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出会いがしらの事故

 キャバクラで遊んでる方なら、誰もが「想いを遂げたい」と思ったことがあると思う。
 その度合いは、ひとにより違うと思うが、まったくそんな風に思ったことがない方は、いないと思う。どうだろうか?

 私がいままで「想いを遂げた」ときのことを思い出してみると、そのほとんどが「あれっ?」って感じで、簡単に遂げてしまったことが多い。初めての店、または、初めて会ったキャストで、その日に場内入れて、アフター。そのまま想いを遂げてる。まさに「出会いがしらの事故」のようである。出会ったその日ではなくとも、次に会うのは店外で、そのまま遂げる、というのも多い。これも、最初に会ったとき「出会いがしら的」な「何か」が、お互いの間に漂ってる。漂ってるから、最初の場内で、即、店外なわけである。
 こういった「出会いがしら的な何か」というのは、恋愛の始まりやいち夜の出来事が起こった時、お互いの間に漂っている。つまり、キャバクラで想いを遂げたとき、「出会いがしら的な何か」が漂っていれば、それは、キャバクラ嬢として、想いを受け入れたというより、単純に、客を「好きだ」と思ったわけで、「出会いがしら的何か」=「ひとめぼれ」ということだ。
 「ひとめぼれ」されることは、人生において何度もあるわけでなく、当たり前だが、20数年飲んできても、「出会いがしらで想いを遂げた」ことは、10本の指で足りてしまう。また、こういった場合、「想いを遂げた」あとはつきあうという形になることが多い(キャストとの恋愛については、また、別のときに書いてみたい)。
 では、出会いがしら以外で想いを遂げたときのことを考えてみると、そのほとんどが、いわゆる「枕」だった。色恋営業の延長線に枕が用意されてる場合、やり方さえ間違わなければ、ほとんど想いを遂げることができる。この「やり方を間違わない」というのが、実は、なかなか難しく、「枕を出さなくても、色恋だけで引っ張れる」とキャストに判断されたら、永遠とそのチャンスは訪れない。もし「想いを遂げるため」または「つきあいたい」と思って通っている客が、キャストにそう判断されたら、お金を使えば使うほど、ゴールは遠くなる。
 では、「出会いがしら」だけに絞って、次々と指名を変える、または、一人のキャストを長く指名しないというのが、正解か、といえば、そうでもないようだ。前者に関しては、ものすごく効率が悪いし、後者の場合でも、長く、そして一途に指名したことで、相手に想いが伝わり、うまくいくといこともあった。
 つまり、キャバクラで想いをとげるのに、近道やマニュアルはない、という至極あたりまえの結論に達する。ただ、確実にいえることは、今までの人生のなかで、全く恋愛経験をもってない客は、キャバクラでも、もてないということ、そして、数多くの男性、しかも「下心を持った男性」に接する機会が多いキャストたちは、学生やOLより遙かにシビアに男を見てるということである。
 あなたが、使っても使っても枯れない財布をお持ちなら、アプローチの仕方も変わるし、違う世界が開け、想いを遂げることができるだろう。実際に、そうやって飲んでいる方もいる。しかし、私のような極々普通の勤め人が想いを遂げるのは、なかなか難しいわけである。
 かくいう私も、想いと遂げようとして貯金通帳をゼロにしたり、寒空の下、待ちぼうけをくったり、家まできていただいたのにのらりくらりと誤魔化されて、想いを遂げられなかったりと、散々「しんどい勉強」してきた。
 それでも、あの「出会いがしらの事故」が『今夜こそ、また、起こる気』がして、夜の街を彷徨う。
 ほんとに懲りない、アホである。

※2005年8月記述

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