扉が開かない10年間
小高い丘に立つ伏魔殿
4月7日、安倍晋三首相は首相官邸で記者会見を開いた。新型コロナウイルスの蔓延により、日本国内でも特別措置法が制定された。それを発動させるための緊急事態を宣言するための会見だ。
法律を制定した後、すぐに伝家の宝刀を抜くかのように思われたが、安倍晋三首相は簡単には緊急事態宣言を発しなかった。そこには、7月に開幕する予定だった東京五輪が大きく影響していたといわれる。
緊急事態を宣言してしまえば、当然ながら東京五輪の開催は絶望的になる。それは誰もが容易に想像できる。日本国内はおろか世界でもそう認識されるだろう。2020年に五輪を開幕させるには、緊急事態宣言を出すことは避けなければならない。そんな思惑が交錯し、葛藤したはずだ。それが緊急事態宣言を遅らせた。そんな読みが、あちこちで囁かれた。
そして、宣言を出すタイミングを逸した。緊急事態宣言が出なかった背景は、あちこちで流布している。五輪は一因でしかないかもしれない。とにかく、首相がいつまで経っても緊急事態宣言を渋っていたことは事実だろう。
4月6日に、明日に緊急事態宣言がというニュースが流れた。緊急事態宣言の発令は歴史上初。そして、翌7日に記者会見が設定された。これで、緊急事態宣言が発令されることは確実になった。
「永田町」は、我が国の“政治空間”を表す符牒だ。永田町には国会議事堂、衆参の国会議員会館などがある。そして、首相官邸と公邸もある。
「永田町」の頂点に位置するのは首相官邸だ。公邸は住まい。いわゆる、生活の場。首相には私邸もある。安倍晋三首相の場合は渋谷区に私邸を構える。
一方、国が用意した住居は公邸。これは官邸に隣接する。そして、職場となるのが官邸だ。首相の記者会見は、通常なら官邸で開かれる。
官邸といってもその内部は広く、6フロアで成り立っている。官邸の一般的な出入り口とされる正面口は3階に位置する。これは、官邸が小高い丘の上にある構造からそうなっており、もちろん1階にも2階にも出入り口はある。
しかし、記者が出入りするのは基本的に3階の正面口に限られる。2009年に官邸会見に初参加して以来、私は100回ほど官邸に足を踏み入れている。そのすべてが、3階の正面口から入った。その玄関口以外で入館・出館した経験はない。
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