【書籍・資料・文献】『埼玉化する日本』(イースト新書)中沢明子
横浜市長選の衝撃
8月22日に投開票された横浜市長選は、山中竹春候補の圧勝で幕を閉じた。選挙戦序盤、知名度に劣る山中候補は苦戦を強いられていたと思うが、中盤から猛然と巻き返していった。
蓋を開けてみれば(むしろ投票箱が閉まってみれば……だが)ゼロ打ちという結果だった。
選挙戦最終日、桜木町駅前で最後の街頭演説をする山中竹春候補
現職の菅義偉首相の地盤である横浜市で、野党軽候補が圧勝する。現職の市長を含め、現職の大臣までもが職を辞して立候補した今回の横浜市長選。ほかにも「、地元・神奈川県の元知事が参議院議員を辞して挑み、知事や衆議院議員の経験もある作家が出馬するetcなど、8人の候補が乱立したことなども盛り上げる大きな材料になった。
ゼロ打ちという大勝は、菅政権には大きな打撃になったといわれる。それまで菅義偉総裁は9月の総裁選を乗り切り再任されるとさえ思われていた。それが、急転直下。この結果から菅さんをトップにして衆院選を戦うことは難しいとの空気も自民党内に流れた。
衆議院の任期は、間もなく切れる。秋には衆院選があるから、今のうちのトップを変えて体制を整えたい。横浜市長選の敗北は、そんな自民党内にくすぶっていた危機感を表出させた。一年前、菅内閣は誕生して高支持率を叩き出した。その高揚感は、すでにない。
菅政権が発足してからも、多くの地方戦で惨敗を喫していたのだが、やはり地元・横浜での大敗北は大きかったようだ。横浜市長選という、一地方選が自民党を、そして国を動かしたのだ。
3つの政令指定都市を抱える神奈川県の知事
埼玉をdisった『翔んで埼玉』は、SNSをはじめとしたインターネット上で話題を呼び、長い歳月を隔てて宝島社から復刊。時を経てベストセラーになり、2019年の埼玉県県知事選挙では投票を呼びかけるPRポスターなどにも採用された。
『翔んで埼玉』の作中にも足掻かれているが、関東の序列は東京都を頂点に2位が神奈川県、そして3位を千葉県と埼玉県で争う。
この序列は、都市のイメージに起因することが大きい。人口規模で見れば、千葉県は約628万人、埼玉県は734万人。埼玉県の方が人口では上回っている。
一方、千葉県千葉市が政令指定都市に移行したのが1992年、埼玉県さいたま市は浦和市・与野市・大宮市が2001年に合併して2003年に政令指定都市へと移行。
政令指定都市が必ずしも都市の発展具合を示す指標になるわけではないが、政令指定都市は道府県と同等の権限を有する基礎自治体なので、政令指定都市のあり・なしはその自治体の発展ぶりを示す、ひとつの指標ではある。つまり、千葉市の方がさいたま市よりも10年以上も早く政令指定都市へと移行して、埼玉を突き放しているということでもある。
都市の発展ぶり、成熟度を示す指標はたくさんあるので、どちらに優劣をつけることはできない。そもそも東京都が1位、2位が神奈川県というヒエラルキーも私たちの心の中で勝手につくられた順位づけにすぎない。それでも、意図して、ときに無意識に人は都市に序列をつけてしまう。それは仕方がない。
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