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警察の「軍事化」問題:暴力的な警察を生んだシステム

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、アメリカのテックニュースや、直近ではアメリカの人種差別など社会問題を解説するnoteとポッドキャストをやっています。まだ購読されてない方はチェックしてみてください。

はじめに

多くの人々が今回のジョージ・フロイド事件をきっかけにBlack Lives Matterや人種差別問題について声を上げています。日本でも抗議が行われたり、著名人がSNSで思いを書かれたり、企業は寄付をしたり、予定されていたイベントを抗議デモを配慮し中止・延期をしています。私自身としてもnoteで記事を書いたり、SNSではほとんどこの騒動についてしか投稿しておりません。その中で、重要だと思っているのはこの大きな問題をアメリカが抱える理由とは?そして何故この課題が解決されていないのか?

今回のBlack Lives Matterで重要なのは大きなコンテキストをまず見ること。その中でまず見るべきポイントは人種差別問題、そして次に重要になってくるのが警察暴行文化と、その文化を作り上げた警察の「軍事化」問題です。

ジョージ・フロイド事件の直後に暴動・略奪がアメリカ中で起こっていることはニュースになっている。ただ、これは抗議者や過激派グループがやっているだけではなく、警察側もやっていること。刑事弁護人のグレッグ・ドウセットさんのTwitterでは5月31日〜6月4日の短い間で240件以上の警察が抗議者や記者などに対して暴力的な行動をまとめ、解説している。

その一例がこちら。ミシガン州のグランドラピッズ市で警官に叫んでいる人に対して警官がまず唐辛子スプレーをかけて、そのあと別の警官が近距離で催涙ガスをその人の顔面に撃った。

彼のTwitterではビジュアルでは、警察官による暴力的な行動が起きたマップも紹介されています。

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引用:Maminian Github

スレッドのリスト化されたい方は、こちらのGoogle Spreadsheetをご覧ください。

私はこの中で全ての動画を見ました。もちろん中には正直、抗議者が先に何かして警察が暴力で返したものもありましたが、大半は非暴力的な抗議者たちに警察が襲い掛かったりしてました。

そして記者への暴力は抗議者の仕業という噂もありましたが、The Interceptsが調べたところ、ほとんどの記者に対しての暴力は警察からでした。

しかも今回最も恐ろしい点は、警察側が自分たちの正体を隠していること。ニューヨークやワシントンDCで多くの人が見たのが警察が自分たちのバッジの上にテープを被せて、名前や所属場所を隠している。ほとんどの州では警察が身元のバッジに記載されているID、所属部署、名前などを常に見せていなければいけない。

日々続く抗議の中で、この写真が特に注目された。

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引用:News.com

警察はもちろんこの子供を抱えている人を撃たなかったが、数回ゴム弾が入っている銃を彼の方向に向けた。

今の警察の状況と、これから話す内容を一つの写真にまとめたと思ってます。この警官の格好と使っている武器、明らかに武器を持っていない人と子供に対しての対応、周りの警官のリアクションが全てこれから話すテーマ、アメリカにおける警察の課題です。
それは「Militarization of the Police(警察の軍事化)」です。今回の記事は、アメリカ警察の軍事化された課題と、それが今の環境でどう拡大されているかを解説したいと思います。

アメリカの軍事文化

アメリカは軍隊が大好きです。もちろんそれはアメリカ兵士が家族と再会する感動的な動画の多くで記録されているのもそうだが、この図は、世界で最も高い軍事費の国トップ15を表示してます。いかにアメリカが軍隊に対してお金を払っているかを分かると思います。

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引用:Statistica

また、金額でもアメリカが$732B(約8兆円)と圧倒的に高いのがわかります。実際に見ると、軍事費のランキングの2位〜11位の合計額がアメリカより低い。実際にSIPRI調査を見ると、アメリカの$732B軍事費は世界の軍事費($1,917B)の38%を占めている。

アメリカの軍事費が高い一部の理由は武器や軍事機器を大量生産しているから。大量生産しているせいか分からないが、結構無駄使いしていることが多い。2013年でアメリカ軍が徐々にアフガニスタンから撤退していたときにWashington Postがアメリカ軍が$7Bほどの軍事機器をそのまま残したと報道。その$7B分はアフガニスタンにあった約20%の軍事機器で、アメリカに持って返らなかった理由はコストの問題だった。残された軍事機器はアメリカの味方に使われる場合もあれば、最終的にISISなどテログループに渡るケースもあります。アメリカ軍がシリアを撤退するように命じられた1週間も立たないうちにアメリカ軍が自分たちの弾薬を保管してた場所を爆撃した。

このように、アメリカは大量生産している軍事機器を上手く活用してない。しかもこれだけ無駄にしても、実は大量に軍事機器の余剰在庫が残っている。アメリカは日本含め他国にその余剰在庫を売っていると同時に、実は国内でも大幅にディスカウントして売っている。その国内の売り先が警察や関税執行局など法執行機関が対象となっている。

アメリカの警察はこの軍事機器へアクセスし始めてからこの警察の「軍事化」されたが、実際にアメリカの警察の軍事化が注目され始めたのはジョージ・フロイド事件と似たマイケル・ブラウン射殺事件から生まれた暴動に対して警察が異常に軍事っぽい格好をしていたから。

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引用:The Guardian

警察の「軍事化」で考える4つの視点

この警察の「軍事化」ではもちろん警察が使わなくて良いような軍事機器を買っていることがスタートかもしれない。ただ、そこだけをメディアの多くが見がちですが、実際にはこの軍事化するにあたり4つの軸から考えられるとトレド大学のオルベンガ准教授が語っている

1. Materials(材料)
銃や軍事機器を購入できるアクセス権。

2. Culture(文化)
軍事用語「War on Drugs」、「War on Terror」などの利用と軍事的恐怖感・考え方の「Warrior Mindset」。

3. Operational(運用)
アメリカ軍を真似た、戦争で実際に使う戦術の活用。

4. Organizational(組織)
SWATチームやテロ対策チームの結成によって軍事化の正規化。

一つずつ詳細に説明してから、最終的にこの「軍事化」が本当に良いのか?を議論するべきだと思ってます。

材料:軍事機器へのアクセス

最近の抗議者の動画を見ると、周りの警察が警察なのか、アメリカ軍なのかがわかりにくくなっている。似たような武装をしているが、何故アメリカ警察はアメリカ軍とほぼ同じ格好をしているのか?

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引用:New York Times

それは1997年に出来た「National Defense Authorization Act」の中の「1033 Program」によってアメリカ国防総省が余剰在庫を国内の法執行機関に渡せるようになったから。アメリカの警察を含めた法執行機関は余剰在庫を購入するために配送コストのみ負担すれば良いようになっている。Wired調べによるとこの1033 Programが始まってから、実に$7.4B(約8,000億円)分の軍事機器が移管されて、8,000以上の法執行機関が1033 Programに登録している。多くの購入された軍事機器はオフィス機器や無線機器などの必要品だが、その中にMRAP(耐地雷・伏撃防護車両)や特殊武器などの購入もされている。

問題例
アメリカのペンタゴンいわく、法執行機関に無意味な軍事機器は渡していないと。ただ、実態を見ると違う。以下2006年から2016年でペンタゴンから購入されたもののリスト

・7,091台のトラック($400.9M)、625台のMRAP($421.1M)、471台のヘリ($158.3M)、56台の飛行機($271.5M)、329台の装甲車($21.3M)
・83,122個のM16/M14ライフル($31.2M)、8,198個のピストル($491K)、1,385個のショットガン($137K)
・18,299個のスナイパースコープ含めたゴーグルやスコープ($98.5M)、5,518個のレーザースコープ($5.5M)
・866個の地雷探知機($3.3M)、57個の擲弾発射器($41K)
・5,638本の銃剣($307K)、36本の剣と鞘

コメディアンのジョン・オリバーが説明するように、この精度によってニュー・ハンプシャー州の小さい町のキーンでMRAPの一種であるBearcatを$286Kで購入できた。Bearcatを購入する際の申請書であげた購入理由は「テロの脅威は幅広く、いつ来るかが分からないから」と記載し、テロ攻撃が候補場所としてキーン市が毎年行うかぼちゃ祭りを記載した。

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引用:Flickr

しかもBearcatはキーン市だけで利用されてはいない。ウィスコンシン州のマディソンは2017年にBearcatを購入した。ただ、BearcatのようなMRAPを活用するのは基本的に推薦されていない。アメリカ軍も社内コミュニケーションでMRAPをアメリカ軍基地に置くことも推薦しなかった。アメリカの道中で走らせるとアスファルトをダメージし、さらに転倒する可能性もあると言われている。

しかも不思議なのは犯罪率が高い地域の警察が購入しているだけではなく、何故か学校の警察部隊も購入している。例えばフロリダ大学、メリーランド大学、ウェザーフォード・カレッジなどが購入した装甲トラックはこのようなもの:

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引用:Federal Defense Industries

それ以外にオールド・ドミニオン大学の警察がレーザー発射シミュレーションシステムを購入、デトロイトの公立学校の警察が爆発物処理ロボットを6台購入、そしてアーカンソー州のコミュニティーカレッジの警察がC-23貨物機を$5.3Mで購入。購入理由は100以下の英単語で記載。そのコミュニティーカレッジは貨物機以外に50台の装甲車も購入。さらに、フロリダ州のブレバード郡の警察は13台のヘリ、2台の装甲車、246個のアサルトライフルを獲得。

このように、本当に必要なのか?と言う購入がたくさんある。

可視化されていない過去歴と監査が足りない現状
実はアメリカ政府も、各法執行機関もこの軍事機器のトラッキングをあまりしていない。アメリカ国防兵站局は特に過去の購入したもののアーカイブが少ない。以下スプレッドシートはマサチューセッツ州の法執行機関の過去の購入履歴だが、全てはリストされていない。

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引用:LESO Public Information

各法執行機関も何を購入したかの記録を持ち続けるインセンティブもないため、大体数年間しか保管しない。

しかも本当に誰が購入しているかを調べているかは分からない。実際に2017年にアメリカの政府説明責任局が嘘の法執行機関として登録して、嘘のサイトと配送先を作った。申請してから一週間以内に承認され、なんとビジョンゴーグルやパイプ爆弾の材料を含めた100以上の軍事機器を取得出来た。その総額は大体$1.2M分

無人航空機リーパーの起用
今回の抗議者たちに対してもとてつもない軍事機器が利用されている。もちろんその一部は催涙ガス手榴弾やゴム弾など、多くのニュースなどで取り上げられているものもあれば、それ以外のものもある。

まずは「Stinger」と言うIED、即席爆発装置。こちらはゴム弾をばらまくもので、以下Stingerの写真はワシントンDCで抗議が終わった次の朝にある子供が見つけて持ち上げ、お父さんに見せたもの。

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引用:Ed Felten Twitter

そしてさらに怖かったのはアメリカ合衆国税関・国境警備局が今回の騒動で活用したMQ-9 リーパーと言う軍用無人航空機。

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引用:The Drive

こちら5月29日に実際に起用され、暴動などが始まったミネソタ州ミネアポリス市の上空を飛んでいたことが分かった。

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引用:Jason Paladino Twitter

こちらはADS-Bと言う航空機を追跡するため協調監視技術を使って見つかったそうです。恐らく状況の監視をするためだったと思われているが、実際に使用用途の説明は今のところない。

1033 Programのおかげで軍事機器を簡単にアクセス出来るようになると、文字通り「軍事化」される。

文化:警察の「戦士マインドセット」

警察の仕事は大変である。それは誰も疑問に思わないと思います。犯罪者を相手にして、場合によっては命を落とす時もあるし、人の命を取らなければいけない。フィジカル面でも精神的にもかなりストレスがかかる仕事です。それを踏まえてこれから話す警察文化について説明します。一部は理想論に聞こえるかもしれませんが、今の警察文化には課題があると思ってます。

それがアメリカで徐々に認知され始めている「Warrior Mindset(戦士のマインドセット)」です。このマインドセットが考えられた目的は警察の安全を第一にしたいから。簡単に説明すると、元々の定義は警官が危ない状況に巻き込まれた際にそれを戦って乗り切る精神・力を付けるためのだった。

この「Warrior Mindset」の逆が「Guardian Mindset(守護神マインドセット)」。これはできるだけ暴力を避けるアクションを取ることで、守護神マインドセットの支持者たちは戦士マインドセットは警官をより危険に晒すと思っている。

元々の戦士マインドセット支持者のダン・マルク警官はこの戦士・守護神マインドセットを組み合わせるのが重要で、彼の予測だと大体9割の警察の仕事は守護神マインドセットで、10%は戦士マインドセット。

アメリカ警察は戦士マインドセットの教育が増えていて、そのコンセプトを受け入れている。そしてこの戦士マインドセットはかなり進化していて、思った以上に悪質な方向に向かっている。

「Warrior Mindset」の創設者デーヴ・グロスマン元警官
この新しい戦士マインドセットの創設者であるデーヴ・グロスマンさんは元警官ではなく、元軍人。彼の父親が警官だった影響のせいか、グロスマンさんは18歳で第82空挺師団に入った。そこで、グロスマン元警官が当時一番興味を持ったのが「人を殺すと人はどうなるのか?」だった。ただ、アメリカ軍に入った時にはベトナム戦争が終わった直後だったので、実体験が出来なかった。その後テキサス大学に行って、心理学の勉強をした。そこからグロスマン元警官は戦争における「人殺し」の心理学の「Killology(殺人学)」を提唱し、1998年にアメリカ軍を引退した際にこのコンセプトをリサーチするためにKillology Research Groupを設立。

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引用:Insider

彼は約20年、年間300回にわたりこの戦士マインドセットの講演・トレーニングを何万人の警察官に行っている。彼が定義する戦士マインドセットとは人をいつでも殺せる精神体制でいること。彼の目的としては警官を戦争中の兵士みたいな思考にすること、そして警官が担当している地域を反乱者が潜入したときの戦いを見て欲しいこと。

New Republic記者が実際にグロスマンさんの授業を受けた際に、グロスマン元警官の授業の冒頭に言うが「You. Are. At. War(あなたたちは戦争中です)」。警察が戦争の最前線に立っている戦闘部隊で、テロリストが攻撃した時には特殊部隊は来ない。警察が特殊部隊にならなければいけない。

アメリカでは犯罪率が爆発的に上がっていると都市名を書きながら発言している。こちら後ほど紹介しますが、この発言はミスリードしていると思う。アメリカでは7都市で暴力犯罪は上がっているが、FBI調査を見ても全体の数字を見ると下がっている。

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引用:Pew Research

しかし、グロスマン元警官はアメリカはこれから犯罪率がどんどん上がり、大量殺人が増え、メキシコからの麻薬カルテルがアメリカに潜入し、アメリカ警察が全員殺されると言うかなり怖い未来を描いている。

この恐怖感をまず刷り込み、その後に暴力についてこう語る。「どうやって暴力を対抗する?優れた暴力。正義のある暴力。暴力はあなたが使えるツールであり、あなたたちは暴力的な人たちにならなければいけない。ちゃんと準備をすれば、殺すことは大したことない」。

この考え方、いわゆる口より先に手を出すマインドセットは警察のトレーニングでよく出ること。元警官で現在サウスカロライナ大学のセス・ストートン准教授が実際に行うトレーニングをコメディアンのハサン・ミンハジに見せる(4:13〜5:18)。

ここで重要なのはストートン准教がさりげなく言った「アクションはリアクションより早い」と言う発言と、動画で出た子供が遊ぶゲームの意味合い。これは相手が何の武器を持っているかが分からないので、相手が先にアクションを起こし、警察がリアクションすると殺されることを教えている。

グロスマン式教育の招いた結果
実際に彼の教育の影響はアメリカ中で見られるが、その中でも最も悪い結果を招いた例は、ジェロニモ・ヤネズ警官だ。彼は米ミネソタ州で停止させた車を運転していた黒人男性 フィランド・キャスティルさんを射殺した。キャスティルさんが合法的に銃を所持していることを自分から告げると、ヤネズ被告は車内でシートベルトをした状態のままのキャスティルさんへ向けて7発、発砲した。車を止めてから90秒以内で撃ち始めた。実際の映像はこちら(センシティブなコンテンツなので、見たく無い方はスキップしてください)。

車内にはキャスティルさんの交際相手の女性と、女性の4歳になる子供がいた。そしてヤネズ警官は過失致死罪などに問われたが、無罪判決が言い渡された。

キャスティルさんの事件は極端なケースだったが、これに近しいものは日々繰り返されている。繰り返されている理由はこの戦士マインドセット・文化を持ってしまう警察。2015年にThe Nation記事に記載されているが、PERF調べによると大体の警官は129時間の拳銃、防御技術、スタンガン、警棒などの研修を受ける。逆に守護神マインドセットで必要な「De-escalation(暴力的な争いを落ち着かせる技術)」の研修はたったの8時間しか受けてない。これは2006年でも似たような調査をアメリカ司法省調査でも似た結果が出てた。

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引用:Vox

2017年のミネソタ州ミネアポリスとセントポールの「De-escalation」トレーニング時間を見ると、ほとんどが時間を費やしていない。

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引用:APM Report

こうして警察が軍事機器を獲得し、兵士と同じマインドセット・文化になると次に行われるのが警察の運用が軍事化される。

運用:軍事戦術の活用

今回の警察からの暴力的行動の中には軍事戦術を活用しているシーンも複数ありました。まずは勢力の偉大さを見せつける「Show of force」。装甲車、ゴム弾、催涙ガス手榴弾などを活用して、相手を怖がらせる戦術。場合によっては音響兵器を使う警察まで。。。

その中で、警察が低空でヘリを飛ばして事例も今回出ている。これは実際に戦争エリアでもジェット機やヘリなどを利用して使われている戦術の一つ。これがまさかワシントンDCで起用されるとは誰も想像してなかったはず。。。

さらに警察が使っているのが「Kettling(包囲)」と言うドイツ軍で昔使われていた戦術。これは相手の周りを囲い込み、それによって暴力をしやすくしたり、囲い込ませるメンタル的なプレッシャーを与える戦術。今回の抗議でこの「Kettling」が使われて最もニュースに載ったのがブルックリンブリッジに抗議車たちを1時間以上警察が閉じ込めた話。

これはまずアグレッシブな警察の行動として見なされ、抗議者側から見ると警察をより信頼できなくなるのと、さらにコロナの中で、警察がわざと密集を作るのはどうかなと思う。もちろん「Kettling」は今回だけ起用されているわけでは無いが、今回は囲い込むだけではなく、その中で暴力をする警察も出ている。

実際に、この「Kettling」をマンハッタン内で体験したフレデリック・ジョセフさんの話を聞くと、恐怖しか浮かばない。

「命の危険を感じたことは何回もあったが、これだけおもちゃのように弄ばられたのは初めて」

出入り口を封鎖する戦略は色んな都市で行われている。ワシントンDCでは抗議者が帰るところを警察が封鎖して、外出禁止時間になると逮捕している。

ジョージア州のアトランタでは警察が全出入り口を封鎖。抗議者が出られないようにして、外出禁止時間になるまで待って、その後に催涙ガス手榴弾とゴム弾を撃ち始めた。

コロラド州デンバーでは、恐る恐る封鎖されている一人の抗議者が警官に外出禁止時間になったら何をするのかを聞いたところ、警官の返答は「お前らをボコボコにする。」だった。

さらに、ペンシルベニア州のフィラデルフィアでは察が抗議者を登れないフェンスへ追い込んで、催涙ガス手榴弾を撃ち込み始めた。

「Kettling」以外にも、抗議者たちのインフラをターゲットしている警察もいる。ノースカロライナ州のアシュビルでは医療テントを壊す警官が何人もいた。しかもよく分からないのが医療テントに置いてある水のペットボトルをわざわざ荒っている。

軍事戦術以外にも、暴力を誘っている映像も多々出ている。スペースがない中で抗議者の横を通り、わざと触れさせて暴力をできる理由を作っている。

こちらは警察が跪き、非暴力的な警察を見て喜んだ抗議者たちは近寄ったところ、警察側が彼らを至近距離で撃ち始めると言う罠まで仕掛けている警察も出てきている。

実際に警官同士での会話でも、抗議者たちに対して「殺すな。でも強く当たれ!」と話し合っているのが聞こえる。

組織:SWAT部隊など特製部隊の増加

アメリカではSWAT部隊など特殊部隊が増えている。1964年に出来たSWAT部隊ですが、1975ん年には500部隊もいなかった。1999年には各州にSWAT部隊は存在して、今では1975年と比較すると15,000%増加。5万人以上のUS都市の9割、2.5万〜5万のUS都市の80%SWAT部隊を活用している。5,000人以下の街でもSWAT部隊がいるケースもある。

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引用:Newsweek

SWAT部隊自体は必要なのは間違いない。多くの警察署長が言うように、SWAT部隊はハイリスクな人質状況や発砲する危険人物を止めるためには必要と言っている。ただ、以前話した戦士マインドセットとSWAT部隊を組み合わせた結果、異常にSWAT部隊が起用される回数が増えるものの、ほとんどは彼らを活用しなくても良い状況だった。ジャーナリストのラドリー・バルコさんによると、1970年代では毎年数百回起用されたSWAT部隊が1980年代で年間3万回、そして2005年では5万回まで上がった。単純計算すると、毎日130回以上SWAT部隊がアメリカでは活用されていることとなる。ACLU調べだとその年間5万回起用されている中を見ると、たったの7%が人質事件や銃乱射事件。SWAT部隊が起用される79%の回数は家の捜索令状で、大体が麻薬の捜索用。

メリーランド州では2008年にある小さい街の市長の家にSWAT部隊が送り込まれた。その市長の住所が麻薬密売で使われていて、その住所に約14キロほどの麻薬が届く予定だった。その麻薬の配送を途中で止めるのではなく、届いた後にSWAT部隊が起用されて、市長の家に入り込んだ。そして彼の犬を2匹とも撃ち殺し、市長と市長の奥さんを尋問され、市長の義理の母親が手錠をかけられた。結果として疑いをかけられた市長と市長の奥さんは麻薬密売には全く関係なかった。

この事件の影響でメリーランド州は2010年〜2014年のSWAT部隊の起用歴を公開するように命じられた。そのおかげで、今までよりデータを取得できている(警察側はあまり特殊部隊のデータを公開しないので)。結果、その4年間でメリーランド州だけで8,200回ほどSWAT部隊が起用されていて、そのうち92%が捜索・逮捕令状だった。8,200回の中、たったの5%のケースで容疑者が武装していたことが分かった。

2018年にプリンストン大学で働くジョナサン・ムモロさんが警察の軍事化の調査を行った結果、アメリカ全体で15,000の法執行機関がある中、9,000は2000年〜2008年の間に一度はSWAT部隊が存在していたことが分かった。しかも彼の調べによると、SWAT部隊の起用によって特に警察への安全性(殺される、もしくは暴行を受ける警官の数)は変わらない。

問題は、高価なSWAT部隊用の機器を小さい街が購入すると、使いたくなってしまう。せっかく投資したものを無駄にするのは意味がないと思ってしまう。しかも、警察が麻薬対応をすると、連邦補助金をもらえる。その補助金と、警察が行う「Asset forfeiture(資産の没収)」を組み合わせることによって、SWAT部隊は警察にとってお金儲けできる組織でもある。今回の記事でこの資産の没収についてはどうしても長くなってしまうので記事には入れられないですが、簡単に説明すると犯罪に関わっている資産は警察が回収できる仕組みで、それによって現金、車、家などを没収する。2011年〜2014年では現金の没収だけで$2.5B(約2,700億円)を超えている。しかもそれは起訴されなかった人だけの没収額。さらに、没収された資産を取り戻すのがかなり難しく、その没収額を使って警察がビール、マルガリータを作る機械、そしてマサチューセッツ州の警察署は何故か製氷車を購入した履歴がある。多くの警察が車を止めるときに「現金を持っているか?いくら持っているか?」を聞くのは、この理由。この詳細は以下コメディアン ジョン・オリバーの動画をご覧ください。

SWAT部隊以外にテロ対策部隊などを起用する警察署が増えている。この軍事化された組織を最も表現されているのが警察署のリクルート動画。YouTubeで「Police recruitment video」を検索するだけで、多くの都市の警察署の動画を見えるが、ほとんどが今まで話した軍事化要素が入っている。兵士の格好をした警察官、パトカー、耐地雷・伏撃防護車両、ヘリなど軍事機器を見せて、犯罪者を捕まえるシーンなど戦士マインドセットを表現し、SWAT部隊が無線ラジオなどでコミュニケーションをとって、軍事戦術を使っているのを見せかけている。以下動画はさらにスナイパーの映像とかも出しているフロリダ警察のリクルート動画。

音楽、カット割などを見ると、この軍事化された文化を推しているようにしか見えない。そしてこのフロリダ警察署の動画はイレギュラーなものではない。こちらルイジアナ州の警察署の動画とノースダコタ州の警察署の動画だが、かなり似ているし、YouTube検索で似た動画が山ほど出てくる。この軍事化要素を全面的に出して、これが大丈夫だとメッセージを出してしまうと、警察に入る人たちもこれを期待してしまう。

軍事化により失われる警察への信頼

この軍事化された警察が及びインパクトは様々な研究結果が出ている。中でも多く語られるのはAJPH調査で2012年から2018年の警察が関係した死を見たところ、アメリカでは警察は1日に2.8人殺していると言うデータ。そして別の2017年の調査では警察が使う費用と警察が関わった死のケースの相関を研究した際に、相関があったと言う結果になった。この調査の中で一例として上がったのがある警察署は軍事機器の費用をゼロから$2.5M(約2.7億円)になったとき、その地域で市民の死亡率が倍になった。

さらに問題として警察とその地域のコミュニティとの信頼性が失われること。軍事機器を見せるとより警察が怖く見えて、より軍事化文化を取り入れた警察官は戦士マインドセットになり、暴力を市民にすることによってコミュニティが警察がただ暴行をしたいと疑ってしまうサイクルに陥る。

人種差別は関係ないの?
今までの話を見ると、警察は人種差別をしているのではなく、軍事化した影響で誰に対しても暴力的になっている。たしかに、軍事化された警察は黒人だけではなく、様々な人種に対して暴力的になっている。ただ、その中でも特に黒人が警察の暴力的な行動の対象となっている。黒人は白人よりも3倍以上の確率で警官から撃ち殺される可能性が高く、アメリカに住んでいる1,000人の黒人のうち1人は警察に殺されると言う調査結果も出ている。

以前公開したBlack Lives Matterの記事でも説明したように、ファーガソン市では人口の63%が黒人なのに、86%の車止めは黒人が対象だった。そのほかの地域でも同じようなことが起こっているのかをスタンフォード大学が2015年以降の警察による車止めのデータを25州のパトロール機関、そして29市警察署より1億件の車止めデータを取得。特に車止めが多いと言われる黒人とヒスパニック、そして白人の車止め率を調べた結果、ヒスパニックは白人と同じぐらい止められていて、黒人は白人より高い確率で止めていた。

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引用:Stanford Open Policing Findings

そして車止めの後の捜索率とヒット率(実際に密輸品などが車の中に入っている確率)を組み合わせて見ると、スタンフォード大学が取得したデータセットだと黒人とヒスパニックのドライバーを捜索するハードルは白人ドライバーより低かった、いわゆる差別があった結論になった。

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引用:Stanford Open Policing Findings

もちろんデータセット自体が完璧ではないし、何かしらの理由で黒人・ヒスパニックをより捜索する理由があるかもしれない。ただ、アメリカでこの車止めの会話を友達や学校でやると面白いリアクションが起きる。トレバー・ノアさんもこの車止めの回数に対しての白人のリアクションについて語った。

アメリカには5〜6年間しか住んでない。西海岸で2年半ぐらい、東海岸で2年半ぐらい。その期間中だけで警察に大体8〜10回ぐらい止められたことがある。これを聞くと多くの白人がビックリする。誰かがフィランド・キャスティルさんが13年間で49回も警察に運転中に止められた話をした時に、私は「それはクレイジーだ。私は7〜8回ぐらいしか止められたことがない」と言ったら、みんな私の方を振り向き、「え、本当に?どう言う意味?なんで?どこで?」とビックリしながら聞く。でもこれが真実だ。私は何回も止められている。レンタルカーでも、自分の車でも、テスラに乗っていた時でも止められたことがある。

一番おかしなことはそれを自分でも受け入れたこと。そして止められたらまずやることは車の窓ガラスを下ろし、腕をそのまま出してブラブラさせる。バカらしく見えて、警官もすごく変な目で見てくるが、手が変なところに置いてないことをそれだけ必死に見せないといけないのがわかっている。

これが黒人の家族で親が子供に教えなければいけないこと。自分の子供にこんなことを教えないといけないと思うだけでも、どれだけ辛いかが分かる。

さらにニューヨークで警察が実施した「Stop and Frisk(ストップ・アンド・フリスク)」、疑わしいと判断した人物を一時的に拘束、質問し、ボディ・チェックをして武器などを所持していないか調査する行為は圧倒的に黒人とヒスパニックが対象となった。2011年がこのストップ・アンド・フリスクのピークで、合計68.5万人が止められ、警察に調査された。

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引用:New York Civil Liberties Union

こちらが2014年〜2016年、そして2017年に警察が容疑者を止めた理由。

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引用:New York Civil Liberties Union

そして2014年〜2017年のデータを見ると、実に84%のケースが黒人かヒスパニックだった。

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引用:New York Civil Liberties Union

しかもその中の14歳〜24際の男性のデータを見るとさらにひどい。黒人とヒスパニックの14歳〜24際の男性はニューヨーク人口の5%でしかないのに、ストップ・アンド・フリスクの合計回数の38%は彼らが対象となっている。特に黒人男性で14歳〜24際は約2.3万回(合計の24.9%)のストップ・アンド・フリスクを占めている。さらに、最も重要なところは9割のストップ・アンド・フリスクの対象者は完璧に無罪だった。

こちらに関してもトレバー・ノアさんがこのストップ・アンド・フリスクから生まれる黒人のマインドセットについて解説してくれた。

これはただ警察が黒人を止めて、壁や車のボンネットへ押し込みたかっただけ。そしてこれをやる続けることによって、どう言う影響が生まれるか考えてない人たちがいる。自分が黒人で、毎日のように犯罪者扱いされ、壁に押し込まれていたら、それは警察を避難するのは当たり前。それを毎日のように体験している黒人に対して、「警察をリスペクトしろ」とは言えない。

それで耐えられなくなって警察から逃げたら警察から逮捕を逃れようとした疑いで捕まり、逮捕される。寄託が払えなければ牢屋に入れられ、その影響で犯罪者になってしまう。しかも犯罪者にならなくても、この悪質なシステムの中に閉じ込められたので、犯罪者ではないのに犯罪者の生活を送らなければいけなくなる。

黒人は警察をリスペクトしないと言う人が多い。でも逆に、警察は黒人をリスペクトしているのか?この違いはアメリカの富裕層の地域に行くと最も分かりやすい。そこでは警察と地域の市民の関係性は全然違う。それは警察側が間違った人を逮捕・捜索・止めてしまうとその人が権力がある繋がりの影響で警察側が仕事を失うかもしれないと言う理解があるから。

このストップ・アンド・フリスクと車止めの話は多くの白人、そして我々日本人にも分からない話だと思う。「そんなことありえないだろう。何か悪さをやったから警察がそう言うことをやるんだよ」と考えるひとが多いはず。それは自分たちがその立場にあったことがほぼないからです。ただ、少しだけでも日々警察から差別を受けている黒人の立場を想像するだけでも、このBlack Lives Matterの重要性が分かる。

今回の抗議者たちに対しても警察は明らかな人種差別的な言葉を発している。こちらカリフォルニア州のロスアンゼルスで警察の無線の会話がリークされた音声が恐ろしい。。。黒人をNワードで呼んだり、撃った黒人やメキシコ人の数で賞金稼ぎをしようとしている。

さらに、Buzzfeed記事にも出たが、数名の白人の警察官が白人の抗議者たちに外出禁止時間前になる前にどこかビルの中に入って逮捕されない様に伝えている動画が出た。

この事件はTwitter、Facebook、TikTokで多くの人が共有して、Buzzfeed記事が公開されたため、警察側から正式な謝罪があった。謝罪はあったものの、その警官の名前は公開されず、恐らく罰は受けないと思われる。これだけ報道されて特に罰が与えられない、責任を取らないとなると、報道されてないケースは恐らく多々ある。

警察の暴力的行為や人種差別的な発言・行動をしている事件の多くの場合では警察はボディーカメラがタイミング良く作動していない、もしくはボディーカメラがその瞬間に外れてしまったなどと言う。これだとボディーカメラの意味がないし、警察としては責任を取らなく良くなってしまう。

アメリカのリーダーシップと恐怖からの軍事化

やはりこの話をしてアメリカの大統領の話は避けられない。そもそも暴力を引き出すようなツイートをしたのもそうだが、今回の騒動でアメリカ大統領が知事に対して市民を「支配しなければいけない」を言うなど、かなりおかしな行動をとっているのは間違いない。

そして、さらにおかしかったのはシャッターチャンスを作るために非暴力的な抗議者をアメリカ軍を起用して退かしたこと。以下動画は後ほどホワイトハウスが出したものだが、この動画を撮るために何人が催涙ガス手榴弾とゴム弾を受けたと思うと、正直気持ち悪くなる。

この前日に多くのメディアがアメリカの大統領がホワイトハウスの地下壕へ避難した報道を見たトランプが、いつもの「タフガイ」として見せるために行った行動と言われている。

トランプの過去の行動、共和党の言葉遣い、そして以前話たデーヴ・グロスマンさんの授業を見ると何故これだけ軍事化された国を求めているのかが分かる。2016年にトランプが共和党公認候補者として確定された共和党全国大会でのスピーチ、そして大統領としての初スピーチを見ると、アメリカは壊れていて、血塗れになっている絵を描いている。

暴力だらけの街、腐った政治家、嘘をつくメディアなど、アメリカ中が腐った状況になったストーリーを売っていた。だからこそトランプの「Make America Great Again」が人に刺さった。今まで少しでも政治家、メディア、富裕層などに対して不満・怒りを感じてた人はトランプの言葉を聞いて共感をした。こちらの話は長くなり、選挙系の話は別途する予定なのでまたこのトピックについて書きますが、この「アメリカが壊れている」恐怖感を売りにしているからこそ、それを解決するのは勢力だと言う結論になってしまう。

トランプが過去に何回も独裁者のリーダーたちに関心を持っているのは、やはり自分の勢力・権力を守る方法を探しているから、そしてそれによって自分の「Winner」ブランドを保てるから。その勢力を見せるために、トランプは抗議者たちが増えていく中でアメリカ州兵を起用し出した。ワシントンDCでもその勢力が街中で見かけられて、それを見た人たちは戦争の場にいると間違えしてしまうほどのものだった。

Daily Beast記事にはアメリカ防総省ではなく、ホワイトハウスから直接ペンタゴンに街中でより軍事体制を整いたいリクエストがきたと。ホワイトハウスからヘリを低空で飛ばす要請を行い、トランプは一時期「戦車」を出したいと表明したらしい。

しかしトランプ・共和党の発言・行動に対して問われると、回答がいろいろ変わったり、場合によっては目の前で嘘をつかれる。今回の教会で聖書を持つためのシャッターチャンスで催涙ガス手榴弾と唐辛子スプレーを非暴力的な抗議者たちに使ったとメディアが報道してホワイトハウス報道官に問いかけた時、彼女の回答は催涙ガスではなく、違う化学ガスを使ったと言っただけ。

結果としては催涙ガスを使ってはなかったが、同じ結果(咳、涙、嘔吐など)であるコショウ玉と閃光弾を使ったし、アメリカ疾病予防管理センターはコショウ玉と閃光弾を催涙ガスと同等だとカテゴライズしている。

正直、あまりトランプやアメリカのリーダーたちの話はしたくない。しかもこの警察の暴力問題はトランプが作った問題ではない。ただ、彼の言葉や行動はこの暴力的行動を主張しているように見えるし、それを見て勘違いする人たちはより暴力的になる可能性もある。

とりあえずはここまでがほんの一部の警察暴行の課題を解説しております。以前話したQualified Immunityなど警察が暴行しても責任を取らないシステムの記事も出しているし、今後もこれについて記事や話を続けたいと思います。でも課題だけを話しても、正直意味がない。課題認識はソリューションの第一ステップでしかないので、私なりに解決に近づくためのできること記載させていただきました。日本の方々としては一部しか対象にならないかもしれませんが、ご興味あれば見てください。

解決案

これは全ての解決策にはならないし、日本人が対象にならないものもある。ただ、大事なのはみんなが課題を理解し合い、お互い解決法を提案することだと思ってます。私の提案は一案で、今考えついたものでしかない。

まず、課題認識をちゃんとしましょう
日本でも記事やInstagram Liveなどを通してこの問題について紹介しています。ご興味があれば是非読んでみてください。

Qualified Immunityを止めよう
日本でもそうだと思いますが、警察はかなり法律上で守られている。ただ、アメリカでは特にそれが悪質な方向に行っている。今日話したような暴力・殺害を警察がしてもほとんどのケースは罰すら受けない。警察が容疑者を殺害しても訴えられても、9割のケースは罰を一切受けない。このQualified Immunityを変える法案が国会に提出されているので、アメリカに住んでいる人は住んでいる地域の下院議員に連絡して、変えることをサポートするように連絡するのが大事。法案のサマリーはこちらをご覧ください。

このQualified Immunityについてもっと知りたい方は以前書いたnote記事をご覧ください。

Change.orgのキャンペーンも出ているので、署名をしたい方はこちら。

警察の軍事化を減らす、リソース配分を考え直す
今回の記事で書いたように、今の警察の軍事化は様々な点で悪い影響を及ぼしています。だからと言って完全に軍事機器へのアクセスを切断するべきではなく、ちゃんと必要な軍事機器が申請されているのか、全米で統一された警察トレーニングがないので、戦士マインドセットではなく守護神マインドセットのトレーニングを義務化するなど、軍事化要素を減らすことが可能だと思います。

そして警察へ渡す予算を考え直すのが重要かもしれない。ホームレス対策、教育プログラム、メンタルヘルスプログラムなど、市民の安全性を第一を起点として今のシステムと予算のアロケーションを一から考え直す必要がある。実際にミネアポリス警察署に根本的な変化を及ぼすため、ミネアポリス市議会が緊急会議を行った。

そしてその3日後、ミネアポリス警察署を一から作り直すと発言。この様に少しずつ変化が起きる。

このTikTok動画が上手くこのコンセプトについて話している。幅広い問題を警察が解決しなければいけないのを、警察だけではなく、各問題について別々のプロフェッショナルに頼む精度を作るのがベストではないかと案を出している。

@brittany_broski

Can we abolish the police? The history of policing in the United States is VERY race based. It’s an interesting google if ur into it

♬ original sound - brittany_broski

アメリカで「Defund the police」と発言している人たちのほとんどがこのアロケーションの分配の仕方、警察の役割を一から考え直すことを提案している。もちろんこのコンセプトはスケールで行ったことがないため、本当に国民の安全性を保てるかは分からない。ただ、根本的に警察の役割・組織を変えるのが必要だと思います。

ローカルレベルの選挙に積極的に参加する
国レベルではなく、まずは地域別でこの警察暴行や人種差別問題を変えなければいけない。地元の政府機関が警察と検察官と中良かったりするので、そこを変えるにはローカルの選挙で投票して変化を自ら作らなければいけない。

大統領選挙に参加する
やはり今回の騒動もアメリカのリーダーシップがかけている部分がかなりあった。それを変えるにはリーダーシップを変えなければいけない。そこでアメリカ市民が持っている力は投票券。今後Off Topicでは選挙ビジネスや選挙構成について話す予定ですが、これはこれで大きな課題であり、変化を及ぼす大きなチャンスでもあります。

難しい会話を自ら行い、間違った考えの覚悟で挑む
日本では黒人への人種差別以外にも様々な問題があるので黒人への人種差別問題に限らない提案となります。このような課題でまず必要なのは全員で話し合える状況・場・文化を作ること。残念ながら今まではこの会話をするのは非常に難しかった。特に白人側からすると、責められている様に思ってしまったりするケースもある。直近ですとLinkedIn社内でこの問題について話し合えるフォーラムを開催したら、まさにそう言う問題が上がりました。

オープンにこの会話が出来る様になれば国・社会として進化が始まると思う。アメリカも日本も、人種差別問題だけではなく、様々な問題についてオープンで話せる社会を作れることを期待してます。

未来のリーダーたちが前進していく

この騒動の中で大変救いになったのが自ら声を出した人たち、この裏にある課題を知ろうとした人たち、そして何よりも率先してアクションをとる若手層。そういう人たちを見るとアメリカ・世界の未来のリーダーがこの大変な騒動が起こっている中、急成長してどんどん前へ進んでいる姿を見て、ただただ安心と感心しかない。

例えばテネシー州のナッシュビルの抗議。抗議を主催したのは5人の10代の女性。

主催したのはJade Fullerさん、Nya Collinsさん、Zee Thomasさん、Kennedy Greenさん、Emma Roseさん。全員14歳〜16歳で何万人の抗議者たちを集めた若きリーダーたち。皆さん、この子たちをみて、私と同じ様に全員で合わせた力の強さを感じてもらえたら嬉しいです。

画像22

引用:Brinley Hineman Twitter

変化は少しずつ起きるもの。みんな声を上げて、抗議をして、そしてその間に自分の仕事や家族の世話などをしている。みんな疲れていると思う。そんな時に、こちらの記事を読むのが良いと思います。

最後には、些細なことかもしれませんが、ホワイトハウスへの道のりの道路に大きく「BLACK LIVES MATTER」と記載が入り、それは上空からも見える様になっているので、その写真だけ貼らせていただきます。

画像23

引用:Reddit

Black Lives Matter.

P.S.

この記事を書いていたのは6月6日の夜中でした。書くと決めて色々調べ、ここまで書くまで自分自身ネガティブな話だけしか考えず、記事も自分のフラストレーションだけの発言して終わるところ、その日リリースされた曲を聴いて、もっとポジティブな気持ちで終わらせようと思いました。

その曲は、ONE OK ROCKのTakaさんと清水翔太さんをはじめ、合計8人のアーティストが集まって2ヶ月ほどかけて作り上げた曲です。歌詞がかなり胸に刺さり、「誰かのせいだけにしても無駄だ、これからみんなの力を一緒にして世の中を変えていかないと」と思えました。[ re: ]プロジェクトのアーティストの皆さん、インスピレーションを与えてくださり、ありがとうございます。

ポッドキャストもおすすめです

Off Topicでは、米国を中心に最新テックニュースやスタートアップ、ビジネス情報をゆるーく深堀りしながらご紹介する番組です。

Spotifyからも聞くことができます。

Written by Tetsuro (@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikirepo)

引用:

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/10402659.2016.1166720?mod=article_inline&
https://www.latimes.com/world-nation/story/2020-06-02/la-na-police-response-protesters
https://scholarship.law.upenn.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1207&context=jlasc&mod=article_inline
https://www.afpbb.com/articles/-/3132419
https://harvardlawreview.org/2015/04/law-enforcements-warrior-problem/
https://www.washingtonpost.com/news/the-watch/wp/2017/02/14/a-day-with-killology-police-trainer-dave-grossman/
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/2053168017712885?mod=article_inline&
https://www.vox.com/2016/7/7/12118906/police-training-mediation
https://www.pbs.org/independentlens/content/the-rise-of-swat-sources/
https://www.thedrive.com/the-war-zone/33802/military-helicopters-descend-on-washington-in-bizarre-very-low-altitude-show-of-force
http://www.bu.edu/bulawreview/files/2020/05/09-HERD.pdf?mod=article_inline
https://www.gq.com/story/what-is-kettling
https://www.refinery29.com/en-us/2020/06/9853543/what-is-kettling-police-protests
https://www.princeton.edu/news/2018/08/21/militarization-police-fails-enhance-safety-may-harm-police-reputation
https://www.marketwatch.com/story/ex-cop-militarization-of-local-police-leads-to-more-law-enforcement-violence-against-citizens-2020-06-02
https://theconversation.com/militarization-has-fostered-a-policing-culture-that-sets-up-protesters-as-the-enemy-139727
https://www.insider.com/george-floyd-protests-police-violence-reform-change-2020-6
http://www.postbourgie.com/2013/08/14/the-military-mindset-behind-stop-frisk/
https://isps.yale.edu/news/blog/2014/09/do-alternatives-to-police-militarization-exist

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