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東海道本線の要衝地 沼津

名古屋発祥のコメダの快進撃 東端が沼津だったキャッツカフェの明暗

 NEWSポストセブンに寄稿した”有名アニメ作品の「聖地巡礼」と鉄道、その現状と課題”は、聖地巡礼と鉄道という潮流を取り上げた。

 静岡市で生まれ育ち、帰省など静岡に行く際には新幹線を使わずに東海道本線で移動していたので、沼津駅には何度も降り立っていた。つい3~4年前まで、沼津駅北口の駅前にはキャッツカフェという名古屋発祥のカフェがあり、そこの名物だったパフェを食べるために途中下車をしたりもした。

 コメダコーヒーといった名古屋発祥の喫茶店が全国的にも猛威を奮い、いまやあちこちで利用できるようになった。名古屋を地盤とするキャッツカフェは全国進出しない。沼津駅が東端だった。その沼津駅前にあったキャッツカフェも閉店してしまった。

コンテンツツーズムで脚光 新たな聖地巡礼地・沼津

 そんな沼津駅だが、コンテンツツーリズムと呼ばれるアニメやマンガの聖地を巡る旅によって再び脚光を浴びている。アニメやマンガによるまちおこしは決して新しいものではない。実際、クレヨンしんちゃんの埼玉県春日部市、ちびまる子ちゃんの静岡県静岡市(旧清水市)といった事例もある。

 また、アニメやマンガではなく、映画やドラマのロケ地を巡るというムーブメントはたびたび起きている。北海道はそうした名所が点在している。

 今回、大きく取り上げたのはガールズ&パンツァーの茨城県大洗町とラブライブ!サンシャインの静岡県沼津市。かつて、沼津市は駅前に機関区があり、現在でも駅北口の近くにSLを展示する公園がある。

 また、ラブライブの舞台にもなった沼津港は、昭和40年代まで沼津港線と呼ばれる貨物線があった。沼津港から水揚げされた水産物が、この線を使って東京などに運搬されていた。

 沼津港線の跡地は、その後に緑道として整備された。蛇松緑道と呼ばれる小径は、駅前の一部を除いて沼津港までたどれるようになっている。

東海道本線の建設にも寄与した蛇松線・沼津港線

 緑道の名称になっている蛇松は、沼津港線の前身の名前でもある。駅前から蛇松緑道を歩いていくと、2キロメートルぐらい歩いたところで公園のようなスペースに行きつく。

 そこから先は2手に小径が分かれており、右に行くと沼津港。左に行くと狩野川に行きつく。狩野川の川岸の手前で、再びちょっとしたスペースが現れる。そこには、枕木式の信号機が展示されている。実は、この左手側の小径が蛇松線と呼ばれていた路線の跡地だ。

 現在の東海道本線は汐留駅(現・新橋駅)-横浜駅(現・桜木町駅)間で開業した。その後、線路は西へと延びていく。その建設過程で大きな役割を果たしたのが沼津だった。

 幕末の沼津には、幕府が兵学校を設置していた。それだけに要衝地でもあったが、鉄道建設に必要な人員などを確保するにも適していた。沼津港まで船で運ばれた建設資材は、蛇松線で沼津駅まで、そして沼津駅から神奈川方面の各持ち場へと運ばれる。

 こうして、沼津を拠点にして東海道本線は東京と沼津を結び、沼津駅まで線路が完成すると、今度は沼津駅を基点にして西へと線路を延ばしていった。

 当時は丹那トンネルが開削されておらず、それゆえに東海道本線は国府津駅を出ると山北駅・御殿場駅などを通って沼津駅へと至るルートを走っていた。

 現在、東海道新幹線が停車する熱海駅や三島駅は、東海道本線から取り残される。1934年に丹那トンネルが開通し、東海道本線は国府津駅―熱海駅―三島駅―沼津駅を経由するルートに切り替わる。従来の山北駅・御殿場駅などを通るルートは御殿場線となった。

東海道新幹線のルートから外れた沼津

 その後、東海道新幹線の建設でも、要衝地である沼津に駅を設置する計画が進められた。沼津市民にとっても、新幹線の駅ができて当然という空気はあった。

しかし、線形の問題から沼津に駅はつくられず、隣の三島駅に開設される。沼津市にとっては、残念な結果に終わった。東海道新幹線の停車駅を三島に取られたものの、いまだ沼津が静岡県東部の主要都市であることは変わらない。

 その沼津は、駅舎を高架化するか否か、貨物ターミナルを移転させるか否かで紛糾し、市が真っ二つに割れている。

 鉄道の名所だけあって、いまだ市政の重要課題は鉄道関係なんだなぁ。

 


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