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自閉スペクトラム症の有病率は、今後も上がり続ける。
アメリカの疾病管理予防センター(CDC)は、「自閉症と発達障害の評価ネットワーク(ADDM)」を活用して、自閉症の追跡調査を始めたのは2000年のことです。この調査には、医療記録と学習記録が利用されていますが、初期調査では自閉症児は約150人に1人でしたが、その後、有病率は毎年上がり続けています。
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アメリカ精神医学会のDSM-4という診断基準に、知的障害を含まないアスペルガー症候群が加えられていますから、以前は2000人に1人とされていた自閉症は、調査開始時には約13倍に増加していたことになります。
最近、報告されたレポートによると、2018年のアメリカにおける自閉スペクトラム症(ASD)は、8歳の子ども達の44人に1人の割合と推定されました。ASDは、約20年で3倍に増加したということになります。
このプロジェクトは、調査の進んでいる11州でASDの子ども達5058名を含む、220281人の子ども達のプロフィールを調査していますので、信頼性は非常に高いです。
ASDの男児と女児の比は4.2:1であり、診断の中央値は36か月から63か月の範囲でした。有病率は最も低かったミズーリ州では1.7%、高いカリフォルニア州では3.9%でした。このようにASDの有病率は、地域によって異なりますが、人種や経済状態によっても差が出るようです。
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CDCレポートでの重要な知見は以下の通りです。今回の推定は、11歳で調査した8歳時の調査であるという限定があります。
男児は女児の約4倍の確率でASDである。
8歳の子ども達において、人種間の差異はあまりなかった(ただし、ヒスパニック系の子ども達に関しては多い地域があった)。
ASD児の約35%以上が知的障害をもっていた。
ミズーリ大学医学部臨床小児保健学のクリスティン・ソール教授は、ASDの有病率の上昇をは、この10年でのスクリーニングの改善と関係するとのコメントを出しています。これは、より多くの子ども達が早期に支援を受けるようになったことを示しています。米国自閉症協会は、ASDの有病率が継続的に上昇していることに関して、何の不思議はないとしています。
地域別では、ニュージャージー州の調査が注目に値するでしょうか。ラトガーズ・ニュージャージー医科大学のプロジェクトチームがAutism Researchに発表した短報には、ニュージャージーのある公立学区では、約7.3%の有病率であり、最大の学区であるニューアークでは約5%でした。男子での有病率は約10%という高値になります。日本の発達支援の先進地でもこのような傾向はあり,ASDの早期発見と支援は地域格差が大きいのですね。
有病率に注目すると、ASDは特別に珍しい障害と考えるのは無理があります。ごく一般的に存在して、理解すべき特性や状況といえるでしょう。ちなみに、文科省の平成30年度学校保健調査では、「裸眼視力 1.0 未満の者」の割合は,幼稚園 26.68%,小学校34.10%です。近視は早く発見し,進行を予防し,適した眼鏡やコンタクトレンズを使用したり,教室内で配慮されるのは当然のことです。ASDもその発達特性や発達過程が広く理解され,住み慣れた地域で当たり前の支援を受けられることが期待されます。
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