『小型旅客安全講習』ってどんな講習?【実体験レポート】
👇こちらの記事は下記のような方にオススメです。
【この記事のポイントまとめ】
・この講習は映像、教本、資料を用いて講義を受ける形。
・講習は一日のみで、休憩込み約8時間。費用は15000円前後。
・試験や実技はなく、規定の内容を終了すると修了証を受け取れる。
・この講習を受けると通常の船舶免許が「特定操縦免許」に変わる。
(※以下は筆者である おふだい船長 が2022年1月28日(金)にJEIS近畿にて実際に本講習を受講した際のレポートを含めた情報です。受講する会場や時期によっては違いや変更がなされている場合もありますので、その点は予めご了承お願いいたします。)
『小型旅客安全講習』とは?
船舶免許を取得された後、旅客船や遊漁船など人の運送をする小型船舶の船長になろうとする方は、“特定操縦免許”が必要になります。
特定操縦免許を取得するためにこの“小型旅客安全講習”の受講が必要となります。
費用は?(JEIS近畿で受講する場合)
(所持している船舶免許によって費用が異なる)
1級:11,470円(受講料、教材費)+2,000円(申請印紙代)+3,330円(海事代理士手数料)=16,800円(税込)
2級:11,470円(受講料、教材費)+1,800円(申請印紙代)+3,330円(海事代理士手数料)=16,600円(税込)
(※自ら運輸局で免許の更新手続きをする場合は海事代理士手数料は不要)
この講習で学べること
講習のタイムテーブル
※タイムテーブルは事前に発表がなく、講師のさじ加減によって調整しながら進行していく形でした。最低限講義しなければならない時間と内容は予め決まっているそうです。
■9:00~受付開始
受付で受講料を支払い、講義室に入室。
(コロナ禍のため、受付前の検温あり。席は指定で一つの長机につき一名)
■9:30~9:45 ガイダンス(概要説明)
・この講習で取得(更新)できる「特定操縦免許」とは車でいう二種免許(タクシーやバスの運転手が必須の免許)のことである。
・本講義の内容は国土交通省が定めたものであるが、それだけで完結すると時代錯誤的だったり現場感が薄い傾向が強い。(担当講師のさじ加減で可能な限り実体験や現場のリアルな実情を織り込む)
・特定操縦免許になったからといってすぐに開業できるわけではない。(開業届けが認可されるまでの道のりはまだまだある)
・海事事務所に免許更新を代行依頼する場合は約1週間免許を預けることになる。(その間は無免許状態)
・自ら運輸局に行って免許更新する場合は即日更新。
・安全意識を怠って1つ事故を起こしてしまうと、海事業界全体の風評被害に繋がりかねない。
■9:45~10:15 映像①
・1990年ごろに制作されたらしき震い映像。船舶事故の様子と船員の対応を描いており、防寒装備の重要性などを説明。その後、沈没すると判断した大型船の船長が指揮を取り、救命用の自動膨張いかだ(テント屋根のついたゴムボートのような乗り物)に避難し、数日間海上で漂流したのち救助されるまでのストーリーが描かれている。その中でいかだの備品として入っている救命用具、避難信号等の使い方。生き延びるための役割分担やコツ、雨水を飲料水に変えるやり方などを説明。
■10:30~10:40 休憩
■10:40~11:30 教本①+余談
・当日に席に置いてある形で配布される「救命教習用教本」を使用する。
・旅客船の船長の責任は重い。
・イギリスのタイタニック号、韓国のセウォル号の事故の実例紹介。
・大阪府内での実際の事故例を紹介。整備不良が主な原因での浸水事故。犠牲者がいなければニュースにもならないので世間一般に認知されないが、同様の事故は多数起こっている。船長の責務の重さの割に合わない低賃金な求人も多い現状もある。
■11:30~12:00 映像②
・船舶火災からの浸水という事故を描いた映像。DSC通信やナブテックス受信機といった専門用語も多数登場。海上保安庁の救助活動についての紹介。
■12:00~13:00 昼休憩
・建物内に売店や食堂等は無いため、近所のコンビニまで行く必要がある。今回の会場からは車で2分程度でローソンまたはセブンイレブンがあった。
■13:00~13:15 余談
・講師の普段の仕事の紹介。天候の読み方と航行判断。タグボートの運航業務。大阪湾での事故事例の紹介など。譲り合いをしなかったため起きた事故が多い実情。
■13:15~13:40 資料①
・水上オートバイの死亡事故事例
・遊漁船とプレジャーボートの事故事例
・遊漁船同時の事故事例
■13:40~13:55 教本②
・生存技術の原則
・救命設備の概要
■13:55~14:05 休憩
■14:05~14:25 映像③
・STCW条約に基づく基本訓練について。救命EPIRB、SART(捜索救助用レーダートランスポンダ)、無線電話などの救命用具や救命いかだの備品の使用方法についての説明。
■14:25~14:50 別室で実物の救命いかだを見る
・映像で紹介されていた10名くらい乗れるものよりかなり小さいものでした。これで数日間海上で生き延びるのはかなり難しいと感じました。備品も同室内で見ることができ、講師が解説を加えてくれます。
■14:50~15:20 映像④
・別グループが救命いかだの見学に行っている間の場繋ぎ的な時間。内容はほぼ映像③と同じでした。GMDSSなどの専門用語も出てきます。
■15:20~15:35 休憩
■15:35~15:55 教本③
・遭難信号の使用方法、効果的な船舶放棄(人命優先のため船を放棄して避難すること)作業、生存維持の所作業、救出活動についてなど。
■15:55~16:25 映像⑤
・船舶火災の原因、船舶安全法、船員法、消火設備について、火災予防と早期発見、初期消火の重要性
■16:25~16:30 事例
・大阪港での船舶火災
■16:30~16:40 休憩
■16:40~17:05 映像⑥+実演説明
・AEDの使用方法、応急手当
■17:05~17:20 余談、質疑応答
・商船乗りの実情(人件費、若手不足)、特定免許が活かせる仕事は多々あるが世間的には埋もれている、大阪の船舶交通安全化への取り組み(企業と役所の連携)、河川のルールは不明瞭(道頓堀川は左側通行がまかり通っているが、取り締まりができない)、河川の水上バイクによる危険操船
■17:20~17:30 終了ガイダンス+修了証明書の発行
・・・以上、非常に長い一日の講習が終わります。ただ、10分休憩が多く感じたのでストレスはそれほど感じなかったのと、何より担当講師の方が「国が定めたカリキュラムだけだと現場に即していなくて面白くない」という理由でご自身の仕事の話に教本に無い話や資料を使う時間を設けてくださっていたのが救いだったと思います。
免許の更新を海事事務所に委託する(+3300円)形で申し込んでいた方はそのまま解散、委託しない場合は「修了証明書」を受け取ります。
その場合は修了証明書を持って最寄りの運輸局にて自ら更新手続きに行きます。
この更新手続きに関してもまた記事を書きたいと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは、また!