たった一人の撮り鉄修行
2019年11月11日に、新刊『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)を上梓した。
特急といえば旧国鉄、現・JR各社があちこちで運行している。そもそも新幹線そのものが特急列車であり、だから一般的に特急で思い浮かべるのはJRになる。
しかし、私鉄も特急を運行している。私鉄の場合、JRと並走している区間が多かったり、緩急接続を目的としていることが多い。そのため、特急料金を必要としない列車も多く存在する。
また、一般的に特急は専用車両を充てられるケースが多いものの、私鉄では準急や急行などと同じ車両を使っているケースもある。その場合、おおむね特急料金を必要としない。
山手線などの通勤車両は、混雑緩和のため一車両のドアを多くしている。乗降口が多い方がホームの1箇所に乗客が固まらずに分散し、それが混雑を緩和させる効果があるからだ。
しかし、専用車両で運行される特急は、車両の前後に乗降口があるだけの構造になっている。特急列車において、通勤ラッシュのような混雑は想定していない。一方、私鉄は特急料金を必要としない運用をしながらも、車両も特急専用を用意しない。時に、普通列車として走り、時に特急列車として走る。そのため、乗降口は車両の前後とは限らない。
これだけを見ても、JRと私鉄などで特急列車は多岐にわたる。一口に特急といってもさまざまな車両で運行されていることがわかる。
そうしたマニア的な視点はひとまずおくとして、一般乗客には”特急”と言葉は、どこかしら特別な響きを内包している。そのため、特急にはスピードもさることながら外観デザインや内装、サービスも特別なのでは?という前提が常につきまとう。
今回の私鉄の特急に絞った同書は、私が2006年に平凡社新書から上梓した『全国私鉄特急の旅』の系譜に連なる内容だが、この10数年間で私鉄特急をめぐる状況は一変した。そのために全面的に再取材をし、そして文章も大幅に加筆・修正した。
写真も新たに撮り下ろすことになった。そのため、7〜8月にかけて、私鉄の沿線を繰り返し訪ね歩いた。
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