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2022年6月28日の「消費者理会」Vol.15のゲストは「奥谷孝司」さん

株式会社秤の小川と申します。10年以上の総合広告代理店でのコミュニケーション支援の経験とデジタルマーケティング会社とPR会社でのコンサルティング経験を経て、2019年12月に法人を設立し、今は業務委託でアドバイザーやアンバサダーなど複数の役割で活動しています。

JX通信社の松本健太郎さんのお声がけから、同社の新たなチャレンジをサポートする役割も担っています。同社は、「テクノロジーで『今起きていること』を明らかにする報道機関」を目指す報道ベンチャーです。

私は、KAIZODE(カイゾード)という消費者リスニングツールのアンバサダーとしても活動しています。これは、マーケター向けにユーザーの興味がある1テーマに分析対象を絞り込み、そのテーマでのツイートの抽出と分類までを機械学習によって行い、人間が行うと膨大なリソースがかかるデータの前処理を効率化し、ブランドの消費者動向や仮説のタネをいち早くキャッチすることを可能とした先進的なツールです。同社のテクノロジーによってマーケターが市場や顧客を洞察する解像度を上げることができるツールです。以下がサービスサイトです。

弊社のプロジェクトでも、テストケースとして、KAIZODEを使って定性調査であぶりだすような、仮説の種を発見する取り組みをしています。消費者リスニングは、必要な情報を定義してそれを抽出する時点からテクニックが必要です。テクノロジーの力を使うことで、スピーディにSNS上にある消費者を収集し、最短距離でマーケティングの仮説をみつけることができます。

【更新情報2024年5月26日】

「その決定に根拠はありますか?」

確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング

戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。

「消費者理会」

2022年6月28日火曜日で15回目となるイベントが「消費者理会」です。われわれがお話を聞きたい、学びたいと思う方をゲストに招いてお話をお聞きする消費者理解をテーマにしたマーケター向けの夜会的なウェビナーをめざしてはじめたものです。

これまでの開催でお越しいただいたゲストは下記の皆様です。

・2021年4月 ニューバランスジャパン 鈴木 健 氏
・2021年5月 リサーチャー 菅原 大介氏
・2021年6月 プリファードネットワークス 富永 朋信 氏
・2021年7月 ソフトバンク 井上 大輔 氏
・2021年8月 才流 栗原 康太氏/ブランディングテクノロジー 黒澤 友貴氏
・2021年9月 ファミリーマートCMO他 足立 光氏
・2021年10月 TORiX 高橋 浩一氏
・2021年11月 カーマインワークス 深田 昌則氏
・2021年12月 ゲスト無し。松本さんと小川
・2022年1月 インサイトフォース 山口 義宏氏
・2022年2月 みる兄さん
・2022年3月 ダイキン工業 片山 義丈氏
・2022年4月 クー・マーケティング・カンパニー 音部 大輔氏
・2022年5月 デコム 大松 孝弘氏

松本さんと相談しながらオファーして多くの方にご出演いただくことができました。振り返ってみるとすごい方ばかりです。

マーケターにとって外せないスキルの消費者理解について、ゲストの皆さんそれぞれのお考えをお聞きしながら我々も学んできました。ツールの宣伝は行わずに、参加者の皆さんとともに、ゲストの方からお話を聞いてリアルな学びを共有するコンセプトで行っています。

ゲストの皆様にはイベントの前打ち合わせでは、当日、いくつかのテーマをご用意してお聞きするので、ぶっつけ本番でのトークをお願いしています。普段のマーケティング談義のような会話をお話しをいただくようお願いしています。たとえば「なぜ、消費者理解が必要なのか?」など、モデレーターの松本さんが投げかけるテーマは、小手先のテクニック論ではなく、本質論が多いので、みなさんそれぞれ、お考えもさまざまです。すご腕マーケターの皆さんの思考をお聞きしながら、新たな視点で学んでいます。

2022年6月28日火曜日20時~21時の消費者理会Vol.15のゲストは、

顧客時間 共同CEO 取締役の奥谷 孝司(おくたに たかし)さんです。

奥谷 孝司(おくたに たかし)
株式会社顧客時間 共同CEO 取締役
オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員 COCO(Chief Omni-Channel Officer)
株式会社イー・ロジット社外取締役
株式会社Engagement Commerce Lab. 代表取締役

97年良品計画入社。店舗経験の後、取引先商社出向しドイツ駐在。家具、雑貨関連の商品開発に従事。帰国後、海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛ける「World MUJI企画」良品計画初となるインハウスデザイナーを有する企画デザイン室の立ち上げメンバー。

05年衣服雑貨のカテゴリーマネージャー。定番商品の「足なり直角靴下」を開発、ヒット商品に。2010年WEB事業部長。「MUJI passport」をプロデュース。15年10月よりオイシックス株式会社(当時)入社。現在、専門役員 COCO(Chief Omni-Channel Officer)を務める。
18年9月株式会社顧客時間を設立 共同CEO取締役に就任し、多くの企業のDX改革、D2C事業サポートを行っている。

2021年3月一橋大学大学院経営管理科博士後期課程単位取得満期退学。

主な著書
世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略
マーケティングの新しい基本 顧客とつながる時代の4P x エンゲージメント

マーケティングの潮流の中においては「オムニチャネル」「D2C」など、様々な言葉がマーケティング業界で出てきますが、

氏は一貫して、世の中のデジタル化やテクノロジーの進化に伴い、企業がどの様に「顧客起点」のビジネスを行うべきか?をテーマに、一貫して実務と研究の両面で取り組み、ファクトを積み上げられている第一人者です。

氏の新著「マーケティング新しい基本 顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント」をお読みになった方も多いかと思います。

「つながっている価値」のない企業は、顧客の日常から消えていく――。
デジタル革命によって「顧客とつながる」ことが前提になり、マーケティングの基礎そのものが変わろうとしている時代の「New Basic of Marketing」を理論と事例の両面から解説。新しいフレームワークとして「カスタマー・バリュー・ピラミッド」「エンゲージメント4P」などを提唱する。さらに、その視点から、注目すべきビジネスモデルを持つ企業の事例を分析していく。D2C、OMO、DXなどを推進する上での大原則がここにある。

Amazon書籍紹介より引用

ここからは、書籍の内容を参照しながら、私が学ばせていただいたことの要点をご紹介します。

「つながっている価値」とは?

新型感染症の影響もあり、日本では大手百貨店なども長期閉店を繰り返さざるを得ない状況となり業績が大きく悪化しました。2020年5月に米国ではアパレルブランドのJクルーや、百貨店のニーマン・マーカスなどの経営破綻が相次いで報じられ、同5月初旬には米国のゴールドジムの経営破綻、6月には24アワーフィットネスが破産法の適用を申請しました。

同社は全米2位、約400か所の店舗を運営するフィットネスクラブチェーンです。その一方で、オンラインでフィットネス・プログラムをサブスクで提供するペロトンが急成長しているニュースが報じられました。

急激にデジタルへと移行する顧客行動が追い風になった企業と逆風になった企業で明暗がはっきりと分かれています。

こうした明暗のうち、成長を加速した例として、2017年に「デジタルによって顧客と直接的なつながりを築くこと」を戦略として打ち出したナイキや、新型感染症による断捨離やリモートワークのスペースをつくるための家具の買い替えや買い足しのニーズに対応するデジタルの利便性によって、さらに顧客の支持を集めたニトリ、デジタル化による顧客体験向上に注力し、デジタルを活用して、マスクや体温計などの新たな生活必需品に対して「買い物難民」となっていた顧客に寄り添う取り組みでさらに大きな支持を集めたニトリなど、

消費者の「暮らしのデジタルシフト」に寄り添い、対応するデジタル顧客接点と新しく価値のある体験を作る企業の成功例が書籍で紹介されています。

この書籍を読むことで、企業の明暗を分けた要因は、

単にそれらの企業が顧客との「デジタルチャネル」を持っていた、持っていなかったということではなく、

顧客にとってその企業と「つながっている価値」が十分あったのか?そうでななかったのか?であり、その価値の作り方に本質があることがわかります。

顧客価値の定義は学術においても様々ですが、その価値の作り方において、何から考えるべきか?を整理するための図が「カスタマーバリュー・ピラミッド」です。

「マーケティング新しい基本 顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント」44P カスタマーバリューピラミッドより引用


「つながっている価値」が一番上

このピラミッドは、顧客価値が単なる一元的なものではなく、階層的な構造になっていると考え方を示しています。基盤となる第1階層は「機能価値」次に「体験価値」そして、最上位が「つながっている価値」です。

デジタル時代の顧客中心主義がマーケティングでよく語られるようになり、カスタマーエクスペリエンスデザインやD2Cなどに対応するものとして、「モノからコトへ」という掛け声をよく聞くようになったかと思います。

特に飲食などのサービス業では、これは当たり前のこととして理解されていると思いますが、たとえば飲食では、単においしい料理という機能価値で評価されることはなく、予約や店舗スタッフの対応などの体験価値を良いものにする必要があります。そこまでできると、顧客満足を得て、推奨して頂くことができます。そしていまやサービス業に限らずどんな企業でもサイトやSNSやECで顧客接点を持つようになっています。だからこそ、商品やサービスだけなく、それに付帯する情報提供や価格設定などの一連の提案を組み立てて、競合より秀でた顧客体験を作ることが不可欠です。

その上で、さらに企業と顧客がデジタルで直接つながり、常に最適な提案が届けられるようになってはじめて「つながっている価値」が実現されます。

「マーケティング新しい基本 顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント」44P カスタマーバリューピラミッドより引用 ※再掲

この段階でようやく、顧客とのつながりが最も強くなり、顧客のリテンションが高確率で引き起こされるようになります。

奥谷氏が所属する食材宅配サービスのオイシックスは、事前のコース選択と顧客の購買履歴、お気に入り登録をもとに顧客が必要な食材を提案し、顧客のカートに毎週食材をあらかじめ入れておく方策をとっています。

顧客それぞれが買うであろうとものを精度高く提案してくれるので、オイシックスに頼み続ける理由が利用を重ねるごとに明確になっていきます。まさに「つながっている価値」です。

書籍では、そうした価値の作り方で成功している日本企業の例として、「顧客とのつながり」から商品を考える登山アプリ企業「YAMAP」、 サブスクの「おやつの宅配」で「楽しさ」を届ける「snaq.me」、「ITで流通を変える」を掲げる日本の先駆者「TRIAL」などの事例がひも解かれており、こうした価値をどの様に作っていくか?それを具体的に行っていくための思考とプロセスを学ぶことができます。

これまでのマーケティング思考の4Pを踏まえた「良い商品を創り、競争力ある価格設定をして、他社と異なるプロモーション展開を行い、顧客利便性が高い店舗の良い棚に置く」とは、思考プロセスが全く違います。プロモーションのPのために、顧客のデータをマネジメントするのとは思考の起点から、そもそも違うのだということを、理解することができます。

【更新情報2024年5月26日】

「その決定に根拠はありますか?」

確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング

戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。