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上から目先生の解説マンガ【チーコちゃんに叱られる!〜ボルダリングのルートを『課題』と呼ぶのはなぜ?】
プロクライマー尾川とも子のSNSにときどき登場する、
ちょっと上から目線なのに、おふざけやコスプレ大好きな上から目先生が、
楽しくわかりやすくスポーツクライミングを解説!!
なぜボルダリングのルートは『課題』と呼ぶのか?
まずは、SNSに投稿したマンガをご覧ください!
ボルダリングを完成させたジョン・ギルとは?
ジョン・ギルについて知りたいと思えば、すでに絶版となってしまいましたが、『スーパーボルダリング』に詳しく記載されています。
ジョン・ギル は1937年2月16日アメリカ合衆国のアラバマ州タスカルーサに生まれます。高校を卒業し、友人とコロラドに行きアウトドアで数十メートルの岩をロープを使って登るロッククライミングを体験したのが始まりです。その後はジョージア工科大学に入学し、そこで数学を学びながら体操競技と出会い、身体や筋肉の使い方を学びます。しかし、大学があるジョージアにはロープを使うような大きな岩壁のロッククライミングエリアがなかったため、仕方なく近くの小さな岩を登ってトレーニングを続けることになりました。それが後の「ボルダリング」になります。
彼以前から、数メートルの小さい岩をロープなしで登ることはありましたが、あくまで高所登山のトレーニングの一貫でした。しかし、ジョン・ギルはそこから「ボルダリング」という独立したスポーツ、競技、スタイルを完成させていきます。これがなんと1950年、昭和30年頃のお話です!
命綱となるロープを使うことなく、また登りの補助となる縄梯子や鎖といった道具は一切使用せず、自分の手と足だけを使って登っていく。そこには彼が学んだ体操の身体や筋肉の使い方が大いに役立ちました。彼は本の中で、片腕懸垂や指先だけで体を支えるような動きを披露しています。つまり、それだけ筋肉の使い方がシビアになったのです。どういう風にシビアになったかと言うと、それまで行われてきたロープを使ったロッククライミングでは、垂直以上の壁、つまりオーバーハングを、登る事はありませんでした。身ひとつで登るとなると垂直、もしくは少し寝ているような傾斜のゆるい壁を登っていたのです。手前に倒れたオーバーハングの壁を登るときは、縄ばしごなど何かしら登はんの補助になる道具を使用していたのです。補助道具を使うこと、それは登山により近いクライミングスタイルになります。
そんな時代の中で「スーパーボルダリング」のオーバーハングした岩を身ひとつで登るジョン・ギルのこの表紙!日本には昭和60年頃この本が紹介されたそうですが、私のクライミングの諸先輩方は、ジョン・ギルがこの前傾壁を登る表紙を見て
「この世の人類がこんなことができるのか?嘘の写真じゃないのか!と衝撃だった」
と口を揃えてそうおっしゃいます。
今ではこうしたオーバーハングの岩を登るのは当たり前のクライミング絵面ですが、とにかく、当時は天地がひっくり返るような出来事だったそうです。
ジョン・ギルの精神
より登山に近いクライミングを行っていた当時、このジョン・ギルのボルダリングのスタイルは、登山界からすごく批判され、彼は異端児扱いされます。
ですので、登山とは違うという意味も込めて「ボルダリング」と言うスタイルを完成させたといえます。ボルダリングが登山か?と言われれば、今では違うといえますよね。
どのような点が違っていたかと言うと
登山に近いクライミングでは頂上に到達することが大きな目的でもあります。しかし彼が見出したボルダリングでは、頂上に到達した喜びよりも、登る過程においてのパターンやフォームの分析して、登ること自体に喜び見出しています。
ボルダリングをやった方はわかると思いますが、ボルダリングの魅力は、もちろんゴールに到達する達成感も魅力ですが、それに増して、右手で行こうか?左手で行こうか?どう身体を動かせばいいか?そういったパターンやフォーム、これをムーブと呼びますが、そのムーブのパズルを組み合わせていく過程が面白くて魅力だということがお分かりいただけるかと思います。
より前傾したオーバーハングの岩を登ろうとすれば、物理的、数学的な身体のアプローチが必要になってきます。そこに数学の課題(problemプロブレム)の証明を解いていくのと共通点を見出すのも当然のことと言えるかもしれません。
ジョン・ギルの言葉
「ボルダリングでも数学でも、目的のひとつは興味深い答え -欲をいえば、予想外の答え - を得ることだ。それも、洗練された方法でスムーズに、そしてできるだけ単純にね。つまり、スタイルが重要なんだ」
この言葉の意味がわかるようになれば、あなたも、ボルダラーの仲間入りですね!
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