水商売へ
20代の私は何の知識も技術も持っていなかった
当たり前ではあるが、何もない
トラックの運転手をやめ、何かを求め始めた事、
バーテン見習い
水商売だ
思い切りの良さだけはあったね
埼玉南部の寂れた駅前のビル
2階にあったアイリッシュパプだったのか
テーブルが2脚
カウンターが4席
タバコの煙で汚れた壁
女店長バーテンダー
2つ年上の少しシェイカーを振っている男の先輩
素敵だったよね
でも、元トラック運転手の私は、
台所にしてあった、売上ノルマ81000円の貼紙に、今までないプレッシャーを感じる
必死にお通しのオリーブの実とミックスナッツをつくる(盛るだけだろ)
そもそも客がたいして居ない
馴染みのお客さんに22才の若造が「スーパールーキー」と紹介される
今考えれば、何も出来ない子供にそうしてくれるだけで、優しい先輩だったのだが、
ひねくれた一匹狼には、相想笑いも出来やしない
当時の私はとにかく我慢弱い
3日で辞めた…
ノルマの厳しさにさらされ、未熟な自我が、水商売の接客の邪魔をした
なにかで飲ませてもらった「ギムレット」が大人の味に思えた
ほろ苦い大人の階段の一歩目だった
つづく