328万人のマーケターの皆さまへ!「顧客理解サイクルの作り方」
(株)秤の代表の小川と申します。マーケティング分析の知識を共有する講師やアドバイザーの仕事をしています。2018年にマーケター向けに効果検証や因果推論の知識を共有するために出版した書籍が「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」です。
マイナビ出版社に出版して頂きましたが、数社の出版社とお話ししました。当時、ある出版社から「マーケター」の人数は推計40万人と教えてもらった記憶があります。
人数を把握したくなり、12月中旬に消費者モニターに調査分析し推計した人数は328万人でした。
40万人から、自ら推定した328万人への認識の変化は、これまでの視野を大きく拡げるものです。
1人でも多くのマーケターのみなさんに知見を共有したいと考え、2022年から「顧客理解サイクルの作り方」という講義を開催します。元オリエンタルランドのリサーチャーの山本氏をゲスト講師としてお迎えします。
氏はディズニーリゾートのマーケティングのために、すさまじい量の消費者の傾聴と観察を行なってきた方です。
「顧客理解サイクルの作り方」という同名のマーケティングビジネス書籍も出したいと考えています。実現に向けては、まずは、その書籍をとどける顧客(=マーケター)を理解すべきであり、書籍で紹介する予定ノウハウで実際に行おうと決めたのです。
このnoteでは、私がマーケターを理解するために行った調査より、マーケターの実態把握のために行った分析や、マーケターが参加する有料セミナー市場を確率モデルも使って構造的に把握する分析を紹介します。
【更新情報2024年5月26日】
「その決定に根拠はありますか?」
確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング
戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。
日本のマーケターの実態を把握する。
消費者調査ツール「Freeasy」で、2021年12月中旬に16,000人のビジネスマンと経営者(20代~50代男女)に行った調査がこちらです。
【設問】
ご自身のお仕事についてお聞きします。
2年前から現在、現在から今後1年の3年間の期間を目安として、関わってきた(または関わる予定)の業務内容について。
それぞれの項目に対してどの程度あてはまりますか?
マーケティングに関連する10項目について、それぞれ5段階尺度であてはまるかを聞いています。知りたかったのは明確に「あてはまる」と回答する方の割合です。
集計した内容が以下です。
もっとも割合が低いのは女性50代のマーケティング(市場調査)の0.6%です。もっとも割合が高いのは男性20代の7.7%のデジタルトランスフォーメーションです。赤と青で色分けしていますが、20代男性、次いで30代男性が、各項目総じてあてはまると回答した割合が高くなっています。
調査結果から、10項目いずれかひとつでも「あてはまる」と答えた方をマーケターと定義します。それにあてはまる割合を(マーケター)適合率として性別年代ごとに集計します。
各性別年代の人口に、ビジネスマンと経営者が含まれている含有率と、適合率、さらに85%の係数を掛け合わせました。これは平均年収の半分以下の相対的貧困層が15%存在することや、この調査に回答いただけた方(ビジネスに興味が強い方)の偏りを考慮したものです。
マーケターというと、TVCMを投下する企業のマーケティング部所属の方というイメージがあるかもしれませんが、マーケティング=広告宣伝ではありません。商品やサービスを顧客に届ける一連の活動全てがマーケティングです。マーケティングは大企業だけのものではありません。
今回の調査で推計した広義でのマーケターの人数は328万人です。日本の中小企業の数は358万社です。
商品やサービスを顧客に届ける一連の活動全てがマーケティングなので、日本に存在する企業の数と同じくらいは経営者も含めたマーケターがいると考えれば妥当な数字ではないでしょうか?
マーケターは勤勉?(書籍の年間投資金額)
ストアカ(ストリートアカデミー)でこれまでの2年弱でのべ約600人に有料講義を開催してきました研修会社の講義や企業研修を入れるとのべ1,500人を超え、無料セミナーを入れると4,000人を超えます。(全て本note執筆時点)これまで多くのマーケターのみなさんとの関わりから、マーケターは学ぶ意欲が高い人が多いと感じていますが、定量的に把握するために以下の設問も入れました。
回答結果を「マーケター(328万人)」と「非マーケター(5,655万人)」に分けて年代性別ごとに集計します。
仕事のために購入する書籍に年間1万円以上投資をする方の割合はマーケターのほうが多くなっています。
年間10万円以上投資する方の割合(青枠の箇所)は男女ともに20代をピークにして年代が上がるにつれて減っています。
私は43歳で年齢を重ねて仕事のステージが上がるにつれて自分の仕事のために投資できるお金も増えました。他のみなさんもその傾向があてはまると考えて年代が上がるにつれて、書籍への投資が増えると思っていましたが実際はその逆です。40代50代はもっと投資できるのではないでしょうか?
マーケターは勤勉?(自らの意思による有料セミナー参加回数)
USJを再生させた日本を代表するマーケター、森岡毅氏と今西聖貴氏の著書「確率思考の戦略論」
で紹介された消費者行動のメカニズムの法則(確率モデル)を用いて、有料セミナーの参加回数を推定することできます。その分析を行うためには、「最後にいつ、〇〇しましたか?」という設問が必要です。
オンラインセミナー(無料※ご自分の意思で)/オンラインセミナー(有料※ご自分の意思で)/オンラインセミナー(※有料無料問わず会社で参加など他者の意向で参加)の3種類と、オンラインをリアルに置き換えた合計6種類で聞いています。
20代男性に対して、最後にいつ、ご自分の意思で有料のオンラインセミナーに参加したかを聞いたデータが下記です。
マーケターは直近(14日以前または14日~31日)で参加した方が19.7%。非マーケターは4.7%と4倍の差があります。
この回答結果を分析することで、調査期間から一定期間(ここでは2021年12月中旬の調査時点から1か月)さかのぼった期間のアクションの回数(ここでは有料オンラインセミナー参加回数)を推定することができます。書籍で紹介された数式を使ってExcelで計算した結果が下記です。
青枠の値は回数別(市場)浸透率といいます。ここでは母集団となる20代マーケター男性46.1万人)のうち、当該期間1か月において、0回参加した人が何%か?1回、2回、3回、4回それぞれ参加した人が何%かを推定しています。
赤枠のMという値は、当該期間において母集団(20代マーケター男性)一人あたりの購買アクション回数の期待値です。
緑色のセルのアクションの総回数(8.5万回)÷母集団人数(46.1万人)がM(0.186)です。
これを今回調査対象とした性別年代で全て分析します。
2021年11月中旬~12月中旬までの1か月あたり、マーケター、非マーケターによる有料オンラインセミナーの参加回数と、(その期間に1回以上参加した方の)人数を推定します。
ビジネスマン経営者のうち、マーケターの含有率は11.8%でしたが、有料のセミナー参加回数は半分に迫っています。
平均回数とMは下記です。
平均回数は、当該期間1か月のうち、1回以上参加した人の平均回数です。
Mは市場における、当該期間のうち、1人当たりのアクション回数の期待値です。
20代男性のマーケターを例にすると、
平均回数
85,917(回数)÷51,012(1回以上アクションした人の人数)=1.68
M(市場ひとりあたりのアクション回数の期待値)
85,917(回数)÷461,037(男性20代マーケター全員)=0.19
となります。
Mはマーケターの男性30代が0.22で1位。次いで男性20代が0.19で2位です。20〜30代男性が一人あたりの回数の期待値(M)が大きく、有料セミナーに参加する確率が高くなっていることが分かります。
マーケター男性40代のMは0.16と男性20代より小さいですが、平均回数は2.04回と男性20代の1.68回よりも多くなっています。セミナー参加の確率はマーケター男性20代と比べて劣る40代ですが、一部参加頻度が多い方がいることが推察できます。
マーケターは勤勉?(マーケティングやデータ分析の書籍の購買回数)
マーケティングのビジネス書または学術専門書、データ分析のビジネス書または学術専門書、その他のビジネス書または学術専門書という6種類で、最後にいつ書籍を買いましたか?という質問もしています。
ここでは男性20代に最後にいつ「マーケティング書籍(ビジネス書レベル)」を買ったか?を聞いた調査結果を共有します。
マーケターのほうが直近に購買した方が多くなっています。
ビジネス書籍または学術専門書のうち、マーケティング、データ分析、その他のジャンルの6種類の購買回数を構造的に把握していますが、(情報量が多いので)ここで確率モデルの分析結果の共有は控えます。ストアカの講義では詳しい分析結果を共有します。Excel分析を体験する演習も用意します。
マーケターは、「顧客理解」の作業をどれだけ行っているか?
後ほど紹介するストアカ講義や、今後、出版を目指す書籍の内容を検討するためには、顧客となるマーケターを定量と定性の両面で理解する必要があります。
マーケターは顧客理解をするために、自ら定量調査や定性調査に付帯する作業をどのくらい行なっているでしょうか?実態を知るために聞いた設問が下記です。
【設問】
ご自身のお仕事についてお聞きします。
あなたがこれまでに自ら行ったことがある作業について
それぞれお答えください。
ここまでこのnoteをお読み頂いたみなさんは、この7項目の作業をご自身で行なった経験はあるでしょうか?
集計結果は下記です。
講義と書籍、コンテンツの内容を考える際のコアターゲット、ペルソナを見定めるために私がいちばん知りたかったことです。
マーケターと非マーケターでかなり差が出ています。男性においては、定量調査、定性調査ともに年代が上がると業務経験の割合が下がっています。女性の場合は、20代ではなく30代をピークにして、40代、50代と年代が上がるにつれて下がっています。
定量調査による考察
ここまでの分析結果から、私はこう考えます。Freeasyなどのセルフリサーチや、スポットコンサルなど調査やインタビューを簡単かつスピーディに行うことが出来るデジタルツールが増えたこと。デジタルマーケティング手法の必要性やそれを実行するために多様なスキルが求められるようになったことで、各種ツールを難なくサクサク使いこなすことができる若い世代(特に20代男性)が、マーケティングの現場で活躍していて、それに伴い学びの意欲も高いのではないかと考えます。
マーケターを定義するための質問で、デジタルトランスフォーメーションがあてはまると回答した方は20代男性が7.7%と突出していたことも印象的です。
仮説ですが、私の世代よりも、デジタルツールに詳しく、効率的かつ合理的な思考で行動することができる彼ら(彼女ら)は、もしかしたら、生きたノウハウは自らが手を動かし思考と実践を繰り返すことによって身につけられるという真理さえ、理解しているのではないでしょうか?
それとも、そんなことは微塵も意識せず、サクサクと手を動かすことが出来てしまうだけなのかもしれません。20代の知人で私が驚愕した処理速度や吸収力がある方が何名か頭に浮かびます。
この仮説は今後、インタビューなどで傾聴して解像度を上げていきたいところですが、
「顧客理解サイクルの作り方」では、これからを担う若い世代のマーケターをコアなターゲットとして、共有するノウハウを詰める方向で間違えなさそうです。
一方で、顧客理解に必要な定量定性調査の作業に対して、40代50代がいかに自分で手を動かしてこなかったのかが分かりました。
直近でその作業を行なっているか?という質問の結果が20代が多いのであれば分かりますが、過去に一度でも行なったことがあるか否か?という質問で40代と50代が20代を下回っていた結果に愕然です。これは43歳の私の自戒にもなります。アグラをかいたら、すぐに使えないおじさんになってしまうんだと気が引き締まる思いです。
著名な先輩または同年代のマーケターのみなさんや山本氏、私もですが、総じてみなさん、好奇心の塊みたいな方ばかりです。
私も貪欲に、若い頃から自分で手を動かしてきました。数学の知識などなく、分析ど素人の広告マンでしたが、時系列データ分析による効果検証があることを知ってから、自ら手を動かして学び書籍も出しました。今回の調査から、私は40代50代マーケター全体のなかでは猪突猛進で自分の手を動かす珍しいタイプのおじさんなんだと自覚しました。
油断するわけにはいきません。自分が培ってきたものをより若い世代のみなさんに共有させて頂きつつ、自らも刺激をもらって学ばせてもらい、チャレンジを続けないと優秀な若い方がイノベーションをどんどん起こすと思うので、油断したらすぐに、私は使えないおじさんになります。それは是が非でも避けたいのでアクションするのみです。
「顧客理解サイクルの作り方」講義では、学びの意欲も旺盛で自ら手を動かす若い世代にフォーカスし、多くの調査分析をして戦略を導いてきた私のノウハウを共有します。熟練リサーチャーの山本氏には、傾聴のポイントについてお話頂きます。
消費者の定量調査から行える顧客理解のための基礎的な分析と統計や確率モデルなどのマーケティングサイエンスの活用の有用性、顧客理解のためのインタビューなどで傾聴する定性調査における重要ポイントや技術を共有します。
それらの知識があれば、マーケティング戦略を決めるための確かな材料を得るのには十分です。
顧客理解サイクルの作り方(概要)
アスキング
ネット調査など、主に定量分析で基本はYES NOや選択肢を選ぶなど(フリーアンサーもありますが聞けることは限定的です。)聞ける範囲のことで得た情報から顧客(≒市場)を構造的に理解する。
傾聴
インタビューなどできちんと傾聴する、または観察する。しっかりと人間を見に行きます。顧客の考え方を想像し、感情移入をし、アイデアを考える。
ぶつける
考えたアイデアのコンセプトやプロトタイプまたは施策を消費者にぶつけて検証(定量+定性)し、大きな投資に至るまでに小さいテストを繰り返す。
大きな投資をした場合は、必ず、アスキング調査をして因果推論や統計モデル、確率モデルなどを用いて、顧客(≒市場)の変化を把握する。(アスキングに戻る)
以上です。
これを確かな方法で行うために必要な知識を知ることで、消費者から得たデータ(定量と定性)から重要な示唆を得ることができるようになります。
さいごに
マーケティングの仕事をしていると、先進的な手法の情報がたくさん入ってきませんか?
自分はどんなスキルを磨くのか?そのために何を学ぶべきか?迷ってしまうこともあるかもしれませんが、マーケティングの本質のスキルが厚みをもつと、その迷いはなくなります。自分に必要がない情報を判断できるので注力すべきことに集中できます。
私は、マーケティングのスキルにはこの先も進化しても変わらない本質があると考えています。「顧客理解サイクルの作り方」では、本質的な意思決定を導く組織やマーケターになる為に、まずは何を知っておくべきかを共有します。さらに深い学びとして、山本氏と私が開催している他の講義で学ぶことができる内容も紹介します。
マーケターは328万人、市場が大きいことを確認できたので(執筆時点で)ストアカの最低価格の1,000円にしました。若手マーケターの皆さまも、そうした方をサポートする立場にあるシニアクラスの(今回の調査対象外ですが60歳以上の皆さまも含む)経営者やマネジメントのマーケターの皆さまも、ぜひご検討ください!
ふたりの先生@マーケティング
これまでマーケターとして、色々な方と関わりましたが、お話しをお聞きして別格の衝撃を頂き、学ばせていただいているのがファミリーマートCMOの足立光さんとプリファードネットワークスCMOの富永朋伸さん。以下はお
二人が講師をしている塾です。(お名前五十音順)
両方の塾生で学んでいます。本noteで示したように、広義で捉えた場合のマーケターは328万人ですが、真のマーケター、実質的なCMOはお二人を入れてもごくわずかだと思います。
【更新情報2024年5月26日】
「その決定に根拠はありますか?」
確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング
戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。