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組織が安定しないと事業も伸びない。Voicyの3年前のシリーズAを振り返る。【声の履歴書 Vol.82】
こんにちは。Voicy代表の緒方です。
この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。
今回も前回に引き続き、シリーズAの調達とその後のドタバタについて振り返ってみたいと思います。
シリーズAは2年で使い切る予定だったが…
Voicyは3年前にシリーズAで8億を調達しました。だいたいのイメージでいうと、2年くらいかけて次の調達まで持っていければいいと思っていたので、2年間で使い切る想定だったんです。
だから、単純に1年間で4億円、1ヶ月に約3000万円ちょっとを使う計算になります。たしかその当時のVoicyは、1か月で1000万円使っているかなぁ、くらいだったと思います。
それを3000万円に変える。プラス2000万円です。ただ、2000万円って実は“あっという間”なんです。
たとえばエンジニアの平均報酬って、月に60万円だったり、80万円だったり、もっともっと高かったりします。それに福利厚生を入れると、だいたい1.5倍くらいの給料になるので、1人100万円を越えてくるんです。
そういうことを考えた上で、オフィスの賃料なんかも入れると、人員増強がだいたい15人いくかいかないか、という感じになるわけです。たいして売上が上がっていないスタートアップがひたすら人を増やそうとすると、一瞬でお金は消えていきます。
採用と同時に売上もちゃんと上がっていくようになっていればまだいいんですけれど、当時のVoicyなんかは赤字覚悟でひたすら潜っていくモデルを選んでしまったので、ものすごい速度でお金がなくなっていくんです。
僕はそのお金を使い切るまでに、会社をさらに魅力的な状態にしないといけないわけです。「これだったら、もっと高いバリュエーションでさらに投資したいね」と、お金がなくなる2年後までに投資家に思わせる必要があるからです。
でも結果的には、コロナがきたり、なんだかんだもあったんですけれど、3年かかりました。
ということは、完全に途中で足りなくなったわけです。
危ないところだったんですけれど、コロナの後に銀行に行って2億円追加で借り入れて、何とかそれでしのいで次のマイルストーンにたどり着くまで粘ることができたんです。
スタートアップが背負う重いミッションとは
特に今年の年明けくらいは結構、ヒリヒリするような毎日でした。全部のお金がなくなるのは4月の予定だったからです。めちゃくちゃギリギリですよね。
でも運が良かったこともあって、2億円の追加の貸付を取り付けた数か月後に、神風がきました。Clubhouseです。
あのブームをきっかけに、日本における音声市場の盛り上がりが確実なものになりました。本当にギリギリのラインで走っていたんです。
考えてみると、1回調達した後、それを使い切るまでに必ず企業価値を数倍にしなければいけないわけですから、スタートアップというものはすごいミッションを背負っていますよね。
特にVoicyの場合は、数年後に2〜3倍のバリュエーションで評価されるためにどんな状況であればいいのかなんて、全然決まっていないんですよ。誰もわからないですから。
要は、2〜3年後に「また投資したい」と思ってもらうということは、「そこからまた何倍かに伸びるだろう」という期待が集まっている状態なんです。
ここで大事なのは、よく間違えられがちですが、営業をめちゃくちゃやって、事業計画通りに成長しました、という目先の結果を出してしまわないことです。
そうじゃなくて、「お金さえあれば僕らの未来はでかいですよ」という話をしないといけないんです。「頑張ってきたからもっとお金をください」と言われても全然違う。給料じゃないですからね。
投資というものは、これから先のことなんです。実際、8億円を調達した3年前のVoicyと今のVoicyって、サービス内容も事業計画も、ほとんど別会社です。あらゆる機能が増えて、マネタイズのプランが整ってきました。だから、この先が見えてきている部分が多い。
パーソナリティさんにおいても、月に数十万円くらいの人がちらほら出てきたところから、多い人で年間1億円くらいの数字が見えてきています。
だから本当に、3年前に信じて投資をしてくれた投資家のみなさんには、頭が上がらないというか、感謝だな、と思います。そのときは音声なんて流行っていないわけですから。「Voicyなんて」とか、「動画とどう違うんですか?」とか、いろいろと言ってくる人はたくさんいて、悔しい思いもいっぱいしました。
先人のアドバイスに右往左往したことも
ただ、8億の調達をしたことによって周りの見る目が変わってくる。新たなステージに行ったばかりだから、そこでどう振る舞ったらいいのかということがわからない、ということが発生するわけです。
また未熟なフェーズが始まりました。そういうときは思わず、「自分はちょっと上手くやったんじゃないか」と思っている人たちの意見を聞いてしまいがちです。みんな、たったひとつの成功体験だけで人にアドバイスをしてきます。それにまた右往左往したこともありました。
本当は、会社は十人十色でよくて、全然違うやり方があってもいい。自分らしさってなかなか出せないんだけれど、本当は、そこがすごく大事なんです。
経営者は上司から評価されるサラリーマンじゃないので、会社が期待するものをつくるんじゃなくて、自分で「こういうものがいいと思う」と考えてつくらないといけない。けれど、答えが欲しくなったり、「このほうが評価されやすいかな」みたいなものを選んでしまいがち。僕も、いろんな本を読んだし、コーチングとかもいっぱい受けてすごくお金と時間を使いました。
1年半、Voicyは全然伸びなかった
経営をやっていると「プロダクトのことだけを考えていられるのは、なんて幸せなんだろう」とよく思わされます。事業を進めるための土台をつくるために、お金と組織でここまで苦労するのか、と。
結局、2019年に資金調達をした後の1年半、Voicyは全然伸びなかったんです。
新しいものが何も出ていないし、ユーザーも全然伸びていない。組織の状態が安定していないとこんなに伸びないんだな、と。衝撃でした。
空白の1年半です。それがなければ貸付なしでちょうどシリーズBに間に合ったかもしれない。でも、それがなかったらClubhouseのタイミングもきていない。難しいところです。
僕の反省点としてあるのは、やっぱり人の顔色を伺ったりとか、どこかに正解があるんじゃないかとロジカルに会社組織をつくろうと思ったこと。それによって、さらに上手くいかなくなりました。
社長として成長しないといけなかったんだろうな、と思います。
人によってはあらかじめ想像ができたりもするでしょう。けれど、僕は理論でわかっていても、自分で失敗してみたり、経験してみないとわからないのかもしれません。
衝撃や苦痛を受け、批判を受けたりして、「やっぱり駄目だ」と思ってから頑張る。壁がないと成長しないのは、今になるとわかりますが、相当不器用ですね。理論でわかっていることと、できるということは別問題でした。
ーー最後まで読んでいただきありがとうございました。あと1回つづきます。
声の編集後記
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