Q:日系人って就労制限がないってホント?
こんな質問がきてました。
「私の職場に日系ブラジル人の方がいるのですが、聞いたところ日系人には就労制限がないって言ってました。これって本当ですか?」
企業が外国人を雇用する時、一番気を付けなければならないのはその在留資格です。
外国人が日本で行うことができる活動内容は実は在留資格というもので定められています。一般的に在留資格のことを「ビザ」と呼ぶことが多いですが実は別のものなんです。
その話はまたいずれ触れたいと思います。
では今回のご質問にお答えします。
そもそも「日系人」ってどんな人?
ここで就労制限がないと言われている日系人とはどのような人のことを指すのでしょうか?
日本人と呼称しないので、日本人ではないことが分かると思うのですがイメージ祖先に日本人がいる、というイメージではないでしょうか。
「日系人」というとかつて日本から海外に移住した方の子孫であると考えて差し支えありません。
その大半はブラジルなどアメリカ大陸の諸国に居住していると言われています。
1990年6月に改正された入管法で対象になる「日系人」といえば、日系2世、3世のことであると考えて貰えればいいかと思います。
ちなみに日系4世の方の場合は、年間4千人までという受入れの数が決まっていたり、性風俗店や、スナックやパチンコ店などいわゆる「風俗営業」のお店で働くことはできませんので、就労制限がないということはありません。
日系人の来日の状況は?
日系人は現在なぜ日本にやってくるのでしょうか?
日系人が大半を占める在留ブラジル人の数を見てみましょう。
1990年に入管法が改正されたとき、在留ブラジル人は5万人程度でした。
それが1997年には17万人程度と実に3倍以上来日しています。
ピークを迎えるのはリーマンショック後の2007年、実に30万人を超えるブラジル人の方が日本に在留しています。
その後在留者数は減少して2022年では20万人程度の方が日本に在留しています。
こう見ると1990年の入管法の改正が、日本への渡航に大きな影響を与えたと考えることができます。
では、入管法改正でどのようなことが変わったのか見てみましょう。
日系人はなぜ1990年以降一気に増加した?
1990年の入管法改正は、先ほどにも述べた通り日本へ渡航する日系人の数を一気に増大させました。
その理由は、日系人に与えられる在留資格にありました。
1990年の入管法改正では、日系2世及び3世に「日本人の配偶者等」と「定住者」の在留資格が与えられることになりました。
この在留資格、実は就労を含め日本で行うことができる活動に制限がありません。
通常日本で在留する外国人は、それぞれの在留資格で規定された活動を主に行う必要があります。
例えば「留学」の在留資格を持っているなら学校に通うことが日本で行うことができる活動になります。
しかし、上記二つの在留資格の場合、活動に制限がありません。
ですので、日系人であることを理由に他の在留資格で認められていなかった活動を行うことができるというのは非常に大きなメリットであったと考えられます。
時に日本はまだまだ経済的に、日系人が多く暮らすアメリカ大陸の諸国よりも発展していました。
そのため日本に働きに来る日系人のことを「出稼ぎ日系人」などと呼称していたこともあったほどです。
ということで日系2世及び3世であれば就労制限はありません…って本当にそう?
実は就労制限がある場合もあるのです。
就労制限がある日系人とは?
日系人の方で「定住者」や「日本人の配偶者等」の在留資格を付与されていれば、上記のとおり就労制限はありません。
もちろん「永住者」などほかの就労制限のない在留資格をお持ちの場合もそうであると言えます。
しかしながら就労や活動の制限は上でも述べさせてもらった通り、外国人の身分ではなく在留資格の規定によって定められています。
例えば上の例でいえば、「留学」の在留資格の場合は、在留カードに「就労不可」ときっちりスタンプされちゃってます。
そう、働くことはできないのです。
(アルバイトで見かける留学生は「資格外活動許可」を取っているのですがこの話はまた別のところで)
在留資格で活動が規定されている以上、たとえ日系人であってもその規定に従わなければなりません。
ですので結論、
「日系人だからと言って必ず就労制限がないとは限らない」
が答えです。
それぞれの身分ではなくお持ちの在留資格によって活動は規定されます。
雇用主の方は日系人だからと言って安心して雇うのではなく、その方がお持ちの在留資格をきっちりと確認するようしっかり注意してくださいね。
どうしても不安な方は、入管手続専門の行政書士に相談することをお勧めします。
TikTokで簡単に「日系人の就労制限」についてお話しています。
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