東京湾に浮かぶ住所のない街
都市博の中止で、開発が頓挫
臨海副都心として開発が進む台場。もともと土砂を埋め立てて造成された人工島ゆえに、その姿が人前に現れた時点では人が居住しない場所だった。
1997年にフジテレビが本社屋を台場に移転。異様な球体展望台を備えた建物は、何もない無人の台場のシンボルにもなる。
それまでの台場は計画通りに開発が進んでいなかった。バブル崩壊という日本経済の低迷。それが開発熱を急速に冷え込まさせる。こうした経済状況にくわえ、臨海副都心の推進役だった鈴木俊一都知事が4期で退任。混戦レースになった新都知事を決める選挙で、後継者とされた自治省出身の石原信雄が落選。それも臨海副都心の開発を抑制した。
無党派層の支持と世論の追い風を受けて当選した青島幸男新都知事は、翌年に台場で予定されていた世界都市博覧会(都市博)の開催中止を公約に掲げていた。都市博の開催期日は目前に迫っており、それだけに開催か中止かの判断は早急に出さなければならなかった。就任直後、青島都知事は都市博の開催中止を発表。都市博が白紙撤回されたことで、臨海副都心の開発スケジュールにも大きな狂いが生じた。
当時の苦しい経済状況を考慮すれば、都市博の中止を無闇に批判することもできない。前任の鈴木都知事は都市博中止の決定に怒り狂ったが、選挙で当選したばかりの都知事の決定だから、いわば民意を得た判断でもある。
都市博の中止を受け、台場進出を予定していた企業も続々と約束を撤回。台場への企業誘致や都市開発を進めるために設立された第3セクターの東京臨海副都心建設・竹芝地域開発・東京テレポートセンター3社はその影響で大幅な赤字に陥り、破綻に追い込まれた。
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