日常を「少しだけズレた視点」で見てみること。sneeuwデザイナー雪浦聖子さんのはなし【第2話】
— 大学を卒業してから住宅機器メーカーに就職されます。なぜその会社に入られたんでしょうか?
雪浦 身のまわりで知ってる範囲のものをつくれたらいいなと思って、就職活動も自分が名前を知ってるところだけ受けてたんです。
「住宅機器メーカー」はTOTOだったのですが、大学の研究室の推薦を受けることができたのと、ここならわかる!とおもったので就職しました。
こんなこと言っちゃったら会社のひとに怒られそうですけど。笑
— 入社したときからのちに独立したりといった、先のことは考えられていましたか?
雪浦 どうでしょう…。当時も就職はしづらいときだったので、あんまり考えてなかったのですが、会社ではウォッシュレットの開発をしていたんですけど、やっぱりデザインのほうに寄りたいとおもってたんです。
それで毎年「デザイン部にいきたいです」という希望を出して、「そういう大学を出てないのでダメです」というやりとりをくり返してました。
そしたらちょうどそのあたりに結婚をして。「もしかしたら会社をやめても飢え死にしないかも!」って。笑
やっぱりやりたいことはやっておいたほうがいいと思ったんです。
会社でつくっていたものは月に1万台つくるような機械なので、すごく制限とか制約がありました。
それもいいんですけど、もっと身近なことをしたかったというか、息苦しいなとも思うこともあったんです。
洋服だと1枚つくって、それを誰かが気に入ってくれれば成り立つじゃないですか。
そういうのが良いなとおもって、それから洋服の勉強をはじめました。
— そうして住宅機器メーカーを退職され、服飾専門学校の「ESMOD JAPON」に入学されます。
Change Fashionのインタビューで「文化服装学院の友人にすすめられて」とありましたが、文化服装学院にはいかれなかったんですね。
雪浦 文化服装学院は見学にはいったのですが、ひとが多すぎたのと、自分もそれなりの年齢だったこともあって、たくさんの若い子たちの群れのなかには入り込めない気がするとおもったんです。
エスモードは文化に比べると規模もちいさくて、けっこう年齢の高いひとも多かったのと、友だちからきく評判もよかったので入ることにしました。
— 在学中から今の 「clean&humor」 というコンセプトで服をつくられていたとか。
雪浦 そうなんです。学生のことに漠然とつくっていたものが今とあまり変わらなかったので、「それをどういう言葉で集約するか」ということで考えました。
コンセプトは今も、英語としてちょっとおかしいのかなと思ってるんですけど…。
「clean」は形容詞だから「humorous」といわなくちゃいけないのかなとか。
「でも長いし、まあいいや」って。おかしいと思いながらずっとつかっています。笑
語呂のよさと、言いたいことはだいたい言えてるとおもうので、いいんですけどね。
— ESMOD JAPONを卒業された後は 「YEAH RIGHT!!」でアシスタントをされて、2009 年に「sneeuw」 をはじめられます。
自分でブランドをはじめることは専門学校に入ったときから考えていたんですか?
雪浦 年齢のこともありますし、今思うと会社員のときから「1人でやりたい」っている気持ちがあったんだとおもいます。
フロアに何百人も集まって開発をするんじゃなくて、もっと自由にやりたかったんです。
だから、エスモードに入学したときも「自分でブランドをはじめたいです、就職はしません」ってずっと言ってました。
— 独立して最初のシーズンはどうでしたか?
雪浦 もう、ぜんっぜんでした。笑
なんにもわかってなかったので、7月に展示会をしてるんですよ。
(ファッション業界では春夏と秋冬の年2回、3月と10月に展示会を行うことが多い。)
服も、春夏と秋冬の両方あって、服をつくったので発表します!って感じでした。
— それからも毎シーズン発表をつづけてこられましたが、sneeuwは毎回シーズンテーマを設定されてません。
なにか理由があるんですか?
雪浦 「テーマを設けない」と決めたわけではないんですけど、具象に寄りすぎたくないというか、抽象的なモチーフをつかってやりたいというのがあります。
テーマを決めちゃうと「今回のテーマに関係ないからこれはつくれない」ということが出てくるとおもうので、それはまだいいかなとおもっています。
自分で着ながらつくってるので、その時に着たいものとか、気分がテーマを決めないぶん出てるのかもしれないです。
もしテーマをつけるのなら、なにかいいきっかけが欲しいんですけど、ちょうど次が10シーズン目ですが、もうテーマを設定しないではじめちゃってるので次は15ですかね。笑
— ふだんは移動中などにアイデアを思いつくことが多いとのことですが、どのような形で思いつくんですか?
雪浦 ふだんは自転車で移動してるのですが、「なにか一定のリズムをくり返す運動をしているときはアイデアが浮かびやすい」って言われてるみたいで、だから自転車の上で何かが起こってるというよりは、多分頭の状態がよくてアイデアがわくんだとおもいます。
それで浮かんだアイデアをきっかけにちょっと手を動かしてみて、あとはデザインを進める過程で生まれた偶然を足していきます。
頭の中だけだと癖がでちゃうので、「あ、またこの形だ。笑」みたいなことがでてくるので、ためしにどこか切ってみたら「あ、これ良いじゃない」というのを採用したりして進めていきます。
— たとえば、服をつくるときに「機能性と美」のバランスがあります。どちらかをとらないといけない時は、雪浦さんならどちらを選ばれますか?
雪浦 それは可愛いほうです。笑
sneeuwの服も、袖がだらんとしたものが多いので、邪魔になるなあとは思うのですが、きっとその人もsneeuwの服だけを着てるわけではないだろうから。笑
そういう日があってもいいじゃない、って。
*この記事は2014年1月におこなったインタビューを一部編集しなおして再掲しています。