過小評価された人材を見つけだせ。ピーター・ティールの採用アプローチ【Off Topic Ep208】
宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するポッドキャスト『Off Topic』。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。
今回は「#208 PayPalマフィアから学ぶスタートアップの人材発掘」のなかから、過小評価された人材を見出す、ピーター・ティールの採用アプローチについて。「PayPalマフィア」を多数輩出する彼の独自の手法から、これからの「より良い採用」のヒントを考える。
経験よりも大切なこと
限られたリソースの中で成功を目指すスタートアップにとって、人材発掘は最重要課題のひとつであり、初期の採用においては非常に時間をかける企業は非常に多い。
例えば、Airbnbは最初のエンジニアの採用に5ヶ月、ストライプは最初の5人の採用に2年間を費やした。イーロン・マスクも、スペースXの初期においては、清掃員も含めて少なくとも1000人以上のインタビューを自ら行っていたことで知られる。日本と異なり、従業員を解雇しやすい文化であるにも関わらず、これだけ慎重に採用を進めていることは興味深い。
では、良い人材とはどう見つけるのか。「PayPalマフィア」と呼ばれるほどに多くの人材輩出したPayPalや、パランティア、ベンチャーキャピタルのファウンダーズファンドなどを生み出してきたピーターティールは、人材の見つけ出すという点においても世界一の能力を有した人物といえる。
彼が突出しているのは、過小評価された人材を見つけ出す能力だ。彼は、既に知られている才能ではなく、いまだ知られていない、埋もれている才能を掘り起こすことがスタートアップの一番の仕事だと語っている。
既に評価を得ている才能は、よほどビジョンが合わない限りは、大手との獲得競争に勝つことは難しい。AI検索エンジンを開発する「Perplexity.AI(パープレキシティ)」は、あるGoogleのエンジニアを引き抜くために既存の報酬と保有株もふくめたインセンティブ以上のオファーを出した。しかし結果的には、それを聞きつけたGoogleが4倍の給料をオファーして同エンジニアを引き留めたという話がある。
PayPal時代、ピーター・ティールがもっていた基本的な考え方のひとつに、30歳以下を採用するというものがある。過小評価されるか否かを分ける基準のひとつは、データがあるかないかである。30歳以下の人材は基本的に経験が少ないことが多く、企業は評価することが難しい。特に委員会の合意によって採用を進め、特定の社員の独断で採用を押し切るケースの少ないアメリカの大企業の場合、より統一されたプロセスの中で採用することが求められるため、データが少ない、あるいは評価基準となるデータから外れた人材は非常に採用しにくい。
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