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Clubhouseの流行、Voicy代表としては「悔しいけど、間違いなく追い風」 【声の履歴書Vol.41】

こんにちは。Voicy代表の緒方です。

この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。

今回は、僕の創業のヒストリーではなく、先週から日本のインターネットを騒がせている「Clubhouse」というSNSについて書きます。

Clubhouseは音声メディアにどのような影響を与えるのか。その可能性みたいなところを整理していきます。

クラブハウス

この1週間、Clubhouseを使い倒して考えた。

僕はこの1週間、寝ているとき以外はClubhouseを使い倒しています。とにかくこれで何ができるのか、徹底的に使って、使って、考えてみました。

Clubhouseを使うこと自体が多くの人に発信することにつながるし、僕の思考をそのまま届けられるところはとても面白い。

なのでプロセスを楽しんでもらえるように、今回は下書きの代わりにどんどんClubhouseで話しながら考えました。それをまとめます。

よく聞かれたのが、「Clubhouseってどうなんですか? あっさり日本でバズっていて、悔しいんじゃないですか」という質問。

はい。はっきり言って悔しいです。それはもう悔しい。

でも、悔しいけれど、Voicyにとってはめちゃくちゃ追い風で、チャンスでもあるんですよね。実はVoicyとClubhouseの組み合わせは抜群にいいんじゃないかと思っています。

だからいまVoicyのスタッフは全員がめちゃくちゃ盛り上がっていて、このビッグウェーブに乗っかるぞ!みたいな感じになっています。実際、Voicyのユーザーも一気に増え始めました。

Clubhouseはフローの「ザ・SNS」である

そもそもVoicyのようにアーカイブするコンテンツと、Clubhouseのように流れていくフローのコンテンツは役割が違います。

Clubhouseは音声のサービスというよりも、人が集うというところの面白さがあって、やっぱり最後はSNSなんです。人との繋がりそのものがコンテンツです。

Twitterにしろ、Facebookにしろ、いままでは人の繋がりを表現する手段が文字中心でした。それを写真に変えたのがインスタ。今回は耳に訴求するSNSが出たということです。

なので、Clubhouseは「ザ・音声コンテンツ」というわけではないと思っています。

これはもう、「ザ・SNS」ですね。僕も音声事業をやっている中で、海外の人も含めていろんな人と「音声はどうだろうね」みたいな話をけっこうするんです。

「音声のSNSはできるの?」という話題は、いろんな経営者とかプロダクト開発の人たちと話すんですけれど、やっぱり難しいよね、となります。

SNSがSNSたるものはなんだ、というと、個人がN対Nで繋がっていくことだったりとか、バイラルで伸びていって指数関数状に人の繋がりができていくとか、いろんな要素があります。

そういう状態を作るためには、人が増えていくというところの摩擦係数がめちゃくちゃ低くないといけないわけです。ちょっとでも摩擦してエネルギーが減ると、どんどん縮小していく。

人がぬるぬる増えていく感じがSNSのめちゃくちゃ面白いところだと思うんです。Twitterだったり、Instagramだったりは、気軽にフォローしちゃうし、フォローしすぎたからうざいとかはないんです。

これが音声になると、次から次に繋がるところと、聞こうと思うところに摩擦が生まれる。ここの2つがなかなかクリアできないという話をよくしていました。

例えば音声コンテンツの一番の課題って拡散の弱さだと言われていますよね。それが心地良いという意見もあるので、ある部分ではメリットではありますけど、やっぱり拡散の難しさは課題としてありました。

Podcastにしろ、Voicyにしろ、音声を聞かせてシェアさせるって、すごく難しい。それは世界中のサービス提供者が悩んでいました。

ではClubhouseはそれを乗り越えて来たか?

ある意味ではあっさりと乗り越えてきました。

でも音声への欲求では乗り越えていないんです。そこがすごい。

「聞かなかったら損するかもよ?」の威力

僕らがやろうとしていたことって、たとえば音声コンテンツの内容を3行まとめにするとか、YouTubeみたいにアイキャッチのところに情報をたくさん詰め込んで面白いと思わせるとか、書き起こして検索エンジンに適応させるとか、パーソナライズして「あなたにピッタリです」と言ってみるとか、そういったこと。

Voicyの中でワークしたことでいうと、まずランキングをつくったこと。ランキングの上にいる人のコンテンツはまず聞いてみよう、皆が聞きたいと思うものは聞こう、というニーズに応えました。

あとはVoicyが審査制をとることによって、通過率1%くらいのVoicyの審査を通った人であれば話を聞いてみよう、というモチベーションが湧いてくるわけです。

この戦略はVoicyとしても全然間違っていないと思っていて、いまだにすごくワークしていると思うんです。人って、人の話に聞く耳を持つのはなかなか難しくて、初見の人の話なんて別に聞きたくもないわけです。

それで結局、音声を新しく聞こうと思わせるには、3行まとめとか、書き起こしとか、タイトルを面白くするとか、YouTubeみたいに画面上にいろいろと書くとか、流し聞きをさせるとか、そういうあの手この手をやっていく。

つまり、コンテンツの中身が面白いと思わせて聞かせる仕組みをつくることに、めちゃくちゃ苦労していたわけです。鍵がかかっている部屋の中に、なかなか音声を聞いてくれない人たちがめちゃくちゃいて、その扉をなんとか開こうと思って一生懸命頑張っている感じ。「内容を説明するよ」「こうやって説明するから」とか、扉開けようとめちゃくちゃ訴えてる。

そうしたらClubhouseが横からやって来て、「聞かなかったら損するかもしれないよ?」みたいな(笑)

「アーカイブもされないし、一瞬で消えるけれど、来る?」みたいなね。そうしたら扉が開いて、皆が「行く、行く!」という感じで押し寄せた。

北風と太陽みたいな感じかな。聞かなくてもいいよ、でも損するよ?って。

ただ、北風ではないのはもちろんだけど、太陽でもないですよ。太陽ってちゃんと相手を豊かにさせているというか、ある程度相手の幸せで相手を動かしている気がするんです。

だけれどこのClubhouseって、聞いておかないと損するとか、終わった後に「めちゃくちゃ時間を使ってしまった」という虚無感もけっこうありますよね。この1週間、めちゃくちゃ時間を使った人もいると思うんですけれど、使った時間に対しての幸福度はわりと低めだと思うんです。

このアプリを使い始めた人、先週の記憶がないんじゃないですか?めちゃくちゃ時間が溶けていると思う。僕もですけど(笑)

まるで海外のタウンホールミーティングの雰囲気

とはいえ、音声の広め方については、Clubhouseはめちゃくちゃすごいと思うし、あっさりやられたわけです。

SNSたるところ、人の精神的なところをしっかりとおさえるというか。寂しいところだったりとか、有名人が2人で気軽に喋ってるんだったらとりあえずチェックしよう、とか。こうやって扉をあけるのか…と。

Clubhouseでは前で喋っているスピーカーと、スピーカーがフォローしている人たちと、一般で聞いている人たちというかたちで1つの部屋の中がグループ分けされていますが、この分け方もすごいと思いました。

聞いてる側がコメントする機能とかも入れずに、誰にも邪魔させずに喋らせるとか、全体のバランスがすごくいいんです。

この感じって、既視感がありました。

僕はアメリカで2年ちょっと働いていたんですけれど、そこではタウンホールミーティングという催しがよく開かれるんです。ちょっとした市役所の講堂とかを借りて、会社の上の人が皆に向かって喋るとか、勉強会みたいなやつをやっていたりとか、TEDみたいな形式です。

壇上で誰かが喋っていて、それに対して皆が「さすがだね」という感じで聞いている。前で喋っている人にとってはすごく名誉なことなので、誇らしいんです。

そしたら「今日誕生日の人は前においで、君はどうなの?」という声をかけて、聞いてる側の誰かを壇上に呼んだりする。そうすると出てきたやつもすごいなということで、皆で立ち上がって拍手をして、その中からたまにヒーローが出てきて、みたいな流れが生まれる。

その雰囲気をそのまま移植した感じがありました。そういう空気を作ったことがすごいなと思ったんです。

隣の知らない人をニヤリとさせる、あの快感も

Clubhouseの壇上で喋りたい人の気持ちも「わかる」と思いました。例えば学生時代にマクドで友だちと喋っていたら、横にいるおじさんたちも話を聞いてクスクス笑っていた。

これ、とても気持ちよかったりするんです。僕は関西にいたから。

関西では電車の中で面白い話をして、隣にいる知らない人たちがクスクス笑っている状態とかを見て喜んでいるやつって、めちゃくちゃいっぱいいるんですよ。

Clubhouseはクローズドで喋って「他の人は聞くなよ、使うなよ」と目くじらをたてるようなサービスではないと思います。

聞くためにできているし、ここだけの話だと言いながら他の人にも聞かれたら、ちょっと嬉しい。そういう人間の「ちょっとせこい欲求」を、きれいにサービス化したというところが面白いですね。

黒船をみんなで眺めて楽しめばいい

今年はいよいよ音声サービス・音声メディアが来るぞという雰囲気があって、SpotifyとかAmazonも頑張っていて、Appleも本気を出してくるだろうと予想されます。国内でもVoicyをはじめとしたスタートアップが元気です。

そこに一気に大波がきたわけですよね。これには乗っかるべきなのか?

僕は全力で乗っかるべきだと思っています。

黒船が日本に来るのを皆で楽しめたらいいと思っているんです。目を伏せて逃げながら対処するんじゃなくて、使いこなす。どうせ逃げたって、こういうものがどんどんやって来るんだったら一緒じゃないですか。なら、どう上手くやれるかを考えるべきだと思っています。

いろいろと仕込んでいます。これからのVoicyの展開を楽しみに見守っててください。

ーーまだ書き足りないので次回に続きます!

声の編集後記


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緒方憲太郎(Voicy代表)
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