家族に乾杯
カンパ〜い!
成人式を終えたばかりの息子と夫と娘の4人で。
「やっと家族全員お酒を飲める年齢になったね」
姉貴ぶって娘がいう。
「これまでより、これからが人生 本番。」
夫がひとこと。
ナッツやチーズをつまみつつ、ビールが5本空いた頃
息子が話し始めた。
「確かにこれからの人生も辛いことがまってるかもしれん。」
「でもね、あの頃には絶対戻りたくないくらい辛いこともあったよ」
初めて聞く、息子の弱音。本音。
お酒の力がないと話せないこともあるよね。
高校時代の寮での出来事を具体的に、少しずつ話し始めた。
「いじめ」などとは縁遠い、明るい人気者だと思っていたし、今もそう信じているが彼の口から出てきたストーリーは親として信じられないことばかり。
寮があるのは彼が尊敬する剣道の指導者がいる男子校だった。
高校1年のゴールデンウィークに久々に帰省した息子にたっぷり美味しい家庭の味を御馳走し、新しい竹刀も買ってやり、次は夏休みだね・・と送り出すときの
彼とのやりとりを思い出した。
「もう、こっちには帰ってこないかも。」
「ん?なんで」
「だって寮に戻りたくなくなるから・・・」
そう言った息子に私はこう伝えた。
「お母さんはそこに行ってくれと頼んだ覚えもないし、自分が選んだ道だよね」
あのとき、「意地でも寮を出たいなんて言うもんか、って意地になって、でも
そのおかげで3年間耐えられたような気がする」そう言って初めて彼は泣いた。
無事 二十歳を迎え、進む道も決まり、嬉しい乾杯の夜に彼が見せた涙は
胸が締めつけられるものだったが、話してくれたことを内心 悦んでもいた。
打ち明けられる家族がいて、帰る家があることの幸せを
今 彼はかみしめているのだろう。
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