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My Friend In Vietnam
ホアは同じグループのメンバーだ。年齢は24だったはず。まだ若い。
ホアは全く日本語が話せない。僕もベトナム語は話せない。
ホハは僕のことを「ダー」と呼ぶ。「サカイダ」が長くて呼びにくいらしい。因みに「ダー」はベトナム語で「氷」だ。「氷の男」「アイスマン」ぽくて僕はこの呼ばれ方を気に入ってる。
ホアはよく働く。働き者だ。そして、よく気が付く。しっかりしているいい男だ。
ホアは僕からみても細く、スタイルもよくて男前だ。
ホアは義理堅い。休憩時間にサトウキビのジュースをホアの分を出してやったら次の日は同じサトウキビジュースの店で僕が知らない間にホアが代金を支払っていた。
ホアは普段は無口だが悪戯っぽくよく笑う。
ホアは煙草を吸う。竹筒で水煙草をいつもやっている。たまに僕も誘われるので一緒にやる。きつすぎてくらっとくる僕の様子を見てにやりと笑う。
たまにホアに「おい、ホア」と言って煙草を勧めると、にやりと笑って僕の煙草を受け取る。
ホアは僕の煙草をよくせびる。たまに、僕の煙草を吸いたくて僕の胸ポケットをいきなりまさぐってくる。僕がおどろいて「なんだ?」というと「ナンダ?」といって笑う。
ある日、仕事で僕が持ち場から戻り、仕事の続きをしていたらホアがそばに寄ってきた。そして、自分が吸っていた真新しい煙草を僕の口にはさんできた。
疲れていた僕には最高のプレゼントだ。
僕は一口大きく吸い込み、ホアに「ありがとう」と日本語で言った。そして、それを返そうとした。
ホアは笑って「いい。それを吸え」とジェスチャーでいっているようだった。
僕は「いいのか?」と日本語でいうと、ホアは悪戯っぽく笑って胸ポケットから煙草とライターを出してきた。おいておいた僕のマルボロの箱とライターだった。
煙草の数がだいぶ減っている。
「なんだ、僕のじゃないか」というとホアは笑って僕の肩をたたいてきた。
「ま、いいけどな」
こんなに旨い煙草は久しぶりだった。
今回の滞在のプロジェクトが終わりに近づき、僕が日本に帰国する日が近づいている。
今のチームは解体される。
そして、契約社員であるチームのメンバーとはもしかしたら次のベトナムのプロジェクトでは会えないかもしれない。
先日ホアは「いつ日本に帰るんだ?」とジェスチャーで聞いてきた。
僕は持っていたチョークで壁に日付を書いた。
ホアは哀しそうな顔をして頷いていた。多分僕と一緒でさみしいんだろう。
「次はハノイだ。ハノイで会おう」
僕がそう言うと、「ハノイ」という単語はわかったらしく「ハノイ?」と繰り返してホアは笑った。
「OKか?」僕が言うと
「OK」といって、置いていた僕の煙草から一本抜き取りライターで火をつけた。
一口旨そうに吸って煙を吐き出すと、僕の口元にはさんできた。そして、悪戯っぽく笑った。