Greek FreakがFinalsに行くよ
今から5年前にタイムスリップして過去の自分に何か一つ、「真実のみ」語れるとしたら何を話す?
次の試験の出題範囲?
芸能界を騒がせる一大スキャンダル?
今、付き合ってる恋人との顛末?
俺なら、そうだな、一通り話した後の帰り際に、付け足すくらいでこう言うと思う。
「そういえば、2021年のFinalsはBucksが行くよ」
過去の俺は驚いて、多分喜ぶだろう。
おお、やはりグレッグ・モンローの獲得は正解だったか!
MCWも途中加入の昨シーズンは微妙だったけど、新人王は伊達じゃないからな!
あとは?メイヨが復活した?
ラリー・サンダースとか元気にやってる?
そんで、やっぱりエースはギアニスか?もしかしてミドルトン?
まだヤニス・アデトクンポのことを「ギアニス」と呼んでいるところが時代を感じさせる(当初、日本語媒体の多くはローマ字読みの「ギアニス」という表記を多用していた)。
残念ながら今あげたメンバーで、BucksがFinalsに進出する2021年までチームにとどまり続けたのはヤニスとミドルトンしかいない。そもそもNBAでプレイしているのがMCWこと、藤○・ニ○ルとブラ○アンの融合こと、マイケル・カーター・ウィリアムズしかいない。
BucksはのちにGreek Freak(ギリシャの怪物)と呼ばれるヤニス・アデトクンポを2013年のドラフト1順目15位で手に入れた。恐ろしいほどの素材型。当たればダイヤモンド、外れれば銑鉄。そんな指名だったと思う。
ガリガリでヒョロヒョロのヤニスは77試合に出場。最後の方はスタートを任されてたきがする。そんなルーキーイヤーにチームは15勝しかできなかった。ちょうど世界がレブロン・ジェームスとティム・ダンカンの世代を超えた対決に夢中になっている裏の世界での出来事。
たしか、このシーズンにレジー・エバンスが試合中にヤニスに年齢を聞いて驚くシーンがあった気がする。さすがレジー・エバンス。先見の明がある。
2年目にジェイソン・キッドがHCに就任すると211cmのPGとしてトリプルダブルを記録するなど「磨けば銀くらいになるのか?」と思わせる活躍を見せた。当時はトリプルダブルなんて複数回達成したらすごかったんだよ。トリプルダブルのインフレ。
ちなみにこのシーズンにダンクコンテストに出場するけど、そんなに思い出に残ってない。この年のダンクコンテストで世界にその名を知らしめたのはザック・ラビーンの方だった。
キッドHCのBucksはジャレッド・ダドリー、ザザ・パチュリア、ベイレス、イリヤソバなんかのベテランとブランドン・ナイト、そのおまけでPistonsから来たミドルトン、ルーキーのジャバリ・パーカー(シーズン途中に大怪我で離脱)の若手たちで硬い守備を武器に粘り強く戦い、41勝41敗でPOに進出した。シーズン途中に「影の立役者」だったナイトをMCWとトレードしたのだけは謎だけど。
ヤニス初のPOはBullsにあまりいいとこ無しに負ける。いや、見せ場もあったけどヤニス自身は評価をあげたシーズンを最後に台無しにしてしまった。
シリーズの決したGame 6はPO史上最大点差での敗退(だった気がする)となる54点差をつけられた。
フラストレーションが溜まったのか、ヤニスは突然シュートしたマイク・ダンリービー・Jrにタックルをブチかまし一発退場。周りも突然の出来事に乱闘にさえならなかった。
なぜか話題にならなかったが、正直この時に俺は「ヤニスはだめだ」と思った。うん、確かに思った。
しかも次のシーズンはPistons(またか)から鳴り物入りで加入したグレッグ・モンローがうまく機能せず、POを逃す結果に終わる。GSWを倒したのが唯一のハイライトか?「才能はすごいけど、精神的に未熟じゃあね。しかもエースを任される立場だろ?」
そんな、俺の安直な見立てを覆し続けるストーリーは、あとは皆さん知ってるね。
気づけばビルドアップされた筋骨隆々の肉体と絶対にゴール下まで突進する愚直さ、DPOYに選ばれるまでになった守備力。そして、最後の1秒までチームのために戦うメンタリティ。ついでのようにMVPは二年連続で受賞した。
いまや世界最高の選手と言って笑われることはないだろう。今シーズンは手負いだったとはいえkdを倒した。
そして、ついにFinalsに挑戦する。
もちろんヤニスだけじゃない。他のメンバーも抱えてるものや、乗り越えてきたものがある。
ミドルトン。ヤニスを助けるなんて言わないで、お前が決めに行くつもりでね。Pistonsにいても腐らせるだけだったと思うからさ。頑張れよ。
ロペスの兄さん。俺はNetsからトレードされた時本当に悲しかったよ。Netsにリベンジは果たしたから、あとはリングだけだね。それから、まだ西武のキャップ使ってるの?送ろっか?
ホリデー。やっと「注目」されたな。俺は76ersにいた頃から好きだけど。今までの過小評価を見返してやれ。
タッカー。キング・オブ・スニーカー。ついにFinalsだな。ヨーロッパでエースしてた頃からは想像つかないかも知れないけど。どんなシューズ履くのか楽しみにしてるよ。
ポーティス。やればできんじゃん!!もう喧嘩するんじゃないぞ。その熱意はコートでな。
カナートン。デビチェンゾの分まで頑張れよ。ガッツと意外なスラムダンク楽しみにしてるよ。
フォーブスも、シューティングが大切なシリーズになるぞ。持ち前の「強気」でな。
ティーグはやっぱりブーデンフォルツァーHCが合うみたいだな。Game 6で突然活躍して驚いたよ。
タナシス。ヤニス以上に熱苦しくて、弟思いの兄貴。試合だけじゃなくて、Bucksの元気印に期待しているよ。
ディビチェンゾ。怪我は残念だったけど、ベンチで声を出してる姿を俺は見てるよ。これに勝てばNCAAタイトルに続いての「全米制覇」だな。
ブーデンフォルツァーHCはやっと「真の勝者」になれるチャンスを掴んだな。相手はレブロンを倒したSunsだ。ドラマチックだろ?
ヤニス。
ギリシャから来た19歳の子どもが、ドラフト直前まで国籍さえ持っていなかった移民の少年が、NBA入りしてからジェイソン・キッドのことを知った青年が、Greek Freakと呼ばれた男が、Finalsに行く。
ごめんよ、ヤニス。俺の見込み違いだ。存分に楽しむんだよ。一生に一度の大舞台かも知れないからね。相手は「Point God」と、君も尊敬するコービーの遺したレガシーを受け継ぐ一人だよ。
最高じゃない?
俺が過去の自分にこれから始まるヤニスとBucksの快進撃の全てを話すのは楽しみを奪うようで申し訳ないから、手短にまとめるだろう。
ヤニスは彼自身の戦いに挑戦する。もし、今、未来から俺が来てもこの結末は聞きたくないな。ヤニスとともに精神が焦げ付くほどに、一つのポゼッションに一喜一憂し、最後の1秒まで諦められない。そんなゲームを楽しみたいからさ。
そろそろ時間だ。じゃあ、楽しんで。最後に一つ付け足しておくよ。
「2021年のドラフト、Pistonsが1位指名だよ」
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