同性婚の在留資格は?
ついこないだのニュースだけど、こんなタイトルの記事が出ていたことをご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
見たかんじでは、なんとなく同性婚の在留資格が認められるのかなって印象を受けますね。
どんな話なのか簡単に説明したいと思います。
今回はどんな流れ?
今回のケース、簡単に流れを確認したいと思います。
もともと米国籍の男性が日本人男性と結婚したことが事の始まりとなっています。
米国では同性婚が認められるため(原則すべての州で合法化されている)、この二人はそれぞれ「配偶者」としての立場になったわけです。
この米国人男性は、「投資・経営」という在留資格をお持ちだったそうです。
今でいう「経営・管理」の在留資格で、事業を経営又は管理する活動に与えられる在留資格です。
米国での結婚を機に、日本で在留資格変更許可申請という申請を入管に対して行うのですが、それが認められず今回2019年に提訴に踏み切ったという流れです。
変更を希望したのは、「定住者」や「特定活動」。
「特定活動」とは、期限や活動内容を指定されたもので、「定住者」に比べればその活動に制限がかかってしまう特徴があります。
今回、争点になっていたのは二つ。
・パートナーが日本人の場合に特定活動の在留資格が下りないのはおかしい!
・就労の制限のない「定住者」の在留資格が認められるかどうか?
今回の控訴審判決ではそれぞれについて
・「定住者」への変更が認められないことは、「著しく妥当性を欠くとは言えない」と棄却
・一方で「特定活動」では、パートナーが日本人である場合には一律に許可しないというのは「合理的な理由を見出すのは困難」として言及した。
という形の判決が出ることになりました。
定住者の要件は?
それではまず「定住者」について説明します。
定住者とは文字通り、日本に定住している外国人に与えられる在留資格です。
在留期限はありますが、就労に制限がないため、どのような仕事にも、どのような形であったとしても、そして勤務時間に制限がないことが特徴です。
永住許可と似ているところはあるのですが、永住とは違いあくまで在留期限があるということが注意点となっています。
定住者は、例えば日系3世だったり政策的に認められるものもありますし、日本人と結婚しており小さな子供がいる中、配偶者と死別若しくは離婚したため、与えられる場合など人道的なものもあり、かなりの幅広い範囲で与えられることがあります。
大まかに分けで「告示定住」と「告示外定住」があります。
簡単に言うと、類型に当てはまるのが「告示定住」、それ以外が「告示外定住」といったところでしょうか。
「告示定住」と「告示外定住」
一般的に想定される告示定住には、以下のようなものがあります。
・一定の国に滞在しているもので、日本での生活ができると判断されるもの及びその家族
・日本人の実子で素行が悪くないもの
・日本人の実子の実子で素行が悪くないもの
・定住者の配偶者
・日本人の子の配偶者で「日本人の配偶者等」の在留資格があるもの
・永住者などの未婚、未成年の実子
・日本人、永住者、定住者の6歳未満の養子
このように告示定住は、よくあるパターンを想定されて設定されています。
このような申請は多いということでしょう。
一方で告示外定住は、難民認定者や、離婚・死別定住、それに最近では日本で10年以上教育を受け(高校を卒業まで)その後も定住する家族滞在の人なんかも定住者にあたります。
幅広くケースに対応しているので、定住者としての資格をご希望の方はまず相談をされることをお勧めします。
今回の一番の争点は?
今回の控訴審では、上記の内容が争われました。
ただ、この米国人男性は2023年3月に「特定活動」の在留資格が与えられています。
ですので、今回一番の争点としては「より活動に制限のない定住者への変更が認められるか」というところですね。
残念ながら定住者への変更は認められなかったということなので、仕方ありませんが、この男性は特定活動で在留し続けるか、もしくは将来的に他の在留資格へ変更するかになると思います。
日本の制度では同性婚を法律的に認めていないという点が一番の問題点です。
それがいいのか悪いかは個人の判断ですが、世界的に同性婚を認めるケースが増えている中で日本も今後対応に迫られることは間違いありません。
仮に認められるようになった場合は、定住者以外でも例えば「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」など在留資格の門戸がかなり開かれることとなります。
今回のケースでは、新聞の見出しでは何となく前進のように見えますが、本人は「がっかりした」というコメントを残しています。
今までなかなか手が付かずにいた分野になると思いますので法改正など今後議論を深めていく必要があるでしょうね。