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361 投資をしているのは誰? - 日本の経済主体別 総固定資本形成

日本の経済主体別固定資本形成について、その推移を可視化してみます。

1. 日本の総固定資本形成

前回は、日本全体と経済主体ごとの総固定資本形成、固定資本減耗、純固定資本形成をご紹介しました。

今回は、総固定資本形成、固定資本減耗、純固定資本形成のそれぞれについて、経済主体ごとの推移を可視化し、どの経済主体の規模が大きいのかを確認してみます。

まずは、投資となる総固定資本形成から見てみましょう。

総固定資本形成 

図1 総固定資本形成 日本
(国民経済計算より)

図1が日本の経済主体別総固定資本形成の推移です。

圧倒的なのは企業による投資です。

バブル期に90兆円程度に達し、その後はアップダウンがありながらも一定規模が維持されてきたことになります。

特に、リーマンショックで大きく減少した後は、基本的に増加傾向が続いています。

一方で、家計と政府は1990年代後半をピークにして減少し停滞が続いています。

それぞれピークからすると10兆円程度は減少しているようです。

金融機関と対家計民間非営利団体(NPISH)はごく小規模である事も確認できます。

2. 日本の固定資本減耗

続いて、経済主体別の固定資本減耗についても見てみましょう。

固定資本減耗 日本

図2 固定資本減耗 日本
(国民経済計算を基に作成)

図2が日本の経済主体別固定資本減耗です。

やはり企業が圧倒的で、かつ増加傾向となっています。

1993年から1994年にかけて急激に増加していますが、これは1993SNAから2008SNAへの切り替えによるものと考えられます。
固定資本減耗の評価方法が変わったのか、それまで計上していなかった項目が計上されるようになったのかといった事が考えられそうです。

家計の固定資本減耗は緩やかに減少を続け、政府はやや増加しています。

いずれにしろ、投資規模の大きな企業の固定資本減耗が大きいという事が確認できますね。

3. 日本の純固定資本形成

最後に、総固定資本形成から固定資本減耗を差し引いた純固定資本形成について見てみましょう。

純固定資本形成がプラスだと固定資産残高が増え、マイナスだと減る事になります。

純固定資本形成 日本

図3 純固定資本形成 日本
(国民経済計算より)

図3は日本の経済主体別純固定資本形成です。

家計、企業、政府それぞれが、1990年代をピークにして減少し、2010年頃から停滞している事になります。

2000年代後半から、家計はマイナスとなり、企業と政府はややプラスで推移しています。

企業は総固定資本形成、固定資本減耗では規模が大きかったですが、差引の純固定資本形成では近年政府や家計とそれほど変わらない規模感となっています。

いずれの経済主体も、減耗と相応する程度の投資しかなく、かつてのように投資が大きく上回っていた状況とは大きく異なっている事になりますね。

4. 日本の純固定資本形成の特徴

今回は日本の経済主体別に、総固定資本形成、固定資本減耗、純固定資本形成の推移をご紹介しました。

投資の規模は企業が圧倒的で、高止まりが続いているような状況です。

家計と政府は同じくらいの規模で、1990年代をピークにして減少、停滞が続いています。

2010年頃から企業と政府の総固定資本形成はやや上向きとなっていますので、今後は少しずつ投資が増えていくのかもしれません。

一方で、純固定資本形成は各経済主体とも減少して、当時からするとゼロ近辺で安定しています。
減耗分に相当する投資しかしていない状況で、固定資産の蓄積がわずかずつになっている事を意味します。

特に企業部門で、総固定資本形成が固定資本減耗を大きく上回り、投資が活発化していくのか、今後の推移が気になるところです。

皆さんはどのように考えますか?



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