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息抜きついでに理解するデベロッパーのビジネスモデル

デベロッパー業界


1. 概要


デベロッパーは街づくりのプロデューサーです。その業務の社会的意義は非常に高く、例えば東京の丸の内や六本木ヒルズは、大手デベロッパーが手がけて大成功した代表的な事例です。
一方、全てのプロジェクトが成功している訳ではなく、日本橋の再開発計画のように、事業に難航しているプロジェクトも存在します。

不動産業界の種類はおおままかに「土地の取得」「建築」「販売(貸出)」「管理」の4種類に分かれます。
デベロッパーの中には4種類すべてに関わる総合的な不動産企業もありますが、デベロッパーとしてのメインは「土地の取得」「建築」「販売」です。
ただ、デベロッパーと言えど一介の不動産会社であることには変わらず、大規模な宅地造成やリゾート開発、再開発事業、オフィスビルの建設やマンション分譲といった事業の場合は、一般的な不動産会社と似たような業務をします。



2. 具体的な仕事内容


では、デベロッパーは具体的にどのような業務を行うのでしょうか?
基本的にデベロッパーは、街の開発プランを立案し、実際の建築のマネジメントを行い、開発地域のその後展開までの全体を統括するのが主な仕事内容となります。

まず最初に行うことは、プロジェクトの具体的なプランニングです。スケジュール・費用・収益性などを綿密に計画し、建築などを委託する下請け会社の選定を始めます。
プランが定まれば、ターゲット地域の各地主と交渉し、不動産の売却などを提案していきながら、目的の土地を確保する業務が始まります。
ターゲット地域には当然昔から住んでいる住人や事業者が存在しますので、時には泥臭い交渉を行うこともあります。

また、同時に銀行と契約して、資金調達を行います。場合によっては、資金調達のために、プロジェクト初期の段階から開発後の買主と交渉・開発地の入居者と交渉を始めます。また、豊洲の場合のように、電鉄会社とも協業する場合もあります。

余談 : 『本当は怖い湾岸エリア開発』


今や高級住宅街としてよく知られている豊洲エリア。しかし豊洲は高級住宅街であると同時に、地盤がゆるく自然災害に極めて脆弱な、危険な場所としても知られています。
豊洲エリアを高級住宅街としてブランディングしたのが、まさにここで解説しているデベロッパーです。
ららぽーとを開業し、ゆりかもめを豊洲まで延長し、芝浦工業大学を誘致し・・・
デベロッパーがありとあらゆる手段を用いて、土地の価値を上げ続けたことで、高級住宅街としてのブランディングに成功したのです。
一方で、豊洲の持つ土地としての致命的な欠点は、解消されていないままです。
皆さんはこの問題を、どのように考えるでしょうか?

本題に戻ります。
土地や資金の調達が終わると、今度は具体的な設計に入ります。設計屋とゼネコンが稼働して、実際に建築を行います。デベロッパーはゼネコンが企画通りに動くことを監視しつつ、建物に入るテナントを本格的に探します。

このテナントですが、お金を出せば入居できる訳ではないです。建物が高価である分、そのテナントのブランディングを意識して、入居するテナントを選定します。

ラーメン屋でも綺麗で建物の品質を落とさない店のみを入居させます。スタバとかエルメスみたいにランドマークに必須不可欠なブランドには、営業も行きます。

建築が終われば、資金状況によって、建築物の売却を始めます。また、入居者を集めます。また、町・エリアの価値を上げるための様々なプロジェクトを走らせます。

場合によって、有名な歌手を招待して講演・有名な人の講演・子供向けのイベントなど、町つくりのイメージに沿ったターゲットとする人々を誘致するため、マーケティング戦略を駆使します。土地やエリアの価値が認められ、適正な値段になれば、資金プランに応じて賃貸・運営に転じるか販売会社に販売を依頼します。


3. 事業領域&主要プレイヤー


デベロッパー(Developer)とは、マンションやビル、ときには街全体の不動産を開発する専門業者のことをいい、代表的な事業として以下の5つが挙げられます。
① 街の再開発事業
② リゾート開発
③ 大型商業ビルの開発
④ 大規模場な宅地造成(戸建て街の形成)
⑤ マンション開発

また、主要プレイヤーは以下の通りです。
① メーカー系(トヨタホーム、旭化成ホームズなど)
② 商社系(三菱、物産など)
③ 独立系(森ビル、イオンモールなど)
④ 財閥系(三井不動産、三菱地所、住友不動産など)
⑤ 私鉄系(東急不動産、京王不動産、小田急不動産など)
⑥ 金融系(野村不動産、ヒューリックなど)



4. ゼネコンとの違い


ゼネコン(General Contractor)とは、不動産建設の請負を主業とする会社のことを指します。デベロッパーは不動産の開発業者のことをいい、ゼネコンは実際の工事をすべて請け負う専門業者のことを指します。
平たく言うと、デベロッパーは企画で、ゼネコンは工事を担当する、ということです。

上記の流れで言うと、不動産会社(宅建業者)は、デベロッパーとゼネコンの専門業者が完成させた物件を顧客に売り込む販売専門業者といえます。つまり、私達の窓口となるのが、不動産会社なのです。
デベロッパーとゼネコンは、「一緒に目的の建物を完成させる」という点でつながっており、お互いに必要不可欠な協力関係ですが、一般的にはデベロッパーが事業を主導している発注側で、ゼネコンが受注する側という認識です。


5. 批判


ただ、私個人の意見ですがデベロッパーへの就職をあまりおすすめしません。
資金プラン策定・マーケティング・建築など、プロジェクトマネジメントを学ぶことはできますが、一方で専門性を身に付けられないリスクがあると思うからです。
資金調達などの金融知識であれば銀行に、建設関係の知識で言えば、ゼネコンに、マーケティングであれば広告代理店・コンサルティング会社に就職した方が、効率よく身に付きます。

また、事業の継続性についても少し疑問符が浮かびます。人口減少の傾向が著しい日本で、継続的に街づくりの案件を創出し続けるのはかなり難しいと考えます。

大きな企画がやりたいのであれば、総合商社に行きましょう。企画で直接手を動かしたいのであれば、コンサルにいきましょう。金融がしたいのであれば、銀行・証券会社にいきましょう。建築がやりたいのであれば、ゼネコンです。

6. デベロッパーの仕事内容


① 事業のスタートライン「素地取得」

まず開発事業のスタート地点となるのが「素地取得(開発のもとになる土地の取得)」です。
どんな土地開発でも、開発すべき土地がなければ事業は進みません。デベロッパーの社員は日々、不動産会社や商社・行政などと関係を作りながら、良い土地の情報を探しています。

土地の候補が見つかったら、簡易設計と見積の作成をして、事業の収支を計算。利益が上がる見込みがあれば、土地を取得して建築工事がスタートします。 行政が主導する街の再開発などの場合は、土地の取得には関わらず、設計や事業の管理責任者として委託を受けてプロジェクトに関わっていくこともあります。


② ゼネコンと協力する「建築(施工)管理」

建物の設計・デザインはデベロッパー社内で行うときもあれば、設計士に依頼したり、ゼネコン側に発注したりすると、方法は様々です。
いずれにせよ、建築工事はゼネコンに依頼することになりますが、デベロッパーは建築工事をゼネコンに依頼した後も、事業主として建物品質や工事の進行状況が契約通りに進んでいるかを管理しなければなりません。

なので、デベロッパー内には建築管理をする部門があり、建築工事を細かくチェックしています。 大手であればあるほど、自社内で設計・デザインなどのブランディングを行ってからゼネコンへ依頼しますが、規模の小さなデベロッパーほど細かく外部へ発注することが多いです。



③ 事業価値を査定する「マーケティング」

マーケティングとは、一般的に商品の市場調査や販売戦略を練ることですが、デベロッパーも開発する事業を入念にマーケティングします。マンションの販売価格はいくらに設定するか?商業施設にはどんなテナントを誘致するか?これらは、その建物の価値を最大化し、収益を得るための非常に大切な仕事です。

④ 大量の書類や手続きを管理する「法務・総務管理」

自分で住宅の賃貸・販売の契約した方は分かると思いますが、不動産業界では数多くの書類を取り扱います。デベロッパーが行う事業レベルになると、その数は膨大です。 例えば ・土地売買の契約 ・自治体や近隣住民との協議書 ・事業融資の契約 ・ゼネコンなど建築会社との契約 ・完成した建物の販売やテナント契約 などなど、ひとつの開発事業に対して、書類管理の専門部署がなければ事業は進みません。これらの書類は、事業の秘密保持や個人情報保護の観点から、外部への発注は難しく、自社内で管理する必要があります。


⑤ 開発したものを提供する「営業販売」

素地取得をしてから時間をかけて完成させた建物は、一般に提供してはじめてデベロッパーの利益になります。計画したマーケティング戦略をもとに、顧客へ営業販売をするのもデベロッパーの仕事です。 上記の工程は、大きな企業であれば自社内で完結しますが、小さな規模のデベロッパーになるほど外注することが多いです。



7. 会社別の特徴


① 三井不動産株式会社

デベロッパーのなかでもトップクラスの売上高を誇る三井不動産。「東京ミッドタウン」や「柏の葉スマートシティ」「三井のアウトレットパーク」など、積極的な新しい事業開発で業界をリードしている最大手企業です。業界最大手である三井不動産の最大の強みは、事業ポートフォリオのバランスの良さです。

三菱地所の丸の内エリアのような確固たる収益基盤がなかったからこそ、柏の葉スマートシティの開発・豊洲の再開発・日本橋再生計画・ららぽーとをはじめとする商業施設の運営など、多くの事業領域にわたり事業を積極的に展開をしてきた背景があり、街づくりに携わる実感を強く得られる点も、三井不動産ならではのメリットだといえるでしょう。

② 三菱地所株式会社

「丸の内の大家」と呼ばれる三菱地所は、全国主要都市に保有するビルなどの不動産から安定的な売り上げがあり、近年では海外事業に積極的な企業です。確固たる基盤をもとに、リゾートや再開発などの事業も行っています。三菱地所の強みは、日本最大のビジネス街「丸の内エリア」を手がけていることです。
ただ、丸の内頼りから脱却を計らっていて、住宅を除く不動産の開発・運営および関連する事業全般を担う組織「コマーシャル不動産事業グループ」を新設し、インドネシア・ジャカルタでの再開発プロジェクトやオフィス開発事業にも最近は力を入れています。

③ 住友不動産株式会社

新宿エリアをはじめとして、回収効率の良いビル事業で営業利益の高い住友不動産。新規開発よりは、ビルのリースやブランドマンションの販売が特徴的なデベロッパーです。
オフィスビル事業においては、230棟超(建設中含む)の保有棟数が都内No.1を誇ります。その地位をより確かなものにするために、東京都心の再開発に注力し、現在も数多くの開発プロジェクトを着実に進行しています。


④ 東急不動産ホールディングス株式会社

東京急行電鉄をもつ東急グループである東急不動産は、東横線や田園都市線が乗り入れる渋谷・銀座を開発エリアにもつデベロッパーです。有力な一等地を基盤にした都市開発を手掛けています。


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