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読書『マジカルグランマ』:マジカルマミーもあると思う
柚木麻子さんの『マジカルグランマ』を読んでみた!
女優になったが結婚してすぐに引退し、主婦となった正子。
夫とは同じ敷地内の別々の場所で暮らし、もう4年ほど口を利いていない。
ところが、75歳を目前に再デビューを果たし「日本のおばあちゃんの顔」となる。
しかし、夫の突然の死によって仮面夫婦であることが世間にバレ、一気に国民は正子に背を向ける。
さらに夫には2000万の借金があり、家を売ろうにも解体には1000万の費用がかかると判明、様々な事情を抱えた仲間と共に、メルカリで家の不用品を売り、自宅をお化け屋敷のテーマパークにすることを考えつくが―
パワフルな主人公、正子が痛快だった!
この本に出会うまで知らなかった言葉、「マジカル ニグロ」。
検索しまくったところ、物語の主人公の白人を助けるためだけに存在し、魔法のような力を使う黒人のステレオタイプのことを指すらしい。
正子は自分が演じてきた「日本のおばあちゃんの顔」こそが「マジカルグランマ」だったのでは、都合のいいステレオタイプを演じることで、そこからこぼれた人を傷つけてきたのではないかと気付く。
これ、「理想の母親像」はけっこう分かるかもしれない。いうなれば「マジカルマミー」。
最近は母親たるもの身を粉にして我が子に尽くし、それが当然で不満になんて思わない…という幻想は物語の世界でもだいぶ壊されてきているとは思うけど。
この本ではステレオタイプの対象が「おばあちゃん」なのが新鮮だった。今のおばあちゃんはまだまだ若くて元気、仕事をしていたり孫育てを一手に引き受けていたりする。
身綺麗で、ウルサイことは言わず、気前よくお小遣いをくれて…
うーーん。私の実の母親や祖母は全然こんな感じじゃない。
ステレオタイプが成り立ってしまうのは、その対象についてよく知らないからかもしれない。
私は仕事柄「おばあちゃん世代」と会うことが多い。
それはそれはいろんな人がいる。
孫は面白い、自分の子より可愛いという人も、孫が来るとどっと疲れる、ちょくちょくは勘弁してほしいという人もいる。
クールで厳しく見えるけど実は優しかったり、ニコニコしてるけど実は全然話聞いてなかったり。
同じ人でもコンディションによって機嫌によって、いろんな日があるだろう。
それが人間だから。
属性で型にハメることはできない。
でも現状を知らないままメディアの流すステレオタイプに慣れてしまえば、気づかずに差別する側になる可能性がある。
今の母親たちは実在の他の母親たちを知る機会が少ないのかも。私はコロナ禍出産。出産直前に引っ越してもともとの友人は遠方、こっちで知り合いが出来たのは保育園2年目の最近。
それだって送り迎えがたまたま一緒になれば挨拶する程度。何に困っててどう感じてるまで話してる時間ない。
だから、母親たち自身の心の中に「マジカルマミー」はいる。先日書いた記事に反響が大きかったのは、無意識に存在しない「マジカルマミー」と自身の差に苦しむ人が多いからかもしれない。
作中で「マジカルニグロ」はお互いに助け合うことはないと出ていた。白人だけを助ける存在だから。
母たちも、愚痴り合い助け合う場所がもっと増えるといいのかもしれない。
もしかしてこのnoteがそういう場になるかも…
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