イノベーションは減速している? ピーター・ティールは“AIの時代”に何を思う【Off Topic Ep238】
宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するポッドキャスト「Off Topic」。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。
今回は「#238 ピーター・ティールが見ている世界」から、「イノベーションは減退しているのか?」について、ピーター・ティールの考えを参照しながら考えていく。PayPal、OpenAI、Palantirの共同創業者であり、Meta最初期投資家である、ピーター・ティール。今日のシリコンバレーに多大な影響を及ぼしている彼は、いま何を考えているのか?
AIの投資価値は? ピーター・ティールの回答
ピーター・ティールは、AIの投資に関して非常に慎重な姿勢を示しており、1999年のインターネットバブルと比較して話すことが多い。彼は、AIや大規模言語モデル(LLM)がインターネットと同等の重要性を持ち、業界を大きく変革し、新たな市場を生み出す可能性があると認識している。しかし、投資家としての観点からは、これが非常にトリッキーな分野であるとも感じている。彼の主張は、インターネットバブルとAIの現在の状況に多くの類似点があるというものだ。
ティールによれば、1999年のインターネットバブル期は、多くの人々がインターネットの可能性を最も理解していた時期でもあった。当時は、新しい経済圏であるインターネットが従来の経済を置き換えると確信されており、それは事実正しい予測であった。ただし、投資という観点では非常に難しく、どの企業に資金を投じるべきかが問題だった。例えば、1999年当時に最も正しく安全な投資先と考えられていたのはAmazonだった。インターネットコマースの先駆者であり、オンラインでの取引が注目を集めていたからだ。
当時の同社の株価は高騰しており、Amazonの株価は113ドルに達していた。ところが、株価は5ドル50セントまで下落しバブルが弾けたのは、その22か月後のことである。ピーター・ティールは、このような状況がAIにも似ていると考えている。つまり、AIに対する期待が非常に高く、バブル状態になっている現在、短期的な投資としては危険が伴う可能性があると彼は指摘している。
1999年にAmazonへ投資した場合、結果的に約40倍のリターンを得ることができたが、その過程で一時的に投資額の95%を失うことになった。さらに、元の株価に戻るまでには約10年を要し、実際に莫大な利益を得るまでには25年もの時間がかかった。AIも同様で、その未来は確実なものである一方で、投資が難しい状況である。彼はAIの未来に確信を持っているが、投資のタイミングとリスクを非常に慎重に考えているのだ。実際に、ティールが運営するファウンダーズファンドは、他のファンドと比較してAIへの目立った投資は行っていない。
シリコンバレーに決定的に足りないもの
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