音楽評論家 佐藤英輔さんより、太陽肛門スパパーン新譜「円谷幸吉と人間」にコメントいただきました。

音楽評論家 佐藤英輔さんより、太陽肛門スパパーン新譜「円谷幸吉と人間」にコメントいただきました。量から質、質から量の弁証法がおきる程度の多量リリースはもちろん望むところです。その状況を実現するためにも、皆さん、今すぐ8/11全国店頭発売のLP2枚組「円谷幸吉と人間」(工房直販では今日今すぐ購入できます)+既に全国発売している先行シングル「東京おらんピック/時間・場所・存在<すべて」を購入/予約しましょう!!

http://taiyoukoumonn.web.fc2.com/hanbai.html

佐藤さんのコメントは以下となります。東京オリンピックを今すぐ阻止し、オリンピック総体を廃絶するための討議材料として皆さん ご活用ください。

 おお、アナログ2枚組。ずしりと、重い。価格は、5010円(五輪獣)。ふふ、胸が高まる。
 そして針をおろし、もうこれはがらっぱちにして、知的かつエレガントな創作集であると思った。高品質なジャズ・アンサンブルやソロから洒脱なシティ・ポップな誘いまで、百花繚乱。弦音の使い方もいいなあ。もう、いろんなイケてる音楽語彙が鮮やかな意外性とともにユニティしまくり。こんなに音楽的に度量の広い、冒険の感覚にも満ちる、生理的にリベラルな表現もそうはないのではないのか。しかも、その総体は魅惑のヴォーカル/ラップ・ミュージックとして着地しているのだから! そして、そんな音楽には真実を射抜く、生理的にどろどろした社会観や言葉が必要とされるのは言うまでもない。
 たとえば……。マックス・ローチは1960年に戦う肉声を入れて『ウィ・インシスト!』し、チャーリー・ヘイデンの1970年一大プロテスト・ジャズ盤『リベレーション・ミュージック・オーケストラ』はワールド・ミュージック視点やサンプリング手法を活用した広がりをしかと抱え、オーネット・コールマンは異色の1972年シンフォニー作『アメリカの空』で<アメリカの空ほど政治、人種、性別の問題をはじめ激しい変化を見せたものはないが、いつになったらかつてはアメリカの空の恵みを受けていたネイティヴ・アメリカンに思いを向けるのか>とセルフ・ライナーノーツに認めた。
 曲を作り、猛者というにふさわしい奏者たちを束ねる花咲政之輔は、かような先達たちと同レヴェルの創造性的バカヤローと正義を抱える。そして、今回は山ほどの諧謔とともに、オリンピック開催が氷山の一角となる世の非道を引き金となる表現創出にあたる。そこには、日本人の心の琴線にするりと入り込む濡れたサムシングも入り込む。それが、また稀有に音楽性の高いプロテスト・ミュージックにもう一つの取っ掛かりを与える。ドン・キホーテの素敵、ここにあり。
 フェラ・クティは為政者との戦いが増し、そして言いたいことや告発したいことが増すにつれて、アルバムの数がどんどん増えていった。ああ、太陽肛門スパパーンの音楽がどんどん研ぎ澄まされ、より豊穣とならざるを得ないのは自明の理。また、もっともっとリリースも増えなきゃ、嘘なのである。                  佐藤英輔(音楽評論家)


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