社長と直接働くひとに伝えたい、心がまえの話【声の履歴書 Vol.72】
こんにちは。Voicy代表の緒方です。
この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。
今日も前回に引き続き、「社長と一緒に働くこと」をテーマに書いていきます。社長サイドからのポジショントークと言われそうでドキドキしながら書きます。
前回のnoteはこちら。
社長はみんな「どんどん使われたい」
社長と一緒に働いている人からよく聞くのが、「社長が僕らのことを見てくれない」とか「気をつかってくれない」という言葉。
あるいは面接で「社長の直下で働いていた」と言う人に、「どうだったの?」と聞くと、「社長が全然社員のことを考えず、省みないんですよね」とか「もうちょっと、社長がこういうふうにすれば、上手くいくんですよね」みたいな話が出てくる。
なるほど。正直、むずしいだろうな、と思います。
社長はできればいろんなことを任せたい。めっちゃイケてる人にはめっちゃ任せたいんです。でも言われたことだけやる人だったら、正直任せられません。
なぜかというと、社長は自分の出した指示が全然完璧じゃないと思っているからです。だから言われたことを言われたようにやる人、あるいは言われたことすらできない人は、ちょっとむずかしい。
理想としては社長の言ったことを、どんどんオーバーラップしていきながら、追い抜いて動きながら、必要なときに社長を使っていく姿勢です。
「営業はこういうふうにやっていこう」「このときは社長の営業力を使おう」とか「PRはこういう戦略にして、ここで使ってしまおう」とか、ですね。社長というものはどんどん使われたいんです。
けれど、社長を使うというところまで思い到れるかは、めちゃくちゃ難しかったりするんです。この感じ、何となく伝わるでしょうか…。
これを皆さんにどうやったら伝えられるかな?とずっと考えているんですけど、とにかく、そういうポジションになった人には今までとは全然違うやり方でやってほしい。それが1つです。
社長の言うこと、「全部はやらなくてもいい」
本当にいろんな会社で、社長が孤独になってしまうのを見てきました。僕もある意味ではそうかもしれません。1人で勝手に暴走しているように見えて、「言っていることが理解できない」とか「もっと皆にわかるように伝えるべきだ」とか、そういう雰囲気になってくるわけです。
ただ、もう一度復唱しますが、社長は、会社のビジョンと、遠くにある旗のところだけを見ているんです。手前の今日の業務がちゃんと進捗したか、それをどう評価するかとか見てる余裕がない。遠くの旗に対して「本当に会社が強くなるのかな」とか「結果がちゃんと生まれるかな」と考えている。そこを一緒に取りに行ってほしいんです。
なので、具体的にどうするかのToDoのところは、実はめちゃくちゃ粗く投げられているんだよ、ということです。めちゃくちゃ粗いからこそ、なんだかんだ社長の言ったことの6割くらいは「やらなくてもいい」かもしれないんです。
「たくさん言ってきたけれど、優先順位を考えたらそこじゃないと思います。ここだと思いますけれど、どうですか?」というと、「たしかにそうだね、じゃあそれとこれはいらないね」となることが、ほとんどです。ここは何となく伝わりますかね。
他の大企業だったりとか、上長が社長じゃなかったら、ToDoとして言われたことは全部やるのが当たり前です。それに対してスタートアップでは、すみません、社長もめちゃくちゃ粗いんです。
お母さんもお父さんも、最初は初心者
自分が子供のときは、お母さんとお父さんは完璧だと思っていましたよね。それと同じで、会社で一番偉そうにしている社長も完璧だと思いがちなんですけど、そうじゃないことがほとんどです。
お母さんも、子供を産んだときは、お母さん1年目なんです。全部はじめてで、いろいろな不安ばかりです。でもびっくりすることに、社長も社長になって1年目だと、社長1年生なわけですよ。
しかも、わざわざ会社を作るような変わり者に限って、ちゃんとした組織のヒエラルキーとかを学んでないし、「ホウレンソウ」の仕組みをわかっていない人もたくさんいます。社長になったときに、どうやったら組織が動くのかなんて、みんな全然わからないんです。
本当に手探り状態で全員が爆走している状態の中で、社長を孤独にさせずに、一緒に並走して、ディスカッションに参加しながら、「僕のパートは僕が責任を持って全部やりますね」と言えるといいですよね。
「この結果まで達成しなかったら僕の責任です。その代わり、助けるところは助けてください。この方向性でいいかどうかは確認しますね」というふうに、方向性の確認と、必要なところのオファリングは社長にするんだけれども、結果のところはちゃんと全部コミットするぞ、という意思を持つことです。
そういう人になってくると、どんどん任せられます。幸いVoicyは創業からもう5年くらい経ちますが、古株の長いメンバーはほぼ残っています。
だから、デザイナーのキョウちゃんとか、パーソナリティサクセスのエノちゃんとかは、緒方がワーワー言っていても、「まあこのへんを言っているんだろうな」と落ち着いています。でも、たまに緒方がクリティカルヒットを出してくるから、「それはちゃんと注意して見ておこう」みたいな感覚だと思います。
こうやって動ける人が増えてくると、会社はものすごいスピードで進んでいきます。
社長というカードを使って、どう戦っていくか
機動的に走っていきたいときには、社長と一緒に走れるメンバーがどれだけいるかが、スタートアップとしてはすごく大事です。そしてどの会社でも社員の3分の1くらいがそのレベルに達すると、会社は化け物のように成長していくと思います。
そう考えると、スタートアップに入ったときに思うのは、「うちは社長ありきだ」とか「うちはもう猪みたいな社長だ」とか、もう動物園みたいなものなわけ。そのカードを使って自分たちが戦っていくので、そこに文句を言っても始まらないんです。
そのカードをどう上手く使おうかな、とみんなで考えているような会社は、びっくりするくらい伸びていくし、社長も、「あとのところは任せておいてもいいか」と思えます。このバランスができている会社はどんどん面白くなっていきます。
近くは見えないけれど、遠くは見える。
おそらく、これからも大企業からベンチャーに入ってくる人は増えていきます。そのときに肌感として、どう考えていくか。頭でシミュレーションするといいのかもしれません。
カレー屋さんを立ち上げたとして、「君は美味しいカレー作り担当ね」と言われたときに、頼んだ相手にどう動いてほしいか。自分が社長の立場になったときに、「本当にあなたに言われた通りに動いてほしいと思っているのか?」ということです。
実際はきっと、もっと想像以上のことをしてほしいと思っているはずですよね。目先のKPIなんか実はどうでもいいんですよ。社長なんて5年後、10年後に本当にでかい会社になっているかどうかのほうが大事。
目線がめちゃくちゃ遠くにあるので、遠視みたいな感じです。近くは見えないけれど、遠くは見える。
近くが見えない社長に対して、「近くをちゃんと説明していただかないと動けません」と言っても、遠くを見て、近くを見て、その人のマネジメントもして、なんていうことは、できるわけがない。
だからスタートアップというものはむずかしい挑戦なんです。
ーー今日はこのへんで!まだ書き足りないので次回につづきます。
声の編集後記
この記事の元になったのは、こちらのVoicyの放送でした。今回の放送も社長と働く方々から想像以上の反響をいただきました。多くの方が悩まれているポイントだったのだと思います。音声で聞くとより、言葉のニュアンスや感情も伝わるので、よかったらこちらも聞いてみてください。
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