「主役」よりもワードワーブの中で輝けるような「名脇役」になりたい。 「aacero」デザイナーの八幡夏樹さん、後藤彩さんにお話をうかがいました。【第2話】
− あらためて、aaceroのブランドコンセプトを教えてください。
後藤 「aacero」というのはイタリア語で「広葉樹」という意味です。
葉の色が変化していくように、女性の気持ちもうれしかったり、かなしかったりとうつり変わっていくものだと思います。
そういう、感情の機微とかうつろいをあらわせる「心に纏える服」がつくりたい、ということからaaceroという名前をつけました。だからデザインのもとになるものも、日常のなかで誰もが体験するようなことが多いのかもしれません。
− 「日常」ということばがでましたが、aaceroはウェディングラインである「aacero mariage」もされています。「ウェディング」というのはある意味もっとも非日常なところだと思いますが、どういうふうにバランスをとっていますか?
後藤 「aacero mariage」は完全に私の趣味というか、小さいころからドレスがだいすきで、絵を描いていたり、学生のときもウェディングドレスのコンテストに参加したりしていました。
aaceroはやっぱり、ふだん着てもらうことが前提なので、値段のこととかやっぱり考えるのですが、ドレスはそれが可愛ければよい、一目惚れしちゃうようなのをどうつくるか、という気がしています。
良いシルクとか、刺繍もたくさんできたり、本物のパールを縫いつけたり。aacero mariageは夢のつまった非日常を思うぞんぶんやれるところなのかなと思っています。
いまでは、aaceroのデザインを決めるときにも、このアイデアはmariageでやればいいから、値段はあげずにいようとか、
逆にmariageのほうは「これだとaaceroでもできちゃうからもう少し特別感をだそう」とか、頭のなかで整理できるので、私としてはすごくありがたいです。
− ふだん着る洋服として、たとえば「着やすさ」と「可愛さ」どちらかを捨てないといけないとき、どうしますか?
後藤 可愛さですねえ。たとえばフレアのワンピースがあって、アイロンできるかとか、洗濯のことはもちろん考えますが、でもそれでつくって可愛いのか、と思います。
そこはドレスと似ているのかもしれませんが、常識の範囲内での値段と扱いやすさをふまえたうえで、まず「可愛いものをつくること」をどうやってリアルにしていくかということがあります。
八幡 これはテーマのひとつでもあるのですが、機能性を捨てたからこそ生まれる美しさというか。
もちろんむずかしいところもあるし、「着やすさ」のところを指摘されたりすることもあるのですが、でも、それで可愛くなくなるならaaceroでつくる意味はないのかなとおもっています。
後藤 最終的には、「これをaaceroがやる意味があるのか」というのを話しあって決めていきます。
八幡 もちろんそういった意見は参考にしつつ、取り入れられるところは取り入れたり、「確かにやりすぎたな」とか(笑)また次にバージョンアップしていきます。でも、そのものが「可愛かったところ」をなくしちゃうことはしないですね。
− ところで、おふたりはふだん、どんな洋服を着られてるんですか?
後藤 いまはこれといったブランドはなくて、なんでも着てるのですが、中学生くらいのときはいわゆる「裏原ブーム」だったので、雑誌だと「フルーツ」とか「ケラ」とかが流行ってたんです。
東京出身なので、休日は自分でリメイクしたゴテゴテの服を着たり、カツラをかぶったりして原宿に行ってました。
今思うと「何色の服着てるんだ」ってかんじなんですが(笑)
八幡 僕は新潟出身で、ファッションはずっと好きだったんですが、中学から高校は「メンズノンノ」とか「チェックメイト」とかを読んで、そのとき流行ってるような格好をしてました。
あとは、地元のちいさなセレクトショップでお店のひとから話を聞いたりして。
後藤 そこも対象的なんですよね、私はゴテゴテしてたんですけど、八幡は流行をおいかけ るタイプで。いまはふたりとも、aaceroも着たりしてますよ。
− aaceroの服も着られてるんですね。
後藤 基本的にじぶんが可愛いとおもうものをつくってるので、着ることは多いです。
ものづくりとして「じぶんが着たいものをつくってるか」といったらちょっと違うのですが。
− 八幡さんも着られてるということですが、aaceroでメンズはやられないんですか?
後藤 いずれはやりたいなとおもってます。いまもニットとかカーディガンは華奢な男性が買ってくれることもありますし、八幡もaaceroのカーディガンを羽織ってたりすることもあるので、そういうのを見てたらちゃんとメンズ用につくりたいなとおもいます。
「主役」よりもワードワーブの中で輝けるような「名脇役」になりたい。 「aacero」デザイナーの八幡夏樹さん、後藤彩さんにお話をうかがいました。【第3話】
*この記事は2014年1月におこなったインタビューを一部編集しなおして再掲しています。