【 現役Jクラブコーチにズバリ聞いてみた! ~育成年代で大切なのは「勝利」か「育成」か ~ 】
━━━━━━ 140字じゃ語れないことがある
そんな思いを持っている方々の、それでも140字に詰め込んだ思いや感情、価値観を深掘るOFF THE PITCHの企画「140字じゃ語れないことがある」。
現役Jクラブアカデミーコーチである金川幸司さんをお招きしています。
前回の記事では、「選手目線を忘れた指導者が陥ってしまう可能性があること」についてお話しいただきました。
今回は、「“勝利” か “育成” か」という指導者として一度は向き合う議題について金川さんにぶつけてみました。
指導観を考え直すキッカケになることでしょう!
ぜひお楽しみください!
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【 自分の指導を振り返る方法 】
◎後藤:
めちゃめちゃ脱線しちゃいました!
ツイートの話に戻します!
◉金川さん:
そうですね笑
戻りましょうか!
◎後藤:
「指導者は、選手の感覚を忘れてはならない」というテーマがありましたね。
この点で行くと、そここそ僕のような若い年代だと、まだ選手の頃の感覚が残っているのでなんとかやっていけているかと思っています。
ただ、これから何年何十年って指導者をやっていくとしたら、どうしてもその感覚が薄れていってしまうんじゃないかと思っていて・・・
◉金川さん:
そう思います。
歳を重ねるにつれてどうしても薄れていくと思います。
◎後藤:
改めての質問にはなりますが、選手の感覚を忘れないために、僕らができることって何がありそうですか?
◉金川さん:
日々のトレーニングを、自分が客観的に見れるようにしておくことですかね。
◎後藤:
「客観的にみる」ですか?
◉金川さん:
はい。
たとえば、自分のトレーニングのビデオを撮ってみることも一つだと思います。
録画した自分の指導を見ることで、「話が長いな」とか「声が小さいな」とか気づけたり、逆に「意外と選手は頷いてくれているな」とか「思ったよりも成長してくれているな」などの良い点にも気づくことができると思うんです。
これによって、少しは選手目線に立てることになると思うんです。
◎後藤:
なるほど!
自分の指導を客観的に見ることは、たしかにめちゃくちゃ自分の指導を見直すことができますね。
・・・とはいえ、中々自分の指導を録画するのって難しいな〜と…
そう言ってられないとはいえ、やっぱりどうしても恥ずかしいですし、、
◉金川さん:
そうは言ってられないとは思いますが!笑
ただ、その気持ちもわかります。
もちろん毎回ビデオに収めないにせよ、やっぱり常に自分自身に「これでいいのか?」っていう疑いをかけ続けることは本当に大事になると思います。
年齢が上がるにつれ、自分の価値観が凝り固まっていってしまうことは避けられません。歳を重ねると、フィードバックをしてくれる人がどんどん少なくなっていきます。
◎後藤:
たしかに。
徐々に、フィードバックを「する側」になっていきますもんね。
◉金川さん:
そうすると、気づかないうちに「裸の王様」になっちゃうと思うんです。
それはもう本当に自分の成長を妨げるし、何よりも選手の成長を妨げてしまいます。
◎後藤:
本当にそうですね。
今フィードバックを「もらう側」にいることって、幸せなことかもしれないですね。
そうなると、やっぱりおっしゃる通り「疑いをかけ続けること」が大切になるし、自分の指導を録画することは本当に有効になりますね。
やっぱり、録画してみようと思います。笑
◉金川さん:
ぜひ撮ってみてください!
いろんな気づきや学びがあると思いますよ。
【 “育成” のための “勝利” 、、!? 】
◎後藤:
話は変わりますが、育成年代の指導者である金川さんに、ある質問を投げかけたいなと思っていまして!
◉金川さん:
なんでしょうか?
◎後藤:
ズバリ、「“勝利” か “育成” か」という質問です。
これはもうあらゆるところで議論になっていると思いますし、いろんな考えがあると思うんですよね。
・勝利ではなく選手の成長が第一だ!
・何がなんでも勝つことこそがすべてだ!
というように、様々な考えがある中で、金川さんはどのようにお考えですか?
◉金川さん:
難しいですよね、この議論は。
もちろん、どの観点で考えるかによって答えも変わるでしょう。
育成年代をみている私の考えでは、「“勝利” か “育成” か」の観点では考えていません。
そうではなく、「より良く “育成” するために “勝利” が必要」というように考えています。
◎後藤:
おお!?
それは一体どういうことでしょうか??
◉金川さん:
あくまで私の視点ですが、勝利だけを目指して「勝ってはいるけど、選手は成長していない」ということは指導者が起こしてしまいがちなことかなと思います。
◎後藤:
たしかに、そういったチームは結構頻繁に見かける気がします…
中学生時代はチームは勝っていたけど、高校年代に上がると個々でみたら全然良い選手ではないみたいな。
・・・でも、これって別の観点もあるのかなと最近思ってまして。
◉金川さん:
なんでしょうか?
ぜひ聞かせてください!
◎後藤:
以前のOFF THE PITCHのインタビューでも上がった話題なんですが、「大事な試合や大きな大会では、指導者として “勝利” を目指すことも大事なのでは?」ということです。
僕自身ジュニアユースをみていると、練習試合では後ろからビルドアップしたりとトライしていたチームが、いざ大会になるとボンボン蹴って「とにかく勝利!」みたいなサッカーをしてくるチームが結構あるんですよね。
一方で、大事な大会でも普段通りのサッカーを貫いた結果、上位まで行けずにあっさり負けてしまって、選手たちがわんわん泣いているという光景も見かけます。
たしかに「結果がすべてではない」とは言うものの、「勝つ経験」も同じくらい育成に大事だと思うんですが、いかがでしょうか??
◉金川さん:
おもしろい事例ですね!
私は、それこそがまさにさっき述べた「より良く “育成” するために “勝利” が必要」であると思っています。
◎後藤:
そこに繋がるんですか!?
◉金川さん:
より良く育成するためにやっていることが、時には勝利に結びつかないこともあるかもしれません。
もしそれで全く勝つことができないのであれば、それは選手は自信を失うし、指導者として信頼も失くすと思います。
だからこそ、勝利することが大事なのだと。
勝利をすることで、選手たちは「成功体験」を積むことができます。
それによって、普段トレーニングしていること(育成の観点)が、試合に勝つという成功体験(勝利の観点)によって、より習得されていくのだと思っています。
だから、「より良く “育成” するために “勝利” が必要」であり、言い換えれば「やるべきことをちゃんと身につけた上で、その中で勝利する」ということなんじゃないかなと。
◎後藤:
なるほど!!
手段を選ばずに勝利を追求するのでも、勝利は度外視して育成だけに目を向けるのでもなく、「より良い育成のために、どういう手段で勝利するのか」の視点が大事ってことでしょうか?
◉金川さん:
そのように思っています!
ただ、もちろんこれは今の私の考えなので、もっともっと深めて学び続けていきたいなと思っています。
◎後藤:
物凄く考えが深まりました!
「指導者は学び続けることが大事」ってよく言われる中で、こうやって議論することでより一層感じることができました。
インタビューは、以上で終了とさせていただきます。
金川さん、ありがとうございました!
◉金川さん:
こちらこそ、ありがとうございました!!
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