。
特別信心深いわけではないが、
こういう情景を見ると、なんだか神秘的な存在ってあるんじゃないだろうかと思えてくる。
心に響く風景って、創作意欲もムクムクしますな。
歩いていると、道なりになんかすごい巨大な杉があって、
うおおおー!でかーーーー!!!!
と見上げてパシャリ。てっぺん光ってる。
これは、なんかいいもの見たぞ、な気持ちになるなあと。
そして、このぶっとい根元を見た私と友人の感想は以下。
擬人化が好きなオタクどもの戯れ。
日本の神様だからきっと許してくれると思ってる。
ちなみにここを通り過ぎるとき、友人が急に思いだしたように、
「あのくらい長い足だったらいいな。見える世界違いそう」
「見える世界っていうか、住む世界っていうか、住む星がそもそも違いそう」
「あ、そっか」
どうした急に。
人間の足の長さに例えるには、ちょっと次元が違いすぎるぞ。
そうこうしていると、あっという間に拝殿に到着。
ちょっと台湾のお寺とか思いだす色味。色鮮やか。
ここまで、写真でもおわかりいただけるかと思いますが、参拝者がものすごく少ないのに晴れていて、でもそんなに暑くもないという、超絶ラッキーデーでした。
普段はすごい混むらしい、人気のパワースポットだそうで。
全く並ばずお参りでき、
なんとなく犬好き心をくすぐられるお守りを購入し、おみくじを引き、
大吉の友人よりいいことたくさん書かれていた末吉を手に入れ、
残り5分とちょっとになったところで、
転がるように駐車場まで駆けぬけるアホふたり。
いや、全力疾走ではないけれど、心の中が全力疾走。
ギリギリセーフでバスに到着し、また即刻出発となる。
ここで
「次のミッションは長瀞でかき氷を食べます」
と友人からの告知イベントが発生。
そしてテンションが爆上がる私。
実は気になっていた場所、長瀞!
そのくせ、埼玉の奥の方、くらいの認識しかなかった、長瀞!
これで「瀞(とろ)」って読むのカッケーな、と思っていた、長瀞!
冷たいトロロみたいでおいしそうな名前だな、と思っていた、長瀞!
渓流くだりもしたかったけど、骨折してるからそれはまたの機会に!
でも有名な長瀞の天然かき氷!? だっけか!
食べられるの!? マ!? それマ!?
と、テンション上がりまくったものの、ここまでの移動や山道散策でどっと疲れまくってもおり、
寝過ごしたら怖いね、というフラグの言葉とともに熟睡した車内であった。(2)