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ボブディラン!10枚の入門アルバム。

映画『名もなき者』の公開もあって、ボブ・ディランへの関心が高まっている。

映画は65年くらいまでのディランに焦点を当てていた。フォークの神様としてのディランが語られるのは当然だが、正直、自分はフォーク時代のディランにはそこまでハマらなかった。90年代のグランジ以降のロックを通ってきた耳には、アコギ1本でボソボソ歌うスタイルがどうにも退屈に感じられた。それでも大学時代、周りのディラン好きに影響されて聴き込むようになった。特にみうらじゅん氏が選曲したディランのベスト盤を聴いたとき、「ディランがロック」の衝撃にやられた。「ライク・ア・ローリング・ストーン」のオルガンの音、音の塊が転がるようなカタルシス、ロック的なダイナミズム。フォークじゃないディランにようやく本格的にハマった。

ディランのアルバムを10枚選ぶなら、まず60年代半ば以降のロック・ディラン、70年代中期のローリングサンダーレビュー期、80~90年代のダニエル・ラノワ・プロデュース作品、そしていくつかのライブ盤を押さえたい。

Bringing It All Back Home (’65)

「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」収録。ラップ的な語り口とビートが完全にロックしている。ディランがフォークから脱却しつつあることを示した重要作。

Highway 61 Revisited (’65)

ディランが完全にロックへと舵を切った名盤。「ライク・ア・ローリング・ストーン」だけでなく、「トゥームストーン・ブルース」や「ジャスト・ライク・トム・サムズ・ブルース」「痩せっぽちのバラード」など、名曲だらけ。マイク・ブルームフィールドのガレージ感のあるギターも最高。

Blonde on Blonde (’66)

言うまでもなく、ロック・ディランの最高傑作。サイケデリックな音作り、奔放な歌詞、2枚組のボリューム感、最高だ。メンフィス・ブルース・アゲインやsooner or laterなど、曲単位での完成度もめちゃくちゃ高い。

ディラン最高のストーリーテリング・アルバム。ダイナミックなバンド演奏と、過去の恋愛を振り返るような歌詞が特徴的。スヌーザーのキャッチフレーズだった「ブルーにこんがらがって」は特に名曲。

Desire (’76)

「Hurricane」収録。ジャイロ・ジプシー的なアレンジが特徴的。バイオリンの音が独特で、いつものDylanとは違う雰囲気を持っている。

Oh Mercy (’89)

ダニエル・ラノワ・プロデュースの傑作。ディランの80年代は低迷期だったが、末期に完全復活。音響的なアプローチとディランの枯れた声が見事に融合。

Time Out of Mind (’97)

同じくLanoisプロデュース。深みのある音作りで、爺時代の傑作。オルタナ以降のサウンドとディランの歌声がドンピシャ。この路線でもう少しやってほしかった。

『ブートレッグ・シリーズ Vol.6: フィルハーモニック・ホール 1964』

フォーク時代のアコースティックライブとして最も優れた1枚。「時代は変わる」「ミスター・タンブリン・マン」など、フォーク・ディランの魅力をオリジナルアルバム以上にしっかりと伝える。

『ブートレッグ・シリーズ Vol.4: ロイヤル・アルバート・ホール』

1966年の伝説的ライブ。フォークセットの静けさから、バンドセットの爆発的なエネルギーへの流れが劇的。バンドの音が有機体のようで迫力がある。「ユダ!」のヤジと、それに対する「アイ・ドント・ビリーヴ・ユー」が鳥肌モノ。これこそロックだ。

『ブートレッグ・シリーズ Vol.5: ローリング・サンダー・レビュー』

1975年のツアー音源。豪華メンバーによるテンションの高い演奏とディランの熱い歌い方が魅力的。ツアーは赤字だったがロック純度が高くめちゃくちゃかっこいいライブだ。「ディランがロック」の最高峰。

ディランの作品は膨大だが、まずはこの10枚を聴けばディランの進化の軌跡が掴める。そこからさらに掘り下げるなら、『プラネット・ウェイブス』や『ストリート・リーガル』あたりもおすすめ。ディランの音楽は時代ごとにスタイルを変え、評価も変わる。潜るとどの時期にもならではの面白さがある。映画をきっかけに、もう一度じっくりディランを聴き直してみるのありかと。俺は苦手なフォーク時代に再チャレンジしてみようかな。


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