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起業とは、カレーのない世界でハヤシライス屋をつくること【声の履歴書 Vol.70】

こんにちは。Voicy代表の緒方です。

この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。

前回は資金調達における「シリーズBの壁」について書きました。シリーズBは将来が確立されていないと投資を受けられないし、そこではSaaSが強い。個人向けサービスの場合は優良な先行モデルが必要みたいな話でした。メルカリ、スマートニュースに対するヤフーのような存在ですね。今日はその続きです。

先行事例はいたほうがいい。ライバルの成功も大切

海外のマーケットも日本のマーケットもそうなんですが、先行事例が良いスタートを切っている市場はめちゃくちゃ伸びるし、先行事例が悪いとその後も続かないんです。

たとえば「エムスリー」という会社はとてつもなく利益率が高いので、「彼らと同じように医師を集めて製薬会社からお金をとります」と言った瞬間に、バリュエーションの桁が1つ増えるんです。

このモデルはエムスリーと同じで何兆円市場だから、そこに至る可能性はあるし、数年後にこれくらいの金額まではいけるね、みたいな感じです。

マネーフォワードとfreee、クラウドワークスとランサーズみたいに先行して上場した会社と、その後に続いた会社の株価を見比べると面白いと思います。先行事例がちゃんとやるのは、業界にとってはめちゃくちゃ大事なんです。

そういう中で、インターネットにおける音声サービスの先行事例というものは残念ながらいないんです。ラジオ局はどうなのか? 根本的に下がり続けている。Spotifyは? 3兆円だけど、海外だ、あれは音楽だ、となってしまう。

無理やりに「音楽が大きいなら音声もいける!」と言ったとして、じゃあAppleはPodcastで利益の何パーセントを出しているんだ?と突っ込まれる。音楽に比べると全然稼いでないですからね。

つまり、「ユーザーは増えてるけど稼げないマーケット」かもしれないよねって思われてしまうわけです。背伸びして見せたくても、一緒に並んで立ってくれる相手がいないんです。

カレーのない世界でハヤシライス屋をつくる

わかりにくい例えかもしれませんが、世の中のカレーライス屋さんはこれだけあるんです、だからハヤシライス屋さんをつくれば「カレーと同じくらい伸びます!」と言えるみたいなことです。

でもインターネットの音声市場は、「誰もご飯の上にルーをかけていない世界で、ご飯にルーをかけてみた」という感じなんです。Voicyはカレー屋のない世界のハヤシライス屋みたいなものです。

さらに例えると、野球しかない世界でサッカーを思いついた。手しか使っていないところから、足を使うゲームを発明した。その段階でもう将来的に「toto」みたいな仕組みまでできますよ、という話をしているわけなんです。

だけど当然、信じてもらえない。「選手がCMとかに出て30億くらいもらえるんだよ」とか言っているんですけれど、全然刺さらない。「でも動画と音声は違うよね?」みたいな反応が返ってきます。

シリーズBをやりきった会社は、けっこう偉い

これがシリーズBの難しさ。個人向けサービスを運営していて、5〜6年のうちにシリーズBの壁を超えられる会社は、実はほとんどないんですよ。

Voicyは今はまさに、ここを超えようとしている。プラットフォーム課金を全部やって、ちゃんとブランディングまでカバーする。ユーザーをちゃんともう1回グロースさせればいけると思っています。

よく言われるのは「伸びているのはわかっていますけれど、ちゃんと見えるような数字になってから出させてください」ということ。「Voicyくんのこと好きだけど、大人になってからデートしようね?」みたいな感じです。

つまりはですね、シリーズBをやった会社というのは、けっこう偉いわけです。最近シリーズBをやりきれたのは「カバー」というVtuberの会社ですね。そういうニュースを見かけたら褒めてあげてほしいです。

SHOWROOMはシリーズCくらいまでいっているんじゃないかな。代表・前田さんの資金調達力が圧倒的に強い。SHOWROOMはいま、調達後のバリュエーションで200億円近いんじゃないかと言われてます。その未来を信じて投資家を集める力はほんとにすごいです。

起業家が増えた結果、起きたこととは

いまは世界ではお金がすごく余っています。それは成長企業が少なく投資でき場所が無いということです。大企業もVCもお金を出すところがない。だけど、出すに値するスタートアップも少ない。起業する人が増えてきたのはいいことだけど、むしろ人材は散ってしまって、良い会社の伸びが鈍化している感じはある。

そうするとますます余ったお金が、一部のスタートアップに集中しはじめる。なので最近は20億円とか50億円を調達する会社がけっこう出てきていて、なかには200億円集めるスタートアップも出てる。そういう時代になってきましたよね。

Voicyもそのステップを上がってくために、高いレベルで資金を扱えて事業もグリップできるCFO人材が必須だと思っています。いま探しています。これも時代の変化があって、もはや管理会計中心の会計士がCFOをできなくなった時代なんです。

どういうことかというと、いままでのベンチャー企業で大事だったのは、上場するための会社の管理体制をつくったりとか、ちゃんとした経営数字をつくっていくことでした。経営企画兼管理部門があれば、上場できていたんです。

けれど、最近はもう、海外機関投資家を集めてきたりとか、今までにない上場ルールで上場させていくとか、そういうことをやるようになっています。上場するときに100億円程度で上場する会社と、500億円以上で上場する会社の2パターンに分かれているんです。

100億円くらいの会社は、調達後に時価総額が下がりがちなんですけれど、500億円以上の場合はちゃんと上がっていくんです。その大きな差は優秀なCFOがいるかいないかだったりします。伸びる会社のCFOは皆、PEファンドや投資銀行のような経験を積んだ人たちなんです。社債もやるし、ベンチャー投資もやるし、VCもやるし、MAもやる、みたいな人たち。

完全にテクニカルな世界になってきていて、そういった経験なしにCFOは務まらなくなってきていますね。僕みたいに、会計士で、かつ監査法人がいたとしても、ちょっと違う。もうちゃんとした人を採用しないと駄目です。

今年のVoicyは「これで勝てる」を実装する

というわけで、CFOの採用もがんばります。絶賛募集中なのでよかったら連絡ください。今年はかつてないほど大事な1年になると思います。

もちろんそれだけじゃなく、マーケティング・グロースだったりコンテンツディレクター、エンジニア、プロダクトの設計やデザイン、営業と商品開発など必要なところが山盛りで全然足りてなくてチャンスを逃してます。

去年は手あたり次第に機能を充実させていった1年でした。ある意味、社長にかかっていたんです。僕のインスピレーションと、どこに選択集中するか、で決まるところがあった。

だけど今年は、「これで勝てる」という戦略をちゃんと実装するフェーズ。やるべきことに対する不安感はないです。ある程度やることは決まったので、ちゃんと採用して、みんなで前に進むのみ。

ーー次回は「社長と一緒に働くことの楽しさ・難しさ」みたいな話をしていこうと思います。よろしくお願いします。

声の編集後記


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緒方憲太郎(Voicy代表)
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