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cineca + あわいもん 01

2022.06.16

お菓子を通して自身の世界観を繰り広げる2つのプロジェクト「cineca」 で 「あわいもん」の土谷未央さん。
彼女に会う時は、何故かいつも私の体調が悪くて、最初の挨拶が「大丈夫ですかー?」と言われてしまう。

土谷さんが今年に入ってからスタートした「あわいもん」という活動。期間限定で開催されたそのイベント会場に伺った時も「大丈夫ですかー?」と聞かれて「全然大丈夫!元気ですよ!」と言ったのに、その数日後に私がコロナにかかってしまって、会期中に紹介する予定が叶わなかった。やっぱり大丈夫でなくてごめんなさい。

会期も過ぎてしまったので、そちらは次回記事でじっくりご紹介するとして、やはり、土谷さんとの繋がりができた、OFSで開催した cineca の方の展示「たべるようにみる」について、まずは少し振り返り。

2021.12〜2022.01 に、OFSで開催した「たべるようにみる」展。チラシデザインはキギのサリーン

元より発売を予定していた初の作品集を軸に展示を構成しようとなったものの。これまでお菓子をメインとした展示はしたことがあっても、アートワークをメインとした展示となると初めての事らしく、どんな事が出来そうか?会って、電話で、zoomで、メールで何度も打ち合わせ。一番初めの打ち合わせは、チラシデザインを担当するサリーンと3人で、たしか3-4時間かかったと思う。メールのラリーは150回にも及んだ。(数えてみた。暇なのではない。)

打合せでの初めの印象は「揺るがないビジョンを持っていそうなイメージだったのに、色々迷いを持っていらっしゃるんだな」と。
しかし程なく、土谷さんという人は「どうかな、どうしよう」と心配をいっぱい抱えながら、まだ石橋叩いてるのかな?とこちらが様子を見ると、もう向こう側に渡ってた。みたいな人だというのが分かった。

しかし、その心配事は放り出した訳ではなく、ずっと抱えたままで。

そんな土谷さんが創り上げた展示は、心配を一つ一つ目で見える形にして潰していくように、細部への拘りが行き届いたものだった。

WEBメディア『PERK』での連載「cineca のおいしい映画」5年分をまとめた作品集『She watches films. She tastes films.』
土谷さんが大好きな映画を、自身の目線で解釈し、お菓子作品に昇華させていく。
その題材になった映画と、解釈からお菓子になるまでのプロセスを作品とあわせて紹介。
作品集の中身を開きにして紹介。この本の設置の仕方もシンプルながら拘りが。
時間ですぐに変化してしまうお菓子の表情を撮影するのは、きっととても大変。印刷も綺麗。
プロセスのラフも、土谷さんが一つ一つ手で書いたもの。

私はキギの仕事に対しても、細かい、細かすぎる!と思う事は多々あるのだけど、それに並ぶ細やかさ。キギの2人が展示を見て、クオリティが高い!!と声を揃えたのも珍しい事。

身内や信頼できる方々の力を借りて、出版や展示を手伝って貰ってはいたものの、創作や、お菓子作りはパッケージ制作から詰める作業まで、一人でやっている土谷さんに「アシスタントとかはつけないの?」と聞くと「手伝ってくれる人がいたら、全然誰でも嬉しいんですけど」と言っていたが…絶対誰でも良くないでしょう(誰でもには出来ないでしょう)と思ってしまった。

お花の表情をそのまま閉じ込めた「herbarium」
名画の巨匠達のパレットをイメージしたジンジャークッキー「palette」

土谷さんは、これまで長年に渡るcinecaの活動の中で、自分の思いとは違った方向に捉えられることが少しずつ蓄積をして、違和感を感じているようだった。
そんな意味で、今回の展示は「集大成」として、一旦cinecaの活動には区切りを付け、2022年からは新しい試みをスタートさせる予定だと言っていた。(それが「あわいもん」です。)

けれど、会場に訪れるお客様が、展示や2回開催されたトークイベントを通して、土谷さんの創作に至る想いを知り、言葉をかけてくれた事が嬉しかったらしく、もう少しcinecaを継続していこうという想いに至ったようだった。

私達も展示をやり続ける中で、作家さんのこういう気持ちの変化に触れられた時、続けて来た事への意味を深く実感できる。

建築家•中山英之さんとのトーク
異ジャンルながら2人の視点の共通点や、新しい発見も。
写真家•新津保建秀さんとのトークは、土谷さんの創作への入口を、幼少期から紐解く内容に。
トークでは、新作のお菓子「痕跡のクッキー」が参加者に配られた。クッキー生地を丸い抜き型で抜いていくと余る生地。本来なら、捨てられたり、丸めて2番生地されてしまうソレを焼いたら夜空に浮かぶ星のようなクッキーになった。映画「はちどり」からインスピレーションを受けて生まれたお菓子。

限定数しか作れない新作を、お客様の分を奪って手に入れる訳にもいかず、やきもきしていたら「痕跡のクッキー」の痕跡(失敗しちゃったやつ)を詰めて持ってきてくれた。

食べられてますけど

何が失敗かというと、少しだけ入ってしまった空気で、ポッコリしてしまったところ。それだけなんだけどボツになってしまう。それに、クッキー作りをしたことある人ならわかると思うが、生地は焼くと少し膨らむから、実際には、丸くくり抜いた後の星形の残り生地をただ焼いたのでは、焼く前のようには上手く収まらない。その膨張加減を計算して、また少し小さい星形でくり抜いているのだ。

この手のかかり方一つ一つを見ても唸ってしまう展示だったのに、2022年から始まった「あわいもん」では、更に驚かされる事になるのです。その様子はまた次回。

ちなみに、6/16現在、名古屋の書店「ON READING」さんで、上記で紹介した土谷さんの初著書『She watches films. She tastes films.』の出版記念展が行われているようなので、記事を読んで頂いている今日が6/19以前で、名古屋近郊の方は、是非足を運んで下さい。



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