「消費者理会」6月のゲストはプリファードネットワークスの富永朋信さん!
株式会社秤の小川と申します。10年以上の総合広告代理店での経験とデジタルマーケティング会社やPR会社でのコンサル経験を経て、2018年にマーケターに有用な効果検証法をメインテーマとして統計や因果推論の知識をまとめた「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」を出版、2019年12月に法人を設立し、今は業務委託で複数の役割で活動している複業マーケターです。
【更新情報2024年5月26日】
「その決定に根拠はありますか?」
確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング
戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。
消費者理会
JX通信社の松本健太郎さんのお声がけから、同社の新たなチャレンジをサポートする役割も担っています。
このnoteでは、松本さんと素敵なマーケターのゲストをお迎えして行う無料ウェビナー「消費者理会」とゲストについて紹介します。
順を追ってご紹介します。
松本健太郎さん
松本さんは龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で統計学・データサイエンスを学び直し、デジタルマーケティングや消費者インサイトの分析業務を中心に、さまざまなデータ分析を担当するほか、日経ビジネスオンライン、ITmedia、週刊東洋経済など各種媒体にAI・データサイエンス・マーケティングに関する記事を執筆しており、テレビ番組の出演も多数あります。noteやTwitterなど、SNSを通じた情報発信も積極的で、noteで活躍しているオピニオンリーダーの知見をシェアする「日経COMEMO」メンバーとしても活躍中です。 『誤解だらけの人工知能』『なぜ「つい買ってしまう」のか』(光文社新書) 『データサイエンス「超」入門』(毎日新聞出版)『グラフをつくる前に読む本』(技術評論社)など著書多数です。テクノロジーとマーケティング双方の理解がある希少なマーケターだと思います。私は6年ほど前に広告会社に在籍していた当時、氏と出会いました。当時、計量経済学の分析をマーケティング施策の効果検証に活用する取り組みを行なっていた氏との協業をきっかけに私はデータサイエンスを学び、書籍を出すに至りました。いわば心の師匠です。
JX通信社とは?
「テクノロジーで『今起きていること』を明らかにする報道機関」を目指す報道ベンチャーです。
同社が提供している代表的なサービスは2つです。
ひとつめは「FASTALERT」(ファストアラート)です。これはAIを用いて自然災害・事件・事故・情報漏洩・SNS炎上・新型ウイルス最新情報など様々なリスク情報を提供するサービスです。
一般消費者の発信の中から災害、事故、事件などの緊急情報を収集し、多くの報道機関や公共機関、企業に配信しています。共同通信のほか、NHK、日本テレビ放送網、テレビ朝日をはじめとする全ての民放キー局と全国の多くの報道機関や当局に緊急情報の配信を行っています。メディア企業に対してテクノロジーを活用した情報基盤を提供することで信頼を得ています。
ふたつめは、「NewsDigest」(ニュースダイジェスト)です。これは、一般消費者が「スマートフォンで最も速くニュースを知る手段」となることを目指して開発されたアプリです。ニュース速報や地震・災害速報のほか、鉄道情報など生活に必要な情報を最も速く伝えるライフライン型のニュースアプリ(無料)です。Google Playベストアプリ2019 生活お役立ち部門賞や、アジアの優れたデジタル報道に贈られる「アジア・デジタルメディア賞2020」の特別賞も受賞しています。
参考サイト:JX通信社サービス紹介
私の役割(JX通信社 FASTALEART マーケティング・アンバサダー)とは?
マーケティングの意思決定をする方向けに、FASTALEARTの機能をアレンジし提供する新しいサービスをマーケターに浸透させることです。私もテスト版を使わせて頂いています。
既存からあったソーシャルリスニングに内包される概念としてブランドリスニングという新たな価値をマーケター向けに提供します。炎上監視とも重複します。
ソーシャルリスニングとは?
ソーシャルリスニングはマーケティングにおけるリサーチ手法の一つで、ソーシャルメディア(SNS)上に投稿された消費者の生の声を収集して分析し、示唆を得ることで、自社のマーケティング意思決定に活かすものです。ネット上に公開されているビッグデータから特定のテーマを絞り込んで、データを集め、観察または分析することで示唆を得るものです。SNSの中でも利用者が多く、投稿も(鍵アカを除いて)公開されているTwitterのデータが特に活用されています。FASTALEARTもTwitter社との提携により、報道機関に向けたテーマで情報収集をしています。
(FASTALEARTによる)「ブランドリスニング」とは?
主に自社ブランドにまつわる言及を察知する炎上監視の視点に加え、そこから得られる消費者の声をマーケティング活動に活かすものです。
テクノロジーを生かし、JX通信社がマーケター向けにFASTALEARTで提供する価値はシンプルです。ユーザー(マーケター)の興味がある1テーマ(ブランド)に分析対象を絞り込み、そのテーマでのツイートの抽出と、さらに分類までを機械学習によって行い、人間が行うと膨大なリソースがかかるデータの前処理を効率化し、ブランドの消費者の動向や仮説のタネをいち早くキャッチすることをサポートします。速報性のあるニュースをビッグデータから収集するテクノロジーを保有するJX通信社ならではの提供価値だと思います。
丸亀製麺で「ブランドリスニング」
私は、USJを再生させた日本を代表するマーケター森岡毅氏の「刀」社にあこがれて「秤」という会社を作ったくらい、私は氏に心酔しています。
明確なブランディングができておらず2017年から低迷を続けていた丸亀製麺は、刀社とのパートナーシップによって「すべての店で粉から作る」店内製麺の強みを訴求し、2019年春から客数を増やし復活への道を歩み始めました。その戦略をみちびいた出発点が、森岡氏の分析によって、うどんを食べる人のうち、1割程度しか外食でうどんを食べない事実から、丸亀製麺でしか食べれないうどんがあることを訴求し、家で食べる需要を外食でうどんを食べる需要に引き込む戦略でした。
現在はうどんの需要がどの様になっているか?森岡氏と今西氏の名著「確率思考の戦略論」で紹介された手法で分析してみました。
上記のnoteで参照した森岡氏のインタビュー記事には、ブランドの価値を確固たるものとするため、「出来たての感動」を店で体験していただくための店内のオペレーションの質を上げ、来店されたお客様が、うどんを食べることに感動できる環境を整えることにも尽力されたことが書かれていました。
最寄りの丸亀製麺は、私が住んでいる隣街にあります。天気の良い休日のお昼に小さい娘を載せて自転車でよく食べにいきます。だいたいお店に行列ができています。知人のSNS投稿などでらお店がにぎわっているというような書き込みを目にしたことがありますが、より具体的にはどんな声があるのでしょうか?私もユーザーとして契約しているFASTALEART For Marketingのベータ版を使って調べてみました。
これが、分析画面の一部です。(赤枠の囲みは私が追加したものです)ここでは、「施設に関する反応」のツイッター投稿の抽出を選択した画面をキャプチャしました。(画面はβ版なので、今後変更される可能性はあるみたいです)
機械学習によって、丸亀製麺に関する投稿を文脈から抽出分類してくれます。投稿個別に、フォロワー数、感情の判定フラグやリツイートの予測数といった値も紐づいています。実際には上記画像の表示だけでなく、最新の抽出順で投稿を見ていくことができます。
以下のフィルタ機能によって、投稿(ここでは「丸亀製麺」)の分類をすることができます。ここから任意に指定したフィルタ内容に応じて投稿を見ていくことができます。
「店舗混雑」というフィルタもあります。丸亀製麺の分析では、このフィルタでも投稿がヒットしますが、これに対応する投稿が豊富に抽出できるチェーン店舗はあまりないかもしれません。
人気がゆえに混んでいる為、当然クレームじみた投稿もありますが、大好きであるが故のポジティブな投稿も多かったです。しかし、これだけ人気の丸亀製麺でさえ、国内の約1,150店舗のうちショッピングセンター内の店など約3割が休業となってしまい、手元資金の流出が続いている状況にあるそうです。飲食業界全体として苦しい状況が引き続きなのは周知のことかと思います。
こうした店舗に対応するクレームが価値を生む場合もあります。匿名アカウントでツイッターをされている方も多いので、店舗スタッフに直接は言わないけれども、ネタっぽく投稿してみることもあると思います。そんな声が店舗の運用改善の大きなヒントとなるケースもあります。投稿の抽出や分類といった前処理の手間を省いてスピーディに把握することは、飲食に限らず小売りや商業施設など、多くの店舗業種のマーケターにとって重要なことだと思います。
ソーシャルリスニングの分析を行ったことがある方はお分かりだと思いますが、投稿データを抽出して人力で、先に示したフィルターで分類するにはかなり工数がかかります。その投稿に含まれる単語や、含まれない単語などを細かく考えて指定してそれぞれ抽出する必要があるからです。たとえばクレームを単語基準でソートして分類するのはかなりセンスが必要です。文脈で判断しないといけない場合がほとんどです。先に示したフィルタの粒度で投稿を分類するオーダーが仮に私にあった場合は、白旗を上げたくなるレベルです。FASTALEART For Marketingでは、特定のブランドをテーマとして機械学習によって学習データから(≒文脈などから)これを分類してくれます。前処理のリソース浪費を避け、マーケターが意思決定に役立つヒントを素早く得ることができます。
消費者理会(6月29日火曜日20時~21時)
とはいえ、FASTALEART For Marketingはまだベータ版でこれからのプロダクトです。機能紹介をするよりもまずはJX通信社も含めて、皆さん(マーケター)に知ってもらう活動から始めています。
そこで松本さんとはじめた無料ウェビナーが「消費者理会」です。「消費者『理解』」のための『夜会』的なイベントで、毎月1回開催しています。ホストは松本さんで、ゲスト1名と私です。消費者理解をテーマに松本さんが出した問いに対してお答えしつつ会話します。
事前打ち合わせでは、「ぶっつけ本番でお願いします」とゲストの皆さんにお伝えしています。独自の経験知見をもつゲストの皆さんの生っぽいお話をお聞きしたいからです。
2021年6月29日(火)20時~21時からの会のゲストは、プリファードネットワークスの富永朋信さんです。氏は大手流通企業での要職を歴任されており、マーケティングについて多大な経験をお持ちです。AI企業プリファードネットワークスに行かれた際の記事も氏とお会いする機会を頂く前から拝見しており、重鎮マーケターたる氏が最先端のDXにチャレンジなさることに感銘を受けておりました。
今年の春、水上印刷社のオペレーションセンターの視察をご一緒させて頂く機会があり、はじめてお会いさせて頂きました。氏は行動経済学にも詳しく著書「幸せ」をつかむ戦略を氏とお会いする前から読ませて頂いておりました。実際にお話をお聞きすると、マーケティングにおける消費者行動のメカニズム理解を追求する氏の知識と探求のスタンスから「無知の知」を知ることが出来ました。
まだまだ勉強が足りないと常に謙虚でいようとする一方で、自分も知識を積み上げてきたはずだという自負もあったりします。しかし、氏のお話を聞くと、消費者行動の理解や探求についてのスタンスの時点で、すでに自分のスタンスが甘いもので、桁違いの視界があることに気づくことが出来ました。良い意味で凹むことができました。(以下はその視察の後に書いたnoteです。)
【更新情報2024年5月26日】
「その決定に根拠はありますか?」
確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング
戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。