ASD、ADHDでは死亡リスクが増すのだろうか?
発達障害の精神疾患の合併率など、大規模な予後調査が行われるようになりました。発症リスクを知ることで、予防的な介入を行うことができ、二次障害の増悪を防ぐことは大切です。
先日は、未診断の自閉スペクトラム症(ASD)の自死に関するリスク研究(通常の約11倍というハイリスクという結果でした)について書きました。今回紹介する論文は、ASD、注意欠如・多動症(ADHD)で死亡リスクは増加するかを検討したものです。
カナダのオタワ病院研究所が発表した研究は、ASDとADHDの患者における死亡リスクについてです。既研究報告27本、642,260例のシステマチック・レビューを行い、メタ解析をしています(2022年、JAMA Pediatr)。
原因を問わない死亡率(全死亡率)は、一般人口と比較して、ASDの人(対象者154238人)でリスク比が2.37(95%CI、1.97-2.85)と有意に高く、研究間の異質性検定89%、ADHDの人(対象者396488人)もリスク比が2.13;(95%CI、1.13-4.02)、 研究間の異質性検定98%)優位に高い結果でした。
死因別での解析では、ASDの人は自然死でリスク比3.80、非自然死でリスク比2.50でした。ADHDの人は自然死でリスク比は有意に増加しませんでしたが、非自然死はリスク比が2.81でした。つまり、ASD、ADHDは両方とも死亡リスクが大幅に上昇し、ASDにおいては自然死・非自然死問わず上昇し、ADHDは非自然死のみで上昇を示したということになります。
本研究では、採用した研究間の異質性が高いため、結果の解釈には慎重になる必要があります。しかし、ASD、ADHDは死亡リスクが上昇する可能性は充分示唆しているでしょう。発達障害自体は変えることは難しいと思われますが、発達障害と有害な健康事象との関連メカニズムを解明することが、健康増進につながるのではないでしょうか。特に、リスクの高い子ども達において予防対策を実施していくことが大切になるのではないかと思います。