社員に「起業するから辞めます」と言われたときに、スタートアップの社長が考えたこと【声の履歴書 Vol.92】
こんにちは。Voicy代表の緒方です。
この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。
よくスタートアップ界隈の人って「みんな起業しなよ!」って言うじゃないですか。僕も一応、そう思っています。
一方で、自分の会社の社員が「じゃあ起業しますね」と言ってきたらどうしましょう。
すこし前に、Voicyの仲間が「起業するから」と退職しました。今日はその話をしたいと思います。
起業を理由に巣立っていくのはすごく嬉しい
僕はもともと、ベンチャー企業の支援をしていました。ベンチャーの世界にいたら、「いつか起業してみたい」と思っている人がたくさんいるのは知っていますし、僕も「ベンチャー業界・スタートアップ業界そのものを伸ばしたい」という思いもすごくあったから、やっぱり起業を理由に巣立っていくのはすごく嬉しかったです。
Voicyを卒業したOBたちが「Voicyマフィア」みたいにどんどん成功していくことは、すごく喜ばしいことだと思っています。とはいえ、やっぱり、人が抜けるということはすごく寂しくて。人数が少ない会社の中で、1人のウエイトはすごく大きいので、他の人にも影響が出る可能性もありますし、それなりに辛いんです。
会社によっては、「辞めるやつは二度と許さん」みたいな雰囲気のところもあるようです。「そんなやつはもう知らん」と怒っちゃう社長もいるんですけど、僕としてはやっぱりそこは「絶対に応援するスタンスでいたい」と思っているんです。
事業というものは失敗することもたくさんあります。だから、もし失敗したらまた帰ってくればいい。そういうことを繰り返して、スタートアップ業界に優秀な人材がより増えていくんだろうな、と思っています。
ですから、そもそも社会を豊かにしていきたいと社会作りをしてる会社から起業する人がきちんと生まれていくような会社であり続けることは、とてもいいものだ、と考えています。
起業をする魅力以上に面白い会社でありたい
とはいえ、同時に、「起業する以上にいろいろなことに挑戦ができるような会社にもなりたかったな」という思いもあります。
「起業をする魅力以上に面白い会社でありたい」という気概は当然持っているべきです。たとえば、社内にいながら新しい事業や会社の立ち上げができる仕組みを用意したいですよね。そこを目標にしている社長は僕だけじゃないと思います。
起業によりたくさんの会社が生まれても、残る会社なんて本当に数社です。それから起業してすぐに必要なことって、意外とシンプルで、とにかく人に会うとか、頭を下げるとか、お金を集めるとか。そういう泥臭いものなんです。スキルとしてすごく大事かと言うと、ただの根性みたいな部分も結構強いんです。
それでいうと、その部分をすっ飛ばして、社内でいろいろと挑戦してもらえる会社というものも素敵だし、いいな、と思うんです。
卒業生たちが活躍して、Voicyマフィアを
冒頭に出てきた、今回 辞めた仲間には、起業したタイミングで僕もエンジェル投資家として出資しました。行く末を一緒に見たいし、僕の経験から何か協力できることがあればしたいと思いました。
もちろん、その起業した彼がVoicyのカルチャーも全部引っ張ってすごく頑張ってくれた、というところもありますけれど、Voicyを出た人たちがなるべく成功できるように貢献してあげたい、と思っています。
その結果、将来的には、Voicyマフィアと言われるようなグループが名を轟かし、Voicyの卒業生たちがいろいろなところで事業をつくって、成功している、という会社にしたいと思っています。そしてその後の付き合いで何かしらの形でVoicyのメリットにもなるんだと思います。
育っていく息子を見てしんみりしつつ、いつまでもロジカルに「応援してるよ!」と言っていられるように、僕もがんばります。6人くらいが一気に起業してしまったら、泣いてしまうかもしれませんが。
Voicyは、起業して会社を畳んだ人でも大歓迎
そもそも僕は、そんなに起業がいいとは思っていないんです。初めの頃はサービスを作るのに面白く感じるかもしれないけれど、いずれは経営と組織のことにかかりきりになりますから。そこは僕も苦労しました。そして、5年10年辞められません。
だから、みんな本当に“それ”をしたいの?と思います。自分が社長だという肩書きがほしいとか、でかい組織をつくりたいという人にはそれしかないかもしれないけれど、仕事自体を楽しむとか、ある程度のリスクフリーの中で精神状態を悪くせずに仕事をしていきたい、というところがあるのなら、無理に起業しなくてもいいんじゃない?とも思っています。
なので、どちらかというと、うちの会社にいるよりも絶対にしんどいところに行くんだから応援はしてやるぞ、と。「駄目だったらいつでも帰っていらっしゃい」と言えたらいいなと思っています。
起業する人は、マインド的にもチャレンジ精神があって、優秀なわけです。だから、たとえば「起業したけれど、失敗して会社を畳んだ人でも大歓迎ですよ」みたいなメッセージは出していきたい。
起業して失敗して会社員に戻る人は、普通に転職で入ってくる人よりも概ね優秀という説はあります。やっぱり1回でも経営目線に立ったことがあるということは、圧倒的に違います。
なのでVoicyは、起業をして卒業した人は大歓迎です。
もちろんそういう人には、そういう人なりのむずかしさもあると思います。人の方針に合わせられなくなる人もいます。受け入れる側も、どういうポジションで入れるのかがすごく大事です。たとえば、まるっとどこかの部署を任せるとか、しっかりと話し合う必要はありますね。
話はそれましたが、Voicyにもいよいよ「起業するから辞めます」という人が出てきました。とても喜ばしくて、誇らしいです。これからは起業仲間です。応援していますし、Voicyも負けないようにがんばります。
ーー最後まで読んでいただきありがとうございました。
声の編集後記
記事の執筆後に、これまでのことを振り返って音声でも話しています。よかったらこちらもお聞きください。
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