「自分に宛てられた服」を着ること。
自分がまさに「これだ!」というお洋服に出会ったとき、「これは自分だけに宛てられた服だ」と思ってしまうことがありませんか。すこしおおげさかもしれませんが、本当にそういうことが何度もあって、私は服が好きになったと思うのです。
実際にお店に並んでいる服というのは、ほとんどの場合何十着も・へたしたら何百着もおなじものがあって、服のほうはあなたのことなんて知りませんよ、ということのほうが多いだろう。そして、実際に服のほうにそういう気持ちでいてくれたほうが、いろいろとやりやすいときもあるのです。
さらに強い「これだ!」には、「この服に合う自分になりたい」というのがある。これはたぶん、お洋服にとって最大級にうれしいことだろう。かのカール・ラガーフェルドがエディ・スリマンのデザインした「ディオール・オム」のスーツを着たいがために42kgものダイエットをした話なんか、その典型じゃないだろうか。かなりのエネルギーと時間をつかって、1着の洋服に合う自分になる。1着のお洋服が、まちがいなくひとりの人生を変えてしまったのだ。
「この服に合う自分になりたい」までのことは、なかなかないかも知れませんが、いつでも「自分に宛てられた服」を着ることはできるかもしれない。その服を着るとおちついて・自分が自分らしくあれたり・自分を誇らしく思えたりする、そんなお洋服。「自分に宛てられた服」には、背中をポンと押してくれるような頼もしさがあるものです。
「これは自分に宛てられた服だ」という気づきをあたえてくれるのと、「この服に合う自分になりたい」という意思をあたえてくれるもの。今のあなたはどちらのお洋服に出会いたいですか?
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