簡単な簿記の知識(ご自分の事業の経理のために)⑥貸借対照表、損益計算書の見方について
さて、これまで簡単な簿記の知識ということで勘定科目や簿記の仕訳、貸借対照表、損益計算書について見て来ました。
「簡単な簿記の知識」というタイトルに「ご自分の事業の経理のために」というサブタイトルをつけております。
単純に税務申告のために嫌々帳面を付けるという方もいらっしゃるかと思いますが、前回の記事、「損益計算書について」で触れたとおり、会計の目的によって所得が違うことがあります。
前回の例では法人の税務上の所得の計算のために調整する項目が存在することをお示ししました。
個人事業でも同様に必要経費にならないものがあったりします。
しかし、本来は事業の状況を把握するために記帳するのですから、企業会計がメインでそれを税務申告用に調整したものが税務会計ということになります。
そこで今回は事業の状況を把握するために貸借対照表と損益計算書をどのように活用するか。どういう見方をするかについて書きたいと思います。
ちょっとした税務上のお得情報。裏話もお伝えします。
貸借対照表と損益計算書については、簿記の基本の勘定科目についてでご紹介しておりますが、詳しく見てまいりましょう。
貸借対照表、損益計算書に示される数値を基にして経営分析の指針とする経営指標と呼ばれるものがあります。
それぞれの詳しい説明は割愛させていただきますが、昨今のことですからググっていただくと説明されていますのでそちらをご参照いただければと思います。
先ず、簡単に見ていきましょう。
貸借対照表を並べてみました。
イメージとして捉えてみてください。
比較したい期(事業に関する一定期間=ほぼほぼ事業年度一年間)を並べてみた時、色分けしてあるように事業規模としての合計数値は変わったとしても資産、負債、資本のそれぞれの合計数値に対する構成比で色分けしてみてください。(この例では合計数値に変動はなかったことにしております)
図をご覧いただくと、左側の資産の部合計700円、その内当座資産である現預金は200円、流動資産である売掛金は500円。対する負債の部は100円、資本金500円、当期利益が100円となっております。
当座比率とか流動比率とかいう経営指標がございます。
ChatGPTによると
当座比率(Quick Ratio)と流動比率(Current Ratio)は、企業の財務健全性を評価するための指標です。
当座比率(Quick Ratio):
当座比率は、企業が即座に支払い可能な流動資産のみを考慮した比率です。通常、流動資産から在庫を除いたものを用います。
当座比率 = (現金及び現金同等物 + 短期投資 + 売掛金) / 短期負債
在庫は時価というよりも市場価値が変動しやすく、即時に現金化できないことがあるため、在庫を含まないことが当座比率の特徴です。この比率が1より大きいほど、企業が支払いに対して十分な資金を持っていることを示します。
流動比率(Current Ratio):
流動比率は、企業が支払い可能な流動資産全体(在庫を含む)を考慮した比率です。
流動比率 = 流動資産 / 流動負債
在庫を含むため、より広範囲な資産を考慮することから、当座比率よりも一般的には高い値になります。一般的に、この比率が1以上であれば、企業は短期的な支払いに対して充分な資金を持っているとされます。
これらの比率は、企業の財務安定性と支払い能力を判断するための重要な指標ですが、単体ではなく業種や企業の特性によっても評価は異なるため、他の財務指標やコンテキストと併せて分析することが重要です。
と書かれています。お分かりですか?
この指標はいくらの数値が適正なのか?各企業のこの指標の数値の平均値はどこにあるのか?
そうした比較をしてみようというのが、「中小企業の経営指標」とか、「小規模事業の経営指標」とかいう資料として発表されています。
当社の状況はどうなのか?と判断材料にしようと思った場合、この経営指標の平均値とか、モード値をいつも覚えていなければ役に立たないか。といえばそうでもないとわたしは思っております。
ですから、「個々の細かい経営指標については割愛します。」と先ほど申しました。
他企業との平均値、モード値と比較してもそれは相対的なものであり、本当に適正な判断につながるかといえばそうとも限りません。あくまでも判断材料の一つでしかないはずです。
話が脱線しましたが、先ほどの当座比率、流動比率の話に戻りましょう。
ChatGPTが教えてくれておりましたが、当座比率で比較しているのは当座資産と流動負債(現金、預金と短期に支払わなければいけない負債)です。
それでは、流動比率で比較しているのは?
流動資産と流動負債です。当座資産と流動資産ってどう違うのでしょうか。
当座資産は先ほどお示ししましたが現金・預金です。流動資産は、その当座資産に売掛金とか受取手形、有価証券、棚卸資産などが含まれてきます。
貸借対照表の比較図をご覧いただくと、左側の貸借対照表の資産の部の当座資産と流動資産について色を塗ってみました(流動資産には当座資産も含まれます。)そして左側の貸借対照表の負債の部は100円ですから当座資産の半分。色分けもそんなイメージで色分けしました。考え方は以下のとおりです。
当面支払わなければいけない負債100円を今すぐ支払っても当座資産は半分残りますから大丈夫(^^)
さて、右側の貸借対照表はどうでしょうか。
資産の部の当座資産100円、流動資産500円の金額は変わっておりませんが、負債資本の部の買掛金は100円ですが、短期借入金が700円となり流動負債は800円です。イメージとして塗りつぶした当座資産、流動資産、流動負債の塗分けた色の面積を見てみてください。
左の貸借対照表同様に、文字で書くと現預金は200円しかありません。売掛金を回収してきても合わせて700円にしかなりません。支払わなければいけない流動負債は800円あります。
ということは、「負債を弁済することができない。」ということです。この状態はいわゆる債務超過の状態ですね。
資産よりも負債の方が大きいわけです。さて、どうやって支払いますか?資産より負債が大きいということは資産を売却しても払えないということです。この事態は深刻ですねぇ。このような状態になったらどうしましょう?
シンプルに考えると、
①支払いを抑えて「入る」を計る。(とりあえず、支払いを猶予していただく)、
②その間に利益を上げて、資産を増やす。(ただし、このケースには損益計算書の利益率が、どれだけの利益を確保できるのかが大事なファクターです。ひとつ前の記事を再度読んでみてください。営業を続ければ続けるほど赤字が生まれるなんていう状態ではどうにもなりません。)なかなか難しい、現実味の乏しい改善策だとは思います。
③事業を評価する資本家に出資してもらい増資する。(増資ができれば、余剰の資金が生まれ、負債の率が低下しますね。)
債務超過を放置していると倒産の憂き目に遭います。
それから、貸借対照表と損益計算書の関係で注意しなければいけない点がございます。
皆さんは「黒字倒産」という言葉を聞かれたことがおありですか?
「黒字(利益)が出ているのに倒産???意味が分からない。」という方多いのではないでしょうか。
「黒字倒産」ってどのような状況なのでしょうか?
この貸借対照表を見てください。
当期利益は100円計上されています。買掛金100円、未払金200円合わせて300円ですから当座比率は1より低いけれども流動比率では1より大きいので安全であるとは言えます。
が、
これで倒産することもあるのです。
皆さんは支払いサイトという言葉を聞かれたことはございますか?買掛サイトとか、売掛サイトとか…
ここでいうサイトとはインターネットのサイトのことではなく、期間のことを言います。買掛金の支払うタイミング、待ってもらえる期間と、売掛金を現金化できる、回収できる期間と考えてみてください。
例えば、売掛金の回収する期間(現金化できる期間)が2か月だったとしましょうか。逆に買掛金、未払金の支払いを今月しなければいけないとすると…
手持ちの現預金は200円ですから、買掛金100円と未払金200円を合わせた300円は支払えなくなるのです。
例えば、上の貸借対照表を見てください。負債の部が買掛金100円、支払手形100円、未払金100円で合計300円の負債となっております。最近では手形取引をされていないケースもあるかもしれませんが、仮に支払手形を切っていて期日が今月末だったとします。売掛金は来月でないと入金されません。そうすれば支払手形は不渡手形となり、2回目だと、銀行取引停止になります。となりますと、資金繰りのための借り入れもできないということです。
よく言われた「不渡を2回出して倒産した。」というのはこういうこともあるわけです。
ですから、損益計算書上で利益が出ていても、資金繰りが苦しいことはあるわけです。
個人の生活シーンを見ても、最近はキャッシュレスの時代ですから、クレカ決済されいらっしゃる方も多いと思います。
クレジットカードの決済日は毎月20日、給与の振込日は25日だったら、預金残高がなければ決済できないこととなり、取引は停止しますよね。
つまり、気を付けなければいけないのは「入り」と「出」のタイミングなんです。事業経営されていらっしゃる方はお気を付けください。
それから、最初の方で書きました「税務上のお得情報、裏話」について情報を提供いたしましょう。
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