日常を「少しだけズレた視点」で見てみること。sneeuwデザイナー雪浦聖子さんのはなし【第1話】
「sneeuw(スニュウ)」は2009年にはじまりました。
デザイナーの雪浦聖子さんは東京大学工学部を卒業後、住宅設備のメーカーに勤務されていましたが、退職され、服飾の専門学校に入学。
卒業後はファッションブランド「YEAH RIGHT!!」のアシスタントをへて、「sneeuw」をスタートされます。
「clean & humor」というコンセプトで、シンプルな中にとぼけた仕掛けをちりばめ、日常を少しだけ浮き上がらせるような身の回りのものを作られています。
東京大学をでて、大きな会社に勤められてた雪浦さんが、退職されてから「服をつくること」を仕事にするまで.
「やりたいこと」を決めるのは早いほうがいいかもしれないけど、急いで決めてしまうこともないし、途中で「やっぱりこれだった」となってもいい。
「やりたいこと」に素直にむかっていく雪浦さんにお話をうかがいました。
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− 雪浦さんはユニークな経歴をお持ちだそうですので、時系列の順にお話をうかがっていきたいと思います。
まず、小さいころはよく引越しを経験されていたとか。
雪浦 はい。親の仕事の関係で2、3年ごろに引越しをしてました。
関西で生まれて、東北、九州といろんな場所に行きましたが、旅行で行くと結局帰ってしまうじゃないですか。
それなら住んでみたほうが楽しいとおもっていたので、引越しじたいは嫌いじゃなかったです。
− ファッションにはじめて惹かれたというか、入り口になったのものはなんでしたか?
雪浦 服は昔から好きだったのですが、自分が着られるものにしか興味はわかなかったのと、当時学生が買えるものなんて限られていたので、古着とかですかね。
小学生のころに、ひうらさとるさんの「レピッシュ!」という漫画を読んで、ファッションデザイナーとかスタイリストに憧れみたいなものはあったとおもいます。
でも、興味はいろんな方向にむいていたので、高校あたりにはグラフィックとかプロダクトのデザイナーも良いなと思ったりしていました。
— 大学は東京大学に進まれます。工学部に入られたそうですが、なぜ工学部に?
雪浦 デザインを仕事にしたかったのですが、普通の大学にいってそういうことができそうなのは建築しかないと思って、工学部に入ることにしました。
でも、学校が最初に大きな区切りで入学して、途中から学科をふりわけるやりかただったのですが、大学に入ってから勉強しなかったせいで成績が良くなくて、建築学科にはいれなかったんです(笑)
それで、結局3つくらいしか選べるところがなくて、船舶海洋工学科にいくことにしました。
デザインをしたかったので建築、建築なので工学部、でも建築学科にいけなかったから、工学部だけのこっちゃいました。笑
— 聞かれることも多いかと思いますが、東京大学での学校生活はどうでしたか?
雪浦 大学にはいろんなひとがいて。「官僚になりたい」ってひともいただろうし、有名なひとでしたらチームラボの猪子寿之さんとか。振りきってるひともいたりしたので、そうゆう意味ではおもしろかったです。
私自身は大学のとき本当最悪で、「就職もしたくないし、なにかステキな仕事ができればいいけどがんばりたくない」みたいな感じだったので、勉強もせず、かといって特になにかするわけでもなく、バイトして服を買ったり、旅行したりしてたのしんでました。
— 雪浦さんの「ルーツ」となったものを事前にうかがっていまして、そのひとつに「大学のときに見た、オランダのデザイン集団“ Droog ”」
をあげてくださいましたが、そのときの話を聞かせてください。
雪浦 新宿の「OZONE」で展示をしていたのを見にいったんです。
引き出しを束ねてチェストにしたようなものとか、もう10年以上前の話なんですけど、当時はすごく新鮮で、衝撃を受けました。
はじめの引越しの話ともつながるかもしれないのですが、「普通っぽいもののなかに何かを見つける」のが良いなと思っていて、日常を少しだけズレた視点で見ることとか。
ただかたちをグニャグニャさせて格好いいです!じゃなくて、笑えるようなところがあると良いなとおもいます。
*オランダのデザイン集団「Droog」
— Droogの「日常を少しだけズレた視点で見てみる」ところは雪浦さんのつくられているものにもつながっている気がします。
シンプルなんですけど、よく見たり、着てみたりすると気づきや仕掛けが散りばめられてるような。
雪浦 つながっていればいいんですけどね、ちょっとの違いというか。
— 「clean&humor」というコンセプトをうかがった時、私も好きなデザイナーなんですが、柳宗理さんが思い浮かびました。
柳宗理さんのつくられる作品も、シンプルで実用性があるけど、 ちょっとしたユーモアが潜んでいたりといったものが多いですね。
雪浦 柳宗理さんは私も好きで、家で使ってる調理器具とか食器は柳宗理さんの作品も多いです。
私のつくるものに実用性があるのかはわからないですが、「すごく女らしくて、可愛いでしょう!」というのに対してはすごく照れがあるので、そういうのじゃないところで「らしさ」みたいなものを出したいんです。
きっとそれがユーモアだったり、とぼけたようなところなんだと思います。
*この記事は2014年1月におこなったインタビューを一部編集しなおして再掲しています。