まだ社員数10人だったVoicyが”オンラインコミュニティ”を立ち上げた理由【声の履歴書 Vol.53】
こんにちは。Voicy代表の緒方です。
この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。
今回はVoicyが運営する“会社公認のコミュニティ”についてです。「ファンラボ」という名のオンラインサロンを毎年募集していたんですが、これは一体なんのためにやっているのでしょうか。
ファンと一緒にVoicyを伸ばしていきたかった
「ファンラボ」として初めて募集したのは2018年6月かな。当時、会社がオンラインサロンを持つなんて発想はあまりなかったと思いますが、僕はこれからはエンゲージメントとコミュニティの時代が来ると思っていました。「ファン」と「好き」がもっとかたちになっていくだろうと。
Voicyという会社はそれを武器にしたいな、強みにしたいな、と思っていました。当時はまだ大きな資金調達ができていなかったので、Voicyのことがめっちゃ好きだという人たちに助けてもらうしかなかったんです。
優秀な人を入れて、調達をして一気に伸びるぞ、とかいう感覚もなくて、とにかく好きな人、集まって!って。
じゃあどうやって集まってもらおうかと思ったときに、オンラインサロン、コミュニティを企業でやったら面白いんじゃないかと考えた。ひとつのファンコミュニティとして、みんなでVoicyというサービスや音声業界について研究して、一緒に伸ばしていくということができないかなと思ったんです。
それがVoicyファンラボです。Voicyというものが1つのお祭りだとしたら、それを盛り上げるコミュニティ。
でも社員が10人もいない状態で、ファンコミュニティを立ち上げるのはなかなか大変でした。運営を任せたのは新卒社員だったみのりーです。毎晩泣いていましたね。「何もできない…」と。
1万円の会費を払ってサービスに貢献する意味
ファンラボはプロモーション研、コミュニティ研、クリエイティブ研、プロデュース研という分野にわけていろんな活動をしました。
2018年8月から11月までの4か月で、なんと1か月1万円という参加費を取ったんです。「お金をとって働かせるの?」と思いますよね。
いろいろ協力してくれたり、働いてくれるわけだから、無料でもいいわけじゃないですか。それなのに有料で、かつ1万円。
でもファンラボに来てくれる人って、新しいことをしてみたいとか、Voicyで学びたいという人です。お金を払ってでもコミットしたいという人が集まる場所のほうが、より良い人が集まるだろうと考えたんですね。
Voicyのデータの数字も見せるし、一緒にサービス運営の経験ができるんだったら、1万円払って部活に入るというか、スポーツジムに1万円払うみたいな感じの感覚で来てくれるんじゃないか。
わざわざスポーツジムに1万円も払って重いバーベルを上げるのと一緒ですよ。お互い真剣味が違いますよね。
1000円くらいにしておくと、「1000円払った分の元をとろう」って考えるんです。でも1万円払うと「もっと積極的に関わっておきたい」ってスイッチが入るんです。
結果、ファンラボのみんなはすごくがんばってくれて、すごく良いコミュニティになり、Voicyファンフェスタも動画も一緒に作り上げる思い出のコミュニティになりました。さらには、その中からなんと4人が社員として入社してくれました。いまは会社を支える中心メンバーになっています。
しかしこれはもう”Voicyあるある”ですけど、募集開始した頃はまだ何をするかも決めていなかった。
活動計画の下に書いていますよね。「1期生は4か月のプランを計画しています(みなさんの盛り上がりによっては延長の可能性も!)」と。これ何も決まっていないってことじゃないですか(笑)
消費者も「生産という体験」に価値を感じる時代
ファンラボ1期生のときはオンラインサロンが出始めたブームの頃で、自分のキャリアアップをしたいとか、学びがほしいという人たちがたくさん参加してくれました。
去年までに3期を終えたところですが、そもそもコミュニティは会社の事業成長という意味ではそれほど貢献しないですし、管理コストもそれなりにかかります。人件費考えたらはっきり言って赤字です。
でも、ファンラボはすごくやって良かったと思っています。
お金を出してでも会社を応援したいという人達がいるっていうのは、社員にとってすごく元気を与えてくれるんです。好きと言ってくれる人が集まる場所というのはめちゃくちゃいいものになるんだということをすごく実感できた場所でした。
いままでは企業とユーザーって、サービスを提供する人と提供されたものを使う人、いってみたら生産者と消費者みたいな関係でした。生産者が提供したものを消費者が消費してお金を払って、割が合わなくなったらどこかにいってしまう。
でもそこから、世の中がだいぶ変わってきている。消費者側も体験にお金を払うようになったんです。何かに貢献したりとか、生産していくほうに喜びを感じるようになってきた。「消費しないと損だ」という感覚が減ってきたと思います。
1期、2期、3期とやってきて、実績に関しては特に1期はファンラボのメンバーで大規模イベント「ファンフェスタ」を立ち上げました。イベントの企画から細かい製作物、当日の受付や交通整理までファンラボのメンバーが自分達で手を挙げてやってくれました。
でも、よく考えたら、ファンラボのメンバーはVoicyが大好きなので、ファンフェスタを見たいはずなんですよ。それを見るよりも「関わりたい」と言ってくれて、貢献してくれるんです。
そこで得たものというのは、いまのVoicyのサービスの中にも生きていると思います。去年リリースしたプレミアムリスナーはまさにそうです。ファンラボの経験がなかったら、プレミアムリスナーは聴いた分だけ課金するというかたちになって、いまの応援ベースにはなっていなかったと思います。
コミュニティは個人向けサービスに与えられる”0次ロケット”
こういったコミュニティというものは、サービスが広く多くの人に使ってもらうようになった段階では、なかなかできないモデルだと思うんです。Voicyはサービス初期だからできたことでした。例えばいまYouTubeとかインスタグラムがこれをやりますと言っても、ちょっと難しいと思う。
会社のステージによってそのへんの温度感というのは変わってきますよね。使える期間は限られる。それが面白い。
コミュニティは個人向けサービスに与えられる”0次ロケット”です。さすがにいつまでも頼るわけにはいかないですけれど、打ち上げ時にはすごい助けになってくれる。
コンシューマー向けサービスを運営する会社は、立ち上げ時期にやると結構いいかもと思っています。もし僕がもう1回新しいサービスを立ち上げたらやると思います。めちゃくちゃ好きな人たちだからこそ、めちゃくちゃ使っていろんなフィードバックをくれるので。
あとはなんといっても自分たちの心のよりどころになります。やっぱり「自分のサービスはこのままで大丈夫なのかな?」って思うじゃないですか。ユーザーグロースなんて絶対に遠い先なので、熱狂的に好きだという人がいることが、「このままやっていていいんだ」という自信につながると思います。
「好き」が起業家の不安を癒やしてくれる
スタートアップの起業家は孤独だと言いますけれど、熱狂的なファンがそれを癒してくれるという、精神的な安心感も間違いなくあります。
やっぱり不安なんですよ。よくわからないサービスをつくってしまったんじゃないか、という気持ちが常にあるんです。
個人向けサービスって、ちょこっとアーリーアダプターだけに使われて消えていくサービスがめちゃくちゃ多いから。その中でやっぱりファンがいてくれるのは嬉しい。
世の中の物が行き渡って、そんなに消費をしなくなったときに、「好き」が一番のコンテンツになっていく。コミュニティはその「好き」を上手く表現させる場所をつくっていくことにもつながるんだろうなと思います。
ーー次回もよかったらまた読みにきてください。
声の編集後記
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